8-22 リブート
「こっちの配線つなげ…てっと。いいぞー」
胸部装甲を剥がしコクピットブロックを別のやつに変更、後は上手く起動できるか←今ここ
ここまでで半日……もっとかかるかと思ってたんだが、腕のいい技師総出でやったから早かったわ。
無論、グランドロアのサポートと設計図が無かったら不可能なんだが。
『了解ですわー』
ゴーンファミリーが抱える技師達はこの街の3割ほどの人数がいて、その中の1割にも満たないトップクラスがお嬢の為に集まった。
それに支持を出すの怖かったー。
ん?あたいが指導してたのは何だったのかって?
それは新たに増設する工房の新人研修だな。
研修頼まれた時に知ったが、作業工程とかはともかく、細かいマニュアルが無かったから苦労したぜ。
「どうだー?」
コクピットハッチから中を覗く。
「良いですわね!前より広くなって扱いやすくなりましたわ!」
「じゃあ後の細かいのはシミュレーターで調整してくれー。バーニアの出力とか全然調整してねーからな……グランドロア、火気管制とかはどーなってる?」
『火器管制は問題無く。接地面のアブソーバーとかバランサーは地上用と宇宙用のをインストールしといたんでオートっす。実質、反応速度とか癖を教え込むだけっすね』
「あいよ。シミュレーターの種類は?」
『宇宙用、地上用共に5ステージ。新たに水中用も出来たので基本が15ステージ。難易度イージーとルナティックと特別も用意したので力量次第でステージ選べるっす』
「いいねぇ」
「聞くのが怖いのだけど……難易度とは?」
「簡単に言えば、より実践的かどうかだな。イージーは新兵や初めて用でほとんど動くだけ。ノーマルは武器を使用する通常訓練。ハードからは実際の戦場のちょい手加減か?その上のヘルからは実際の戦場だ。ルナティックは激戦のデータだから相手もエース機がゴロゴロ。特別ってのは……」
「ちょちょちょちょーっとお待ちになって!?ルナティック?ハードは分かりますが……」
「そっそ。相手の機体とか状況とかな?例えばステージ自体がアステロイドベルトだったり、廃コロニーの残骸の中だったりー。んで、相手の機体が全部ベテランやエース機だったりすんのよ」
「エグ過ぎやん……で、では『特別』とは?」
「対戦相手が300機超えてたり、あたい等が相手だったり……かな?」
簡単に言えば向こうでの戦闘を立場を変えたりしたシミュレーターだな。
勿論、あたいの機体はグランドロアだし、寄ってくる相手の機体がピアース装備キャバリーだったり、ピアース装備ファナティックだったり?
「ケイトさんの本当の実力は分かりかねますがそーとーヤヴァイのは理解しましたわ」
おっと?
「やっと名前で呼んでくれたなボス?」
「失礼だったかしら?」
「いや?その方が気が楽だ、メイミ?」
「ではその様に」
「口調も楽にしてくれて良いんだぜ?」
「半分癖ですわ。……同世代の方がほとんど居ませんでしたので……」
それはまたなんとも……。
「と、とにかく!一度やってみたいですわ!」
「じゃー最初だし調整も兼ねてノーマルかハードでやってみる?多少自信があるならハードオススメ」
10分後
「すげーな。ヘル行けんじゃね?」
「もう少し左へのレスポンスを上げて、4番、12番バーニアの出力を上げれば行けそうですわね」
なかなかどうして、メイミは腕が良い。
実力的にもう少しやったらエンハンブレの訓練生越えて守備隊に入れそうだ。
それに機体の性能も悪くない。
ボディ周りを宇宙用に手を入れたら万能機になるな。
顔、ネコだけど。
「面白い事をしているな」
おっと、その声はMr.E。
「お。旦那、やってくかい?」
「シミュレーターか……だが、この機体はお嬢様のだろ?」
「だな。Mr.E用の機体が此処にはねーからなぁ……」
「あれば良いのだがな」
その気持ちよーく分かる。
グランドロアの協力があればシミュレーターで再現出来るんだが、最近グランドロアに頼ってばっかだしな。
「姉貴から連絡あれば良いんだがなー」
ポンッと音がなり左腕の端末にグランドロアが映し出された。
『その姉様から通信っす』
おっ、来たな。
タイミング良いな!
