5-3 火食鳥のフラメンコ

「その商品ちょうだい!!」

「これはもらうぞ!!」

「取ったどおぉぉぉぉぉ!?」

「何が「取ったどおぉぉぉぉぉ!?」だ!それハ・ナ・セ!!」

「それ私が先ー!」

「早い者勝ちですわ!」

「もうやめて!私の財布はゼロよー」


うわぁ……バーゲンセール会場かな?


「慌てんなー!在庫まだあるから!気持ちは分かるが落ち着けー!」


マリアさんと博士が落ち着くように言うも効果なし。

何がどうなってんだよ……

更には。


「照明急いで!音響は?」

「何時でも行けまーす!」


そしてコンテナの横に何故か舞台が組まれている……な、何が始まんの?


「セット終わったよ。何時でも行ける」


「リック少尉、了解した!マイクチェック、ワンツースリー……」


「さ、ケイトも早く。あ、立ち位置はそっちのバミだからー」


「お、おう?」


「ソウルツインズ入りまーす拍手ー」


なんかユニットになってる!?ついでにリックが仕切ってる!?


「本番5秒前、3、2……」


リックがキューを出すと格納庫の照明が落とされ、舞台だけがライトアップされる。


「ケケケケイトたんが2人も!」

「こ、ここは天国か!?」

「ももももちつけおまいら!!」

「ケイトちゃーん!にゃんこコス似合ってるよー!!」


コスと言うより着ぐるみだけどなぁ!?

てか、コイツ等どっから湧いて出た?

しかも、ちゃっかりリックの弟ディアス君が混ざってるよ………どうやって来た?


「みんなありがとー!きょうわぁ、みーんなにとーっても、とーっても、ジューダイなお知らせがぁ……あります!」

「「「なあにー!?」」」

「それわぁ………妹の紹介だぉー♪」

「「「な、なんだってー!!」」」


何このノリ………


「ど、ども………」

「「「おおぉぉぉぉ!!」」」


姉貴が「なんでもやる」って知ってたけど、本当になんでもやるんだな……何その甘ったるい声は。どっから出てんの?

しかもカリンさんが渡してきたのは猫の着ぐるみ(顔出し)。

姉貴が白であたいが黒。

しかも、いつの間にか格納庫がコンサート会場になってるし………全クルー集まってんじゃね?エンハンブレ傾いてね?


「じゃあ、地球で知られてる曲を覚えてきたから~……聞いてください!聞き終わったらフィール工房新商品、買ってね?」


金とんのかよ!?モニターじゃねぇの!?

………てか、え、姉貴、マジでやんの?

あたいも知ってる曲だから良いけどさ!


「いっくよー!「火食鳥のフラメンコ」!」


ええい!ままよ!


「うーうぅー♪」

「まさか今夜にー♪」

「こーむーんー♪」

現在いま宇宙はー♪」

「れっぶーらーあーい♪」

「融合スル♪トドカセルゼ♪カナーエールゼー♪」

「「さあ始めるぅー…ぜぇーえー♪…3.2.1!レッゴーアヘッ!ファイッ!(やけ)」」


結果、めっちゃ盛り上がった。

その後、1時間と経たずにコンテナがすっからかんになった。

てか、撤収はやっ!

買うもん買ったら一気に格納庫がいつも通りになってんだが!?


「すまないねぇ、コスメやファッションなんかは手に入りにくいから、いっつもこうなるんだよ」


いや、コンサートは違うよね?

しかも「火食鳥のフラメンコ」を歌う事になるとは思わなかったんだが?

しかし、コスメかぁ……あたいはほぼ使わねぇから、わっかんねぇ。

てか、マリアさんも姉貴もちゃっかりと自分達の分を確保してたのはこうなるって分かってたからだな。

あたいも確保してるけど。


「リック少尉とディアス君も助かったよ」


「いえ。こうなると予想できましたしね。弟をバイトで雇って良かった」


バイトかよ。

てか、側で満面の笑みで………まだ居んのかよ!?ちゃっかり商品に紛れ込ました姉貴のグッズ紙袋に入れてるし、リュックにポスター差してるし!

うん、突っ込まんぞ。


「つーか、カリンさんとこの商品って凄い人気なんだな?」


「人気、と言うよりも他に選択肢が無いんだよ。軍支給の物は品質そこまで良くないし、うちも産業部門は無いからね」


「軍主体で宇宙を旅してるから軍事優先なのよ。お陰でケイトの時も苦労したわ」


「ちょ!マリア、それは言うなって!」


姉貴の時?苦労?


「あら、良いじゃない。みんな赤ちゃんの時はあったんだし」


「あぁ、そう言う………ん?」


「あ、そうそう。2人のケイトの為にこんなの取っといたんだけど」


そう言うとマリアさんが自分用に置いておいた箱から何やら取り出し……


「じゃーん♪似合うと思うんだけどどうかな?」


出てきたのはレモンイエローとオレンジのヒラヒラでフリルの着いたワンピース2着。


「てか子供用じゃねーか!私は着ねーぞんなもん!」


「絶対似合うと思うんだけどなー」


あたいも流石にそれは勘弁。


「と言うか着なさい。お母さん命令です」


「横暴だ!!」


「じゃ、上官命令」


「それはただのパワハラだー!!」


ん?今なんか聞こえたような?


「なぁリック。マリアさんって姉貴の……」


「そうだよ?データベースに載ってるよ?元統合混成宇宙軍師団長マリア・って」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」



――――――――――――――――――――

補足


軍及び船団の娯楽と唯一無二のアイドル

軍を中心に数多の銀河を旅する統合混成宇宙軍は、行く先々で数多の種族と交流を交わしてきた。

しかし、種族の多様性故にそれぞれの文化が簡単に統一される事は無く、娯楽らしい娯楽は(一部を除いて)ほとんど無く、仕事に直結する趣味(機械いじりやプログラミング、白兵戦闘等)が大半だった。

しかし、地球圏へと到着した折りに救助した地球人によりサブカルチャーがもたらされ、触発された軍に所属していた数名がエンターテインメントを目的とした娯楽を始めた。

そして数年前、少し離れた場所で戦っていたフェニックス隊が1人の行方不明者を出しながらも帰還。

人員補充として当時少将だったマリアの勧めもあり、訓練生時代に他者の追随を一切許さないほどの成績を修めたケイト姉がフェニックス隊に着任。

隊長であったカリンの無言の超圧力で何故かアイドルをやる事になった。

以前、ケイト姉が地下アイドルをやっていたのはこの時代の事であり、軍上層部との折り合いが悪くなったマリアと共にフェニックス隊が除隊した現在、自称敏腕プロデューサーのカリンのプロデュースでケイト姉の知名度は全部隊に知れ渡り、唯一無二のアイドルとして君臨する事になった。

余談だが、エンハンブレの艦長含めクルーの大半は、フィール工房の専属モデルとして(勝手に)登録されている。



※戦姫が絶唱するのだ!

後、無敵のお母ちゃんには誰も勝てないのだ!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

あっという間の30000PV突破感謝なのだ!

止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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