4-13 ハッピーバースディ!

点検孔からあたいが抜け出すと姉貴とレオンさんが待っていた。


「レオンさん、姉貴、今あたいはどうリアクションしたら良いのか悩んでる」


「それは私もだ」


「奇遇だな。私もだよ。彼等は素人か?MAを操縦して包囲していると言うのに、熱源探知すら行っておる素振りが無いとはな……」


姉貴もレオンさんも気付いているね。


「罠か?」


「どーだろ?」


「有り得るが……どうも動きが素人臭い。と言うか真剣身があまり感じられん。だが、だとしてもだ。包囲されているのは変わらん」


ま、やる事は変わんねえよな。


「ともかく急ぎましょう。感づかれるのも面倒だ」




格納庫



「ケイト。準備は出来てる」


格納庫に到着すると全クルー(30人ほど)がクッションやらベッドやらを挟んでコンテナの中で犇めき合っていた。



くるしそー………



ノーマルスーツ着用してるから暑くはないんだろうけど………


「これは……私とケイト君が入る余地は無さそうだ」


そだね。


「そこはMAで送ります。ケイト、頼めるか?」


「あいよ姉貴」







包囲者ソルジャー内



「………遅い……おい!閣下を寝かせるだけだろう!?何時までかかってるんだ!」


ソルジャー内で1人苛立ちを隠せない男タンジは我慢の限界だった。

元々うだつの上がらない冒険者で、同じく底辺でその日暮らしをしていた者達とギルドで管を巻いていた。

そんな時、とある財団のボンボンから今回の依頼が舞い込んだ。

当初は輸送船1隻を足止めするだけの割りの良い仕事だった。

だったのだが………


『知らねーよ。それよりタンの兄ぃ、こうしてダラダラしてるだけでいーんだから、焚き付けるこたぁ無いって』


彼はポン。

タンジをアニキと呼んで引っ付いて回る冒険者の1人だ。


「黙ぁーてろっポン!!アン!熱源センサーはどうなってる!」


『もんだいなーし』


アンもまた冒険者なのだが、あまりやる気が無く、どっかに良い男居ないかなーとか考えてる女性だ。


「おう、そうかそ……って化粧直しんてんじゃねーよ!?熱源センサーは付けてんだろうな!?」


『……あ』


「あ。じゃねーよ!トウ!ヘン!ボク!そっちはどうだ!?」


トウ、ヘン、ボクも三つ子の冒険者で、彼等も何故かタンジにくっついて回る冒険者だった。


『『『……………』』』


「おい?………おーい?お前らー?」


『『『………Zzzz………』』』


「寝てんのかよ!!オイコラ!!起きろ!仕事中だぞテメー等!!!」


『『『……フガッ!?………あ、かしらおはよう』』』


「ハイおはよう、ってちがーう!!アン!さっさと船を調べろ!」


『ヘーイ』


まったく……とタンジはため息を吐く。

彼等は腕は悪くない。

タンジ自身もそうなのだが、問題は対人関係にあり、タンジは直ぐに熱くなってしまい、ポンは善人であるにも関わらず喋り方や行動がチンピラ、アンはやる気がほとんど無い。

三つ子に至っては真面目に取り組めば取り組むほど全ての行動が停止するレベルで遅くなる。

タンジ自身も分かってはいるのだが、依頼主と揉め続けた結果、成功している依頼ですら失敗扱いとなり、未だに底辺で燻っていた。


(………ったく、依頼主はどうしたってんだ?もう合流してても良いだろうに)


今回受けた依頼は先程述べたように輸送船の足止めだ。

それだけだったらタンジも受けなかったが、その船に乗る人物が誕生日だからドッキリを仕掛けて祝いたいとの事だった為、喜んで受けた。

報酬も破格で、今6人が乗っているソルジャーをそのまま譲ってもらえる。


(こいつぁ……どうすりゃ良いんだ?いい加減来いよ依頼主!)


