3-8 黒の機体
『これよりエンハンブレはギルドへの航路へ入る。繰り返す、ギルドへの航路へ入る』
お、艦長の艦内放送だ。
ようやくギルドへ向かうんだなー。
なになに?到着は3日後か。
それまで何すっかなー?
2日後
「だもんでよ、大きさとか関係なく動くって寸法なワケ」
「ほーん。DMCってのは動かす分には楽なんだな」
この2日ほど、姉貴のDMCのシュミレーターに付き合ってた。
姉貴は流石というかVRやってたから無理なく機体を動かせんだよ。
んで今は、グランシード内でDMCの基本的な説明中。
「やっぱスゲーなDMCは。不思議に思ってたが乗り手の感覚までキッチリ合わせてくれるとはな」
姉貴がシュミレーター内でグランシードの腕を動かす。
DMCシステムは乗り手の脳波だけでなく、神経回路も読み取って人体と機体を同期化させているシステムだ。
だもんで、こっちが無意識でやる行動もトレースするし、コクピット内では不可能な動き(ジャンプとか転がるとか)もやれる。
そしてこの時に問題になるのが、パイロットと機体の体格差による距離感だ。
こっちは自分の体の大きさは知ってるから、自分が通れる道の幅とか、無意識で行けると判断しているし、無理なら「無理じゃね?」と判断する。
だが、機体は違う。
特にグランシードは他よりでかい。
アエードーンに至っては腕の長さがマジでゴリラ張りに長い。
普通の操縦桿なら何かを掴む時は、近くまで動かして後はオートでやるんだが、DMCはオートの部分はジャンプとかの動きだけ。
つまり、物を掴む時や狭い所を通る時はオートでは無く実際にパイロットがその行動をする。
この時に感覚が同期化していないとカンガンぶつかったり、スカったりと酷い事になる。
だけなら良いが、最悪脳がバグる。
網膜投写だから自分か機体か分かんなくなるんだな。
大半のパイロットがDMC搭載機を扱えないのはこれが理由。
アエードーンなんかは特に酷い。
あたいも乗ってみたが、補助があんのに距離感掴むのに少し苦労した。
「この補助はある程度調整効くから、違和感あったら姉貴用の調整するぞー」
なので、一度乗って個人用に調整する。
グランシードもあたいとリックの調整データが入ってて、姉貴1人分はどうとでもなる。
無効データだけならエンハンブレ全員分あるんだがな。
「今んとこ大丈夫だな。まぁ、違いが考え方と生きてきた経験ぐらいしかないからな、俺等」
だよねー。
「んじゃま、後は練習を繰り返して………」
ピピッピピッピピッ
ん?通信?
『オペレーターのミレイです。ケイトさんはグランシードで哨戒任務に出でください』
おっと、もうそんな時間か。
今エンハンブレはギルドまで後1日ってとこまで来てて、そのまま行ってもまー問題ないんだけど、最近増えてきた海賊が丁度このタイミングで襲撃してくるんだそうだ。
通信を聞いて姉貴がグランシードから降りる。
『ほんじゃ哨戒任務ガンバ』
「あいよー」
システムのシュミレーターモードを終了させて持ってきてたパイロットスーツに着替える。
グランシード内はあたいの個人部屋(元倉庫)の2/3分ぐらいは広いから、やろうと思えば冷蔵庫ぐらいは持ち込める。
カーテン付ければシャワールームとトイレが後ろにご用意できますよ!
ぼっち部屋じゃねーか。
着替えも終わり、この5番格納庫のエアーが抜けるのを待つ。
おや、艦長から通信。
『ケイト!さっき近くに輸送艦と思しき小型船の反応とMAらしき反応を検知した!海賊船とは思えんが警戒しながら接触を試みてくれ!』
「了解。こっちからの通信は?」
『だんまりだ。こんな何も無い宙域に居るのは機体のテストでもやってんだろうが、反応が無いのはおかしい』
「むー……了解。グランシードだけで行くか」
今サユリはカレンさんの工房の方に行ってるけど、結局アエードーンには乗らずエンハンブレに残してある。
カリンさんが乗るシャトルに乗っけてもらえたそうだ。
乗り手が居ないから置物だが、グランシードと合体したらあたい1人で動かせるんだがな。
『5番ハッチ開放、発進シークエンス開始。ケイトさん、機影自体は1ですがお気をつけて』
「OKミレイ。さて、何が出るのやら」
『進路オールグリーン、発進、どうぞ!』
「グランシード!ケイト・アーカイブ!でる!!」
格納庫を飛び出たあたいは周囲を警戒しながらその機影を探した。
「さーて、謎の機影ちゃーん。大人しく出てこいよっと……アレか」
レーダーに映ってるから位置はバレバレなんだがな?
とりま近づいて撮影っと。
そんでもって警告しとくか。
「そこの機体止まれ!こちらは輸送艦エンハンブレだ!所属と階級と目的を述べろ!」
ここまで近づくと機体がよく見える。
ふむ、なんかでかい機体だな……グランシードより一回りでかいんじゃね?
色は黒一色、縦長の頭部にモノアイセンサー、角張った胴体に横長の、ほれ、カブトムシとかのかったい翅みたいなでかい肩部装甲、腕部はかなりぶっとい。
見えてる限り腰部装甲は後ろが踵近くまで伸びて、腰部両サイドはその半分って感じ?
脚部も姿勢制御バーニアよりも大きめのバーニアを仕込んでるのか、裾が広がってかなり大きくなってるな。
しかし、あの縦長の頭部……教会の教皇様とかが式典でかぶる……あー……なんだっけ?教会には行っていたが服装の名前なんか知らねぇっての。
とにかく、マントかコートでもありゃあ教皇様っぽいこの機体の正体を確かめねぇとな。
「………だんまりはよろしくねぇな。企業のただの機体テストってんなら会社名だけでもいいんだ。平和的に行こーや、兄弟」
あたいは右腕を突き出しランサーショットを構える。
ロックは既に終わっている……向こうも終わっているだろうが。
それでもだんま…
「どわっ!!」
いきなり撃ってきた!?
咄嗟に体を捻り避け、振り返りざまにランサーショットを放つが、避けた拍子にロックが外れたから当たりゃしない。
「なら!」
あたいは右のビームバスタードを発動させ黒い機体に吶喊、相手も同じくサーベルを抜き放ち突っ込んできた!
「んなろっ!!」
一合二合と斬り合うが、出力が上のビームバスタードに対してよく持つなぁ!!
「そのサーベルよぉ!!」
なら、左だっ!!
不意打ち気味に斬りかかるが、胸部装甲に掠っただけか!
黒い機体はそのまま大きく後方へ下がると掠った箇所を確認し、身を翻し戦線を離脱しだした。
「あ!おい待て!!ちっ……!」
離れた所で静観していた輸送艦がこっちに発砲してきた!
「防衛用のビームキャノンか!……クソッ」
威嚇射撃だろうから当たりゃしないが、流石に距離を取られ過ぎたか。
輸送艦と共に去っていく黒い機体を、あたいは見守るしか無かった。
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補足
グランシードのコクピット
DMCシステム搭載試験機であるグランシードのコクピットは、データ収集の目的上複座式であり、メインパイロット用シートの動きを阻害しない場所にサブのシートが置かれている。
その為、コクピット内は優に3mを超える広さがある。
これはグランシードとアエードーンのみでありこれから建造される他の搭載機には無く、ある意味でVIP仕様となっている。
この広さを利用してケイトはコクピット内に色々持ち込んでおり、ロック付きロッカーや小型冷蔵庫が鎮座している。
また、ケイトが言っていた通り、小型のシャワールームとトイレ(一体型)もあり、いざと言う時には1週間は引き込もれる様になっている。
予備を使用したアエードーンにもシャワーとロッカーが密かに持ち込まれており、サユリが表立って出てこない時は大概ここにいる。
※寝心地は悪いがぼっち部屋として機能し、長期任務にも対応できるのだ!
稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!
3000PV突破感謝なのだ!
少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!
そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!
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