2-12 事後処理
『おーい!そっち引っ張ってくれー』
『とりま200番ドックに運んでくれー』
戦闘は終わり警備隊によってアモルフォファルスの残骸が回収されていく。
あたい達は事後処理としてもうしばらくファクトリーに駐留する事となった。
そしてあたいは。
「やっっっっっときたぁぁぁぁぁぁ!」
「あ、届いたんだ。パイロットスーツ」
「そーだぜ!」
本来であればとっくに届いてたはずだった特注パイロットスーツ。
と言っても、DMCシステムに合わせる為にすこーしいじらにゃならんけど。
サユリのスーツは既に対応済みだからな、ソッコーで調整しないと。
それはともかく。
パイロットスーツをDMC用に調整していると艦長に呼び出され、何故か艦長室であたい達は正座させられてた。
あたいはアイアンクロー喰らいながら。
「かんひょう………いひゃい………」
「痛くしてんだよ!さてさて。アレは何か説明してもらおうか?アァン?他にも色々とよー?」
艦長があたいの顔から手を放す。
ふう、やっと解放された。
「前にテストん時に説明したじゃんよ」
「あー、確かに聞いた聞いていたさ間違いなくな?だが何だあの威力は?1回撃っただけで小型艦の3分の2が消し飛ぶってのはよ。あ?それに彼女だ。何でこっちに連れてきたこら。警備隊に引き渡すのが筋ってもんだろうが?お?こっちはデータを軍に提出しなきゃならんのにどう報告しろってんだ?あ?」
「そこは艦長の文才に期待?」
「できるかボケェ!!」
そこはがんばろーぜ。
「まあまあ艦長。彼女……ピフピヘットに関しては私にも責任がありますから」
「す、すみません………」
前髪(前触手?)が短くなったピフピヘットも何故だかあたいと同じく正座。
あ、触手、ポニテにしたんだー♪
できんの!?
ま、まぁ、全身が見える様になったから、表情が分かりやすくなったから良しとしよう。
正座させられてるポニテの全裸の幼女と言う絵面を無視して。
艦長の言う通り、今回テロを起こした犯行グループの一人であるピフピヘットは、警備隊に引き渡すのが筋なんだろう。
けど、アモルフォファルスを倒せたのはピフピヘットのバックアップのお陰だし、エリーゼ自身もスカウトしてたし。
彼女を雇うメリットの方が大きい。
「はぁー……まあいい。彼女に関してはなんとでもなる。と言っても、空いてる部署も限られるが………入ってこい」
ドアがスライドして開く。
「失礼します」
「お、メガネ君、ちーす」
「リックです」
彼はリック。
あたいを助けてくれたメガネ君だ。
最近治療も終わって本日付で復帰したみたいだ。
「病み上がりで悪い、よく来てくれた、リック・クリプトン曹長。復帰そうそうでなんだが、本日付をもってケイト・アーカイブ、サユリ・サトウ、ピフピヘットの3名を研究班所属にする」
「了解しました」
「ん?あたいとサユリは研究班所属だったんじゃ?」
「今までは仮だ。今日から正式に所属してもらう。ついでにケイトとサユリはパイロットとしても働いてもらう……ま、そこは今まで通りだな。ピフピヘットともう一人……いやもう一組も研究班だな」
もう一組?
「ファクトリーとの司法取引でな。犯罪者達ではあるが、その才能は牢屋にぶちこむには惜しい。なのでうちで引き取り保護観察とした。更生保護法ってやつだ」
なーんか嫌な感じだなぁ?
「明日には引き渡しだからそっちは第二研究班として働いてもらう」
「なあ?そいつ等ってアレだよな?ピフピヘットのお兄様達だよな?」
「そうだ。報告は受けている……複雑だろうが軍で兵器開発をしていた人材達は貴重。他の業者に引っこ抜かれたり、再犯するよか、お前等の目の届く所で監視してる方がマシってもんだろ?」
そりゃそうだが。
「艦長、その方々には何をしてもらうんですが?」
「彼等は戦闘機関連のプロフェッショナルだからな。輸送機関連で開発をしてもらうつもりだ。現在この艦に搭載している輸送機が老朽化しててな?そろそろ買い換えるかと考えていたんだが、プロがいるなら、専門家にどうするか判断してもらう方が結果的に安く上がるし軍に対しても有利になる。データを売る事も、企業と契約してラインに乗せる事も出来る。ま、儲けられるならこれ以上はそうそう無いからな。たっぷり儲けさせてもらうさ」
ほーん、そこまで考えてたかー。
「しかし艦長。それならグランシードやアエードーンのデータを使う方がよろしいのでは?」
「アエードーンはともかく、グランシードは無理だな。アレは元々博士が軍にいる時に提唱した機体だからな。材料費込みで軍の方に所有権がある。今以上のデータやプランがありゃ、そっちを渡してうちのモンに出来るんだが……」
そっかぁ、軍に所有権あんのかぁ………。
あ、だったら。
「なぁ艦長。グランシードはダメでもグランシードを元にした機体ならいいんじゃね?」
「何か案でもあんのか?ケイト」
ここ最近色々とデータベースを調べてて分かったんだが、地球人が開発に関わるようになったのに、用途別の機体がほとんど無いのが気になってた。
戦闘機関連もそうなのだが、大別して戦艦、輸送機、MA、縮小されていっている戦闘機と分かれていき、その他の機体や装備に関しては全く発展していない。
