【80,000PV感謝!】地球脱出して300年。輸送艦に拾われたゲーマーなあたいは格納庫の置物だった機体に乗って色々やってたらエース扱いになってました。

鉄錆団休憩所(珍獣みゃー改め)

始動

1-1 ヒートヘイズ

「出てくんじゃないよ!」


輸送艦エンハンブレ守備隊1番隊隊長マリアは自身が駆る機体「ソルジャー」の弾薬を節約しつつ、デブリの影から飛び出した海賊の一機を蹴り飛ばし、追い討ちで撃ち落とす。


「ソルジャー」とは、軍の最新主力量産機で、軍の最新兵器であるビーム兵器を装備・運用する機体で、すらりとしたフォルムかつモスグリーンカラー中心の如何にも「兵士」然とした機体である。

この機体は、低コストでありながらもそれまでの主力機の一回り上をいく性能を持っており、半年ほど前から指揮官機を中心に軍に配備されている。

マリアが操るのは、配備前に艦長が軍から「テスト」と言う名目で難癖つけてぶん取ったプロトタイプだった。


『姉御!こっちは弾切れだ!!』


「だったらサーベル使え!………ちっ!キリがないねぇ!!」


部下達が乗る機体は量産機のソルジャーの一世代前の機体「ファイター」。

ゴリラみたいなずんぐりした機体は、携行型ビーム兵器を主武装にするソルジャーと違いマシンガンやバズーカ等の実弾が中心であり、弾数や武装その物は各部に設置されたハードポイントにマウントする事よりソルジャーより多いが、一発一発の威力はビーム兵器一発に劣る。

故に一機を倒す間にゴリゴリと弾薬が減ってあっという間に弾切れを起こす。

製造コストは安いが継戦能力に難があり、携行できる総弾数こそ多いが、少し高いだけのコストで耐久性、機動力、継戦能力が一回り上で、一発の威力もあるビーム兵装を扱えるソルジャーに連合の主力を取って代わられた。

製造ラインも今やソルジャー一色だ。

だが、全く使えない訳では無いため、軍の払い下げが民間企業や傭兵部隊、果ては農家で使われていたりする。


「今度は5機かい!?」


何処に隠れていたのかデブリの影から5機の機体が現れる。


『ゴブリンが5機!?まだ来んのかよ!?』


ゴブリンはファイターと並ぶ初期の機体で、ファイターと違い接近戦に優れた機体だ。

ファイターより少し安いコストで生産性が高く、設計図さえあれば町工場でも作れる為、軍よりも民間の中小企業や反連合組織で使われている。

また、カスタムの幅は群を抜き、アーム部分を農耕用具に変更した物や、土木建築用にドリルやスコップにした物など使用用途に応じて多岐にわたる。

特に特徴的なのはそので、頭部に納められたメインカメラ、通信機等をボディ部分まで覆う巨大バイザーで保護している。このバイザーはファイターよりも薄い胸部装甲の代わりであり、センサーアイをお椀(もしくはボウル)のような物で覆うだけの頭部装甲の追加装甲である。

しかし、透明なアクリル板(正確にはアクリルでは無いが)でしかないため、装甲としての意味は無い。

その為、本機体は打たれ弱い。


そのゴブリン5機の先頭に他と同じく海賊仕様にカスタムされていた機体が残りの4機を置いて単機で突出してきた。


「なんだいあのカラーリングは」


目の前に現れたのはどぎついショッキングピンク。

他の機体はシャークペイントやらドクロやらのペイントはされているが、どの機体もベースカラーは暗い緑色だ。

そして武装は手に持つ長い柄の先に斧がついた武器、ポールアックスのみ。

その見た目に既視感と嫌な予感を覚えつつ、警戒を強める。


『姉御』


「全員あのピカピカピンクに集中砲火。いい加減とっとと終わらせる」


あんな目立つカラーリングは「自分が指揮官です」と言ってるようなもの。

しかも単機で突出している。

半ば呆れながらマリアは相手が何かする前に落とすべく指示をだした……のだが。


「なに!?」


こちらの弾幕を予想に反し急旋回、と言うよりはスッ転んだら運良く避けれたみたいな感じで回避されてしまった。


『ちょっと何すんのよ!!』


野太い声の通信が入ってきた。


「わざわざ全周波オープンによる通信って……しかもこの声、アドラメルクかよ………(と言う事は転んだみたいなのはわざとか)」


『ノンノン♪アドラちゃんって呼んで?ってあら?その声、マリアンヌじゃなぁい?』


「誰がマリアンヌだゴラァ!!!おまっ!軍を除籍されて何で海賊やってんだよ!!」


『色々あったのよん』


『姉御、お知り合いで?』


「まぁ、な………(最悪だ!よりにもよってアドラメルクかよ!)」


『それよりマリアンヌ。感動の再会は後ろに回して……退いてくれないかしらぁん?』


マリアは静かに目を閉じ様々なパターンを考えたが。


(ダメだ。撃ち落とす手すら浮かばん!コイツソルジャーは悪い機体じゃ無いけど……よりにもよって私専用機が開発中に出会うなんて!)


