2-9 ピフピヘット5

『おまっ!』


「知り合い、みたいじゃあないか混ざり物?あぁん!?」


お兄様とやらがピフピヘットを締め上げ銃を突き付ける。

やべぇな………これが白兵戦ならサユリに狙撃させるなりなんなり出来んだけど、こっちはMA。両手の口径がデカ過ぎて絞ってもピフピヘットごと吹っ飛ばしかねない。


『……サユリ』


『モニターで見てたけど……待機してる此処からじゃ流石に遠すぎる』


だよなぁ………何せ宇宙だからなぁ……

近くにいるって言っても、キロ単位なんだよな………

いくらバイオウェポンでも、もっと値段の高い最新型でも射程距離には限界がある。


「まずはそこから退いてもらおうか」


あたいはお兄様とやらとピフピヘットの方を向いたまま、グランシードをゆっくりと搬入口へと移動させた。


「では、行かせてもらおうか」


お兄様とやらが合図すると他のメンバーが艦に乗り込んで行く。


『リーダー!発進準備整いやした!』


「よーし、手を出すなよ?」


ピフピヘットに銃を突き付けたまま艦に乗り込んで行く。


『やられたねぇ……』


『MAで待機していたのが仇となりましたね………』


マリアさんもサユリも悔しそうだ。

お兄様とやらとピフピヘットが艦に乗り込む直前、お兄様とやらがピフピヘットを突き放した。


「あばよ混ざり物」


一筋の光がピフピヘットの頭部(にあたる高さ)を貫き、何本かの触手が撒き散らされた。


『てめぇ!!』


吹き飛ばされてるピフピヘットを受け止め、リンクを切って宇宙服を着るとダボダボのまま飛び出した。


『大丈夫か!?』


「うっ…………ケイト……さん……」


良かった、生きてた。


「大丈夫、です……テレンテテーレ人は、本体であるコアをやられない限り……し、死なないんですよ」


『だ、だけどよ?何本か触手を焼き切られたろ……』


「それだけですので……大丈夫です」


言いながらピフピヘットが顔を上げた瞬間、あたいは何か変な声で叫んだ。


『そっかぁぁぁおおぉぉぉぉぉあ!?』




――――――――――――――――――――

「な、何か変な叫び声が聞こえたんだけど」


『それよりマリアの姐御!奴等動き出しましたぜ!』


ケイトからの通信が変な叫び声だったから、ちょっと唖然としたが、部下からの連絡で気を引き締め直す。


「各小隊!包囲して叩くぞ!」


『こちらファクトリー警備隊、先行部隊の隊長のダクラクだ。エンハンブレの隊長はどちらか?』


モニター越しに白い警備隊仕様のファイターが数機合流してきた。


「こちらイーグル1、エンハンブレの隊長は私さ」


『了解した。そちらの指揮下に入る』


「了解」


『各機、配置に着きやしたぜ』


「オッケー」


私はチャンネルを全域に切り替えた。

まぁ、止まるとは思わんが。


『テロリスト共に継ぐ。無駄な抵抗はやめ投降しろ。繰り返す。無駄な抵抗はやめ投降しろ』


………………回答なしっと。


『各機、攻撃開始』



――――――――――――――――――――

再びリンクを接続したあたいは、サブチェア(右後ろの壁際)にピフピヘットを座らせ、グランシードを再起動させた。


「コイツはあたい自身が動く必要があるんでな、狭くてスマン」


「いえいえ。こんなシステム初めてで………でも何故服を脱いでるんです?」


「スーツがねーんだよ!?」


「ひゃいっ!スミマセン………」


採寸して発注かけて出港直前に届くはずだったのに、出港しようとしてる目の前のデカブツの持ち主がテロりやがったせいで、まだ届いてないんだよぉぉぉぉぉぉ!!

別に脱がなくても良いって?

生地が分厚すぎて動きにくいんだよぉぉぉ!!

あ、マリアさん達の攻撃が始まった。


「いーな?もう止めれんぞ?」


「………はい。兄の主張は自意識過剰の引き籠もりと何ら変わらないのです。そもそも、MAが主流になりつつあるのに、が軍や企業の上層部に認められる訳が無いのです」


「運用方法の間違った、ねぇ………」


目の前のデカブツのスペックとかをピフピヘットから聞いたあたいには、目の前のが間違いとは思ってない。

全領域汎用支援火器………某ロボットアニメで出てきた火力全振りの機体だ。

そもそも、ロボットと戦闘機の違いは汎用性の差で、戦闘機は速度と火力、ロボットは障害物の多い場所での機動力が大きな違いだ。

直接戦えば、戦闘機は速度で圧倒するが打たれ弱く、少しの被弾で墜落し、直線的にしか動けない。

対してロボットは速度は無いが空間を立体的に動け、少しの被弾程度では運用に問題なく作戦や作業を継続出来る。

特にMAが主流になっていく今の時代、戦闘機では役不足、火力不足である。

なら、どうするか。

答えは耐久力が高く高火力で、直線的な速度が圧倒的な物を作れば良い、だ。

聞けば元々ピフピヘットの兄達は戦闘機の設計技師だったそうだ。

そしてピフピヘットの兄とやらはうちの博士と違って、自力でその発想に至った。

しかし、戦闘機の需要が減っていく中で上からの要望は新型のMAばかり。



辛かったろうな。



その思いが今の暴走を引き起こした。

その機体の有用性を知る地球人からすれば、とても残念だ。


「………証明したかったんだろうな」


「はい?何です?」


「いいや、何でもねぇよ………」


っと、そのお兄様がマリアさん達相手に大立ち回り始めたぜ。

あたいは目の前のデカブツに少しだけビビった心を殺し飛び上がった。




――――――――――――――――――――

補足


全領域汎用支援火器

全領域汎用支援火器とは、宇宙での戦争を題材にした各ロボットアニメシリーズにおいてシリーズ毎に定義自体は変わるが、主な運用として高い推進力と火力で動く局地戦用兵器郡の事である。

本来であれば輸送機や戦艦(搭載可能艦)で前線へと赴き、展開、または隠密行動と運用するのだが、全領域汎用支援火器の場合、初期で戦闘機の数倍、最終的には戦艦と同等の大きさの為、他の戦艦等による牽引をし、前線に向かう途中に機を見て機動、単機もしくは護衛機数機を伴って運用する。

当作品においてピフピヘットの兄は、新型の戦闘機の設計依頼が激減するなかで、運用方法を見直し、MAに無い戦闘機の特徴を発展させた。

更に艦船としても運用可能な事にも気付き、同じく技術屋として忸怩たる思いを持つ者達を集め、小型輸送艦として運用した。

この世界においてはこの機体が初の全領域汎用支援火器であり、時代が合っていれば「新機軸の巨大兵器の父」となっていたであろう。



※巨大兵器はロマンだ!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

2000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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