不思議に思ったのだが詳しく調べると、元々はあったのだが、兵の質の向上……主にバイオウェポンの開発が大きく、大抵は兵を惑星に直接派遣した方が速いし、戦闘の規模が大きくなってきたら戦艦(惑星サイズ)を見せつけたり、主砲1発ぶっぱなした段階で全て終わる。
唯一の例外があたい達の地球で、送った兵達は戻らず、旗艦までだしたのに乗っ取られかけた上に3割の損害を出した。
そこで白兵で対応できない相手に対し、宇宙でもまともに戦える(多少被弾しても戦える)MAを急遽開発したらしい。
にしても、開発できたなら発展したりコストを下げてダウングレードしたり、運用に必要な輸送機やら支援機作ったり出来そうなものなんだが。
「いわゆる量産型ってやつだな。グランシード自体のコンセプトは本来は拠点防衛用重装型MAで、試作機だから万能型……汎用型になってるけど。コイツを元にコストダウンやら武装面を見直しつつ、防衛や支援に特化した拠点防衛用MAを作ったり、長距離砲撃用にしたり。後、ディスパーサルのデータと戦闘機作りのプロのデータ使ってMAばりの性能の支援機とか作んのもアリだな。んでよ、データ自体はこっちにあるから、企業に売って特許料せしめんの。これなら軍も手ぇ出せねぇはず」
「いやいやおいおい、おま、無茶苦茶な事言ってるって自覚あるか?今の軍や企業に産業革命起こそうって事だぞ?それに、何処にんなモンに出資しようってスポンサーいるんだよ。」
「ムリ?」
「データだけならいくらでも作れるが、売るとなると実機がいる。アエードーンは例外だが、MAだってタダじゃねえ。ウチが後10倍稼げてりゃ出来なくもねぇが無理だ」
「その割りに戦闘機作らせようとしてんじゃん」
「あくまでも設計だけだ。この艦で作るってんじゃねーよ。それにあいつ等引き取んのもただ引き取るんじゃねえ。出来たデータをファクトリーに売って、社会貢献させるのが目的だ」
「それって、あたい等にメリットあんの?」
「向こうにはな。テロリストを軍に引き渡した場合、使われるのは税金だ。それが嫌なんだとよ」
つまりね、とエリーゼが引き継ぐ。
「ファクトリーからすれば、軍に引き渡した場合、プラスどころか何にも入ってこない。そして犯罪者とは言え腕の良い技師を取り込みたいけど、鎮圧に協力した私達にも謝礼を出さなきゃならないでしょ?コストを考えたら、彼等の生活費やテスト機にかかる費用よりもデータを買い取るだけの方が安く上がるのよ」
ほーん、それってつまり………
「犯罪者押し付けられただけじゃんよ!」
――――――――――――――――――――
補足
ファクトリーとのやり取り
ファクトリー代表「エンハンブレの艦長グレッグ・E・ヒューストン様、今回は助かりました。ファクトリーの商人達を代表して感謝の意を」
グレッグ「いえいえ、困った時はお互い様ですので……(だったら支援ぐらいせぇよ)」
ファ「いえいえ、助けられたのは事実。何か御礼をさせていただきたいのですが(謝礼を渡すのは高く付くか?ん?)……おおっ!このテロリスト達は優秀な技師ですな!」
グ「ですね。軍に引き渡すよりもファクトリーで何か作らせた方が有益でしょう(だから謝礼渡せや)」
ファ「そうですな(引き取っても良いがそうなると諸々の費用が……いや待てよ?)……こう言うのはどうでしょう。彼等の身柄をそちらに預け、彼等が作ったデータを我々が買い取ると言うのは」
グ「え」
ファ「無論一度だけとは言いません!彼等が作った機体が既存の物より良ければその都度高値で買い取りましょう!」
グ「いやそれって」
ファ「我々が買い叩くのを御心配なさるのなら御安心を!こちらが謝礼と考えている金額までは買い取らせていただきます!!そしてこちらがその金額の総額です!」
グ「(謝礼としては十分な額だが)金額については。しかし彼等を引き取る以上、これだけでは納得しかねる(つーか足んねぇよ。人件費いくらかかると思ってんだ)」
ファ「(おうふ……そこは引っかからんか)ならばこの金額の5割を更に上乗せいたしましょう(此処までならまだ……どや?)」
グ「その分は前金としていただきたい。それならば引き取りましょう」
ファ「(おやあっさり引いたな)では契約成立と言う事で(よし!長期的に見てプラス!後はダメ出しで支払いを遅らせたり性能が低いと突っぱねれば良いだけだ!その間に稼ぐぞー!!)」
グ「ではこれで(満額出すんだろうが……性能に難癖つけて遅延してきそうだな…………せや!ケイトとサユリなら新しいコンセプトを山のように出せるだろうから、遅延できない速さで謝礼出させよう!)」
――――――――――――――――――――
グ「て事でよろ」
ケ「丸投げかよ!?」
※量産型グランシードは量産型ガンタ○ク並にしょぼくなりそうなのだ。
稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!
3000PV突破感謝なのだ!
少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!
そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます