5-6 ブリーフィング

「これよりブリーフィングを行う」


フィール工房主催「ソウルツインズ」ライブから3日後(アレ?新商品のモニターじゃなかったっけ?)。

もしかしたら姉貴みたいなデザインチャイルドが後何人かは生きているんじゃないかとか、さらっとあたいもなんじゃね?とかでモヤモヤしているうちに、教団についての新たな情報が入ったとの事で、主要メンバーがブリーフィングルームに集められた。

ブリーフィングルームには既にチャラ男もといケイン・ストラトスが艦長と打ち合わせをしていた。


「はーい、ではでは仕入れた情報を発表しちゃうよーん♪この数日で調べた結果、教団内において、まったり派とやっちゃう派に別れて争ってるぽいのが分かったよー」


なんだよまったり派とやっちゃう派って。

穏健派とか急進派とか言えんのか。


「あ、そうそう。知らない人に2つの派閥の事を説明するとするよん。まったり派は「万物は死して量子となり、いずれ大いなる大量子の元へと集う。そして大量子から旅立ち再び個となる。故に隣人もまた我であり身内である。大量子の元へと集うその時まで研鑽を重ね、隣人を救い、皆で助け合って生きていこう」ってのが御題目」


うん、突っ込み処はあるけど、御題目通りなら善人の集まりと言っても良いな。

人類皆兄弟ってな。

そしてこの「大量子」ってのを「我等の主」に置き換えればあたいには凄く分かりやすい。

あー、地球にいた頃の週末の教会通いが懐かしいぜ。

あ?似合わんとか言うなよ?アメリカ人の大半はキリスト教徒だし、あたいが居た孤児院は教会が運営してたんだぜ?

確かに敬虔なクリスチャンって訳じゃないがそれなりには信仰してるっての。


「おっと、そこのレディは量子教の人だったのかな?」


なんか急にケインに振られた。

ん?………あ、無意識で十字をきってたか。

てか、量子教も十字をきるのか。


「あーいや、あたいはキリスト教徒だ。御題目ってか教義が似ていたから、ついなー?構わず進めてくれ」


「おっとそうかい、妻夜会。ねーちゃん密会僕観賞会。密会暴いてご満悦っと。信仰は個人の自由だからご自由に。さて、やっちゃう派は……」


なんだ今の下りは?

お前はUIROUバイヤーか?

艦長やマリアさんが突っ込まないからこれがケインのいつものなんだろうけどさ!?

他の人をチラッと見ると、サユリが微妙な顔してるし、エリーゼさんもよく見ると顔がひきつってる。



みんな突っ込みたいんだなー。



「大元の御題目はあんまり変わんないんだけど、最後の方がドン引く。「万物は死して量子となり、いずれ大いなる大量子の元へと集う。そして大量子から旅立ち再び個となる。故に隣人もまた我であり身内である」此処までは一緒。こっからがダダ下げポインツ!「だが、手を取り合う事を忘れて久しい人類は身内であろうとも手を掛け、無駄に争いをばら蒔き自ら優位に、頂点たろうとする。これは傲慢以外なにものでもないっ!故に大量子の使徒足る我等が正しく大量子の元へと導かねばならない」だってばよ。思い上がりの限界突破!」


あー……つまり「俺等がトップで他はアホだからぶっ殺しましょう」って事か。


「と言う事で量子教は現在内部分裂を起こしていると見られる。前回の戦闘は恐らく急進派が絡んでいる。クリプトン財団から撃墜された輸送機の損害賠償請求をするようにエンハンブレに依頼があった。とは言え、このまま状況証拠だけでははぐらかされる。そこで我等エンハンブレは事を起こした急進派と争っている穏健派閥とコンタクトを取り、穏健派経由で急進派に請求する事にした」


艦長の言ってる事を要約すると、請求って名目で教団に接触しようって事だな。


「そしてその渡りは既についてるよーん。そこで主力のマリア、ケイト、ケイティ、リック、サユリの5名で渡りの相手をエンハンブレまで護衛してもらいたのよん」


ケイティってのはあたいの事だ。

今回みたいに姉貴と一緒に行動する時に名前が同じだと混乱するからな。

リックが手を挙げる。


「何故その5名なのですか?相手方も小型の輸送機で来るはず。その護衛なら一個小隊もしくは二個小隊が良いのでは?」


「ふむ。こちらからは輸送機を使わずMAのみで向かってもらう」


はあ?