『繋ぐっすー』
「頼むグランドロア」
端末のちっちゃいモニターに映る顔がグランドロアから姉貴に変わった。
『ケイトー来たぞー』
「はいよー。街外れに廃教会あるだろ?そこに着けてくれ」
『わかったー』
端末を切りつつ、あーでもないこーでもないと協議している2人に話しかける。
「Mr.E、それとメイミも来てくれて。メイミはテストも兼ねてこの機体でなー」
「それは遠回しに運べって事よね?」
「Exactly!」
「へいへい。で?何を持ってきてくださったの?」
「鉄錆団でみっけたもんをな。特にMr.Eには必要なもんをな」
「俺にか?それは楽しみだ」
廃教会
「おー、来たなー」
「姉貴悪ぃーなー」
運搬用トレーラー(めちゃでかい。長い)から顔出した姉貴に手を挙げて応える。
「えらいでかいので来たな」
「こっちの機体を戻すのにな?普通のMA2機分のコンテナくっつけてるしな?」
そらでかい。
「ついでに私も来た」
窓の奥から顔を出したのはジーナだ。
護衛として乗ってんだろうが…そっか、ジーナの…てーかトウドウ三姉妹の機体はそこそこ小型だからトレーラーのコンテナに積んでも邪魔にならないからか。
いざとなったら空飛ぶし。
「よー、ジーナも来てくれてあんがとなー」
「ちよ〜っと良いかしら?」
メイミが何ぞ怖い顔で詰め寄ってきた。
「どうして「ダンスマカブル」がいるのかしらぁ〜?」
「どうしても何もダチだし?てか「
「みたいね?ほら、私の機体は脚部に大型のスラスターが付いてるじゃない?アレで動くのバランスが難しいのよね……結果的に地面を滑るような動きになっちゃうのよ」
それが踊ってるように見えると。
「フッ……何処かで見た戦い方だな」
そらMr.Eはそうだろうよ。
だからこそ姉貴に見っけたもの持ってきてもらったんだがな。
「それにあなた双子だったの?」
「正確には三つ子〜。姉貴とあたいは見た目も名前も性格もそっくり。妹はおっとりしてる」
「名前も一緒って面倒くさい……」
あたいもそう思う。
さてさて、それはともかく。
「姉貴ー、例の機体は?」
「何時でもー」
オケオケ……大きさ的に真ん中のヤツか。
Mr.Eを連れソレの前に。
「Mr.E、こっちのヤツだ」
機体に被せてるシートのストッパーを外し、バサッとシートを剥がす。
「こ、これは!?」
現れたのは数mほどの丸い頭部の青い機体。
「あんた等用じゃあ無ぇけど、Mr.Eのパーソナルカラーの青色に塗っといた。後はカメラ周りとミッションディスクを調整すりゃあ何時でも行けるぜ?あ、ついでにもう少し手を加えるか?多少重くなってもあんたなら使いこなせるだろ?」
「良いのか?」
「良いも何もでかいのばっかでやりにくかったろ?」
「……動かしてみても?」
「あんたの為に掻き集めて姉貴達に組んでもらったんだ。使ってもらわにゃ困る」
「……感謝する!」
Mr.Eがコクピットハッチを開け乗り込む。
後はお任せでいいな。
「えらく小せえ機体ですわね?」
おっと、メイミ、機体から降りてたのか。
「だろ?けど、この機体ならMr.Eの本来の強さを発揮できる。多分、あたい等でも勝てねぇんじゃねぇか?」
「そんなにですの?何て言う機体ですの?」
「スクラップの寄せ集めだからなぁ……」
んー……スクラップ……寄せ集め……ごちゃまぜ……ごちゃごちゃ?
「ジャンブルドッグ?」
「意味は?」
「ごちゃまぜの猟犬」
「なんですのんそれ」
『ははははは!いい名だ。気に入った。少し走ってくる』
言うなや否やコンテナからMr.Eのジャンブルドックが脚部のコアレスモーターのローラーとコンテナとの金属音を掻き鳴らし飛び出していった。
まるで獣の金切り声だな………うっさ。
まー気にいって貰えて何より。
戻ってきたらもうちょい手を加えるとしますか。
と、その時だった。
『こっちの世界にゃ色んにゃのあるのにゃ〜』
「「へ?」」
『にゃ?』
メイミと2人してメイミの機体と目が合った。
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補足
ジャンブルドッグ
この機体は、鉄錆団が集めていたスクラップの山の中からケイトがピックアップし、ケイトの指示でケイト姉と鉄錆団の数名で組み上げられたMr.E専用の機体であり、元々は装甲○兵ボ○ムズの世界から落ちてきた物である。
全体的にはスコー○ドッグと呼ばれる量産機を中心に組み立てられているが、腕部、脚部は別機体であり、右腕はヘビー級のファッ○ィ、左腕は湿地戦仕様の高級機ダイビン○ビートルを使用しており、両腕が一周りほど大きくなっている。
そして脚部は同じドッグ系ではあるが、何故か埋まっていた特殊部隊用のターボカスタムであり、加速時に脚部からジェットノズルが展開、驚異的な加速力を発揮する。
これにより、ただでさえ両腕の大型化によるバランスの悪さが更に悪くなり、通常の兵士には全く扱えない機体となった(ただし、この世界にMr.E以外のボトムズ乗りは居ない)
派生としてケイトがMr.Eの要望や武装面の見直しを行ったファラゴジャンブルドック(寄せ集めの寄せ集め、寄せ集めのごちゃまぜ、あるいは単にごった煮)がある。
※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)培った技術は衰えず。
覚醒した闘争心は今だ枯れず。
野性の本能は戦場への資格。
荒野に甦りしは蒼き猟犬と巨大な怪猫。
この目覚めは必然か、偶然か。
次回「出現」
劇的なるものが牙をむく。
(ちゃんらーちゃん!)
稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&80000PV突破感謝なのだ!
少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!
そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!
余ったパーツどーしよ……。
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