『姉御、もう一度……』


「止めておけ。アレは……ヤツは「ヒートヘイズ」だ。私以外じゃ相手になんないよ。」


『なっ!?』


ヒートヘイズ陽炎」アドラメルク。

彼は二つ名を持つマリアと同格のパイロットで、軍にいた当初、メカニックとして従事していながらも、同じ二つ名同士の模擬戦以外では被弾率0を誇っていた。

そしてそのシュミレーターの成績から特例として軍のエリートとして昇格していたはずだった。


『あれが……!?』


「手を出すなよ?私以外じゃ気がついた時にはケツから真っ二つだ」


『何故にケツ?』


その時、マリアが率いる部隊ではない別の隊がアドラメルクに対し突撃をかけた。


「いかん!手を出すんじゃ………!」


ファイターの一体が実体剣を振りかざした瞬間、アドラメルク機が下方へ沈み込み、急上昇と共にその機体のをポールアックスの先端でぶっ刺し、そのまま背面を切り裂いた。


『何だあの動き!』


『積極的なのも好きだけど、焦っちゃダメよ?』


突然切り裂かれた仲間に唖然としていた僚機が我にかえったのか、今度は一斉に攻撃を仕掛ける。


『団体様のプレイも嫌いじゃないけど……ねっ!』


ファイター達のサーベルが振り下ろされると同時にアドラメルク機が下方へと急降下、全機空振りに終わると、先程と同じくアドラメルク機の急上昇で1機がから切り裂かれ、もう1機は急下降の勢いそのまま振り下ろされるポールアックスに真っ二つに、残りの1機も最初の1機と同じようにから切り裂かれ撃破されていく。


「出たよ「ビーストクロー」……」


『何ですそれ?』


「アドラメルクの必殺技だよ。急降下、急上昇を連続して行う攻撃で、獣の爪で切り裂かれたみたいな傷痕が残される事からそう呼ばれている」


『マジっスか………』


(まぁ、もっとも?あまりの速さに目の前から消える様に見え、気がついた時は切り裂かれている事から陽炎かげろう……ヒートヘイズと呼ばれるようになったんだが……ほんと、開発中の専用機が完成していたら余裕なのに!)


他の隊が落とされる中、マリアは「どうすっかなー」と思案していると、再びアドラメルクから通信が入る。


『さてさて、マリアンヌ?私とまともに戦えるのは貴女だけ、なのだけれども………アレをご覧なさいな?』


アドラメルク機が手に持つポールアックスで何処かを指す。

警戒しながらマリア達がその方向を見ると、9機のゴブリンに囲まれた艦が。


「何時の間に!?」


『何の為にムダに1時間もかけたと思ってんのよん。貴女達の戦力を把握する為じゃなぁい?50機による撹乱と9機による隠密と包囲。基本よね?』


「海賊がそんなにいると思うかー!!」


実際にはその策は読んでいた。

念の為5番隊を交代要員として護衛に回し、他の隊が補給に戻る時に入れ替わる様にもしていた。

しかし、50機による波状攻撃で焦らされ、補給する部隊が護衛に切り替わる瞬間に隠れていた海賊共に包囲されていた。


「てか戦艦1隻包囲するのに3個小隊も使うなよ!」


『艦がと~~~ても大きいんだから念の為よ~ん。さ、わかったらとっとと降参しなさいな。あ・な・た・も、こーんなとこで量産機に乗ったまま殺られるなんて不本意でしょう?私もだけど』


(これは流石に詰みかなぁ………ん?)


マリアが諦めかけたその時、艦の4番ドックのハッチが開いた。


(は?今4番ドックには集めた資材とかしかないはず………資材でもばら蒔く?…………まさか!?)


直感的にだがマリアは4番ドックあそこにある物を思い出した。

そして開いたハッチからオレンジ色の機体が飛び出した。


「マジで!?動くのアレ!!」



――――――――――――――――――――

補足


MA

「ソルジャー」をはじめとした兵器郡は正式名「多目的機動装甲機Multipurpose maneuver Armored machine」で、一般的にMAと呼ばれ、軍を中心に幅広く運用されている。

平均的な大きさは約17m(ただし、ゴブリン、ファイターは15m弱)。

現在、運用されているMAは最も普及している「ゴブリン」、「ゴブリン」を元にハードポイントの増設や生産性を見直した「ファイター」、新機軸のフレーム構造と新型エンジン、エネルギー効率の見直し、戦艦の武装に採用していたエネルギー兵器の小型化および運用、それら全てを低コストで実現できた「ソルジャー」の3種が現行稼働している。





※主人公は次からの登場なのだ!!

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