「いやいや、流石に距離あるだろ?」


「合流までは輸送機を使わず向かう。その方が見つかりにくいからな。それに、サユリのアエードーン、リック少尉の機体ニーズヘッグは長距離航行が可能だ」


リックのニーズヘッグってのは前にリックが乗ってた青い機体なんだが、コンセプト的に軽・中量級のスタンダードな機体だったはず。


「長距離航行用の機能はニーズヘッグには無かったんじゃ?」


「昨夜、工房からニーズヘッグ用の追加パーツが届いた。カタログを確認したらアエードーン以上の長距離航行能力があったから、本作戦に使わせてもらう」


なるほど。


「マリアのグロリアスナイトは途中までは牽引すれば問題ない。瞬間加速度は他の機体以上だからな。そして戦力に関してだが、現状、エンハンブレにおいての最高戦力だからだ。ついでにリック少尉とケイト中尉両名の新型MAのならしも兼ねている。リック少尉は初と言う訳ではないが、戦闘行為自体はないからな。今回は協力者のエスコートが任務内容だが、戦闘が全く無いとは言い切れん。俺が組織側だったら、間違いなく刺客を送り込む。それと今回は能力云々よりも機体性能がモノを言うから、そこを考慮した人選だ」


「分かりました」


「では、作戦内容に移る。作戦内容は護衛!穏健派の来賓をエンハンブレまでエスコートする事!エスコート係りはマリア、ケイト、ケイティ、リック、サユリの5名!念の為に来賓の内2名ほどこちらの機体に乗せる。来賓を乗せる役はケイティのグランシードとマリアのグロリアスナイトに。ランデブーポイントは此処、小惑星エイラ近郊のラグランジュポイント。そこで合流後来賓を乗せた5名はファクトリー方面へと迂回しつつフィール工房へと向かう。俺達は工房にて部隊を展開して待つ」


小惑星エイラってのは、火星の公転軌道と木星の公転軌道の間にあるアステロイドベルトにある小惑星なんだが、木星から先に行けない軍と違い(惑星サイズの旗艦はミ=ゴ達に見つかる)エンハンブレみたいな会社やフィール工房みたいな企業は、アステロイドベルトを隠れ蓑にして結構移動してる。


「ゴールテープはあんのか?」


「テープ代わりに20機のMAで迎えてやるぞ?」


そいつぁ心強い。


「渡りのついたゲストは俺様ちゃんが選び抜いたわりかし偉い人だからマナーコードもチェックヨッロー♪」


お偉いさんだって?

それは穏健派の中心人物なんじゃ?


「作戦開始は明後日の朝マルキュウマルマル!それまでに各自整備をしておけ!」


――――――――――――――――――――

補足


ラグランジュポイント

ラグランジュポイントとは、天体力学における円制限三体問題の5つの平衡解、すなわち天体と天体の重力で釣り合いが取れる「宇宙の中で安定するポイント」で、そこに何かしらの天体が入り込んだ場合、安定して公転を始める。

よくSFに出てくるスペースコロニー等はこの場所に作られており、安定した公転起動と重力制御により、宇宙で安定した生活が出来るのである。

本作におけるファクトリーやギルド、フィール工房もこのラグランジュポイントに停留しており、軍旗艦と共に旅をしているが、特定の銀河、恒星系に滞在する時、このラグランジュポイントを調べ、その場所に停留させるのである。

現在停留している場所は太陽系外だが、中規模の部隊が木星付近で地球に対し監視任務中であり、その場所も木星のラグランジュポイントである。

ただし、地球から見た場合、中規模とは言え艦の巨大さ(エンハンブレの10倍以上)が災いして、木星に月が出来たように見えていたりする。

名はその存在を18世紀後半にレオンハルト・オイラーと共に確認したジョゼフ=ルイ・ラグランジュにちなむ。



※昔、このまんまのタイトルのRPGがファミコンにあったねー(年バレる)


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

ボーッとしてたら40000PV突破してた!感謝なのだ!

止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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