自分達の役割は警備隊に成り済ます事だったので依頼主が来るまで正体を明かす訳にもいかず、かといってこのままではまずい。

何せ、対象が彼が敬愛してやまないレオン元准将閣下だ。

不敬にも程がある。


『でもアニキ。相手が閣下ならマジでヤバいっすよ?オレっちは閣下には御迷惑かけねぇって決めてるんすよ?』


『『『んだんだ』』』


「オレもそうだよ……で、アン。どうだ?」


『あー……ごめーん、全員格納庫に集まっているわー』


「はあっ!?」


『ついでにMAが2機ほど動いてっわ』


「マジか!?うーわどーすんだよ!依頼主が来ねーし、このまま逃げられたら俺達お尋ねもんだぞ!!」


『正直に話す?』


「今更信じてもらえるか?いや、それしかないのか?いいかテメー等!出てきても撃つなよ!?」


『ハッチ開くよー』


アンの通信でタンジがモニターを確認するとハッチがゆっくりと開いていくのが見えた。

すかさずタンジはそのハッチに向かって機体を滑らせオープンチャンネルで声をかける。


「すまない!脱出しようとしてるのは分かるが少し待ってくれ!抵抗もしない!!」


開いたハッチから見えたのは青い機体とオレンジの機体。そのどちらもタンジが見た事もない機体だった。


『オープンってそっちから仕掛けといて何言ってんだ!?』


オレンジ色の機体が応えた。

怒ってるのは分かったが、その声が少し幼くタンジは感じた。


「(子供か?女の子があんなでかい機体に?輸送船の客か?いや、それは後だ)事情は話す!聞いてくれ!」


今度は青い機体から通信が入る。


『私はレオン・Z・クリプトンだ。話が有るのなら先ずは武装解除せよ。繰り返す。武装解除せよ』


「しますします!直ぐにでも!お前等も!」


タンジが機体の両手を挙げてライフルを手放した瞬間だった。

突如、機体の遥か後方から高熱源体が飛来しライフルと右腕を溶かしながら輸送船へと直撃した。


(誰だ!?くっ!)


咄嗟に機体を左へ反らしライフルのエネルギー弾の誘爆から退避する。

チラッと輸送船に目を向けると、船は内部へ直撃して爆発しているが、MA2機とコンテナは咄嗟に脱出したようだ。

タンジが機体を安定させ射撃された方向を見ると、全員がタンジの機体とコンテナを護る様に割り込んでくる。


(相変わらず腕は良いんだよな、コイツ等)


仲間の咄嗟の判断と行動力に感心しながらも撃ってきた先を見る。

その全員が見つめる遥か先に、異様に長い、ソルジャーと同等かそれ以上の長さの砲身のライフル、ロングライフルを構える黄金に輝く機体がロングライフルを構え直す。


「……さあ、お誕生日だよハッピーバースディ!リック!!」


男が叫んだ黄金の機体の後ろで、布で機体全体を隠した20機のMAが控えていた。



――――――――――――――――――――

補足


冒険者

この時代において冒険者とは、軍のクエストカウンターを通さない依頼をする者達の事であり、一度は軍部に所属したが早期(2年ほど)退職した者や普通の職に着くのが肌に合わない、または、困難な者達が一攫千金を夢見て着く職業である。

そして冒険者の能力によって

U・S・S-・A・A-・B・B-・C・D

Zと細かく分けられている。

各ランクの違いは


U(アンリミテッド)世界を救うレベル

S        個で師団を相手取る

S-(マイナー)  個又は小隊で大隊を相手

         取る

A        個で中隊以上を相手取る

A-       個又は小隊で中隊以上を          

         相手取る

B        軍部で曹長クラス

B-       軍部で軍曹クラス

C        兵役期間を終えた

D        兵役1年レベル

Z        一般人


その依頼内容はZランクの一番簡単な物で、建物の清掃や老人の介護、買い出しや付き添いであり、支払われる金額こそ安いが地球における専門職の代わりであり、これだけで生活する事も出来る。

C以上はMA及び輸送船の操縦が必須となっており(個人で出来なくとも仲間内に操縦出来る者がいればOK)自然と他の惑星へ資源を取りに行く等の仕事になる。

タンジ達はMAの操縦が出来るため、ランクとしてはCなのだが、性格上CとDの間ぐらいであり、元軍人の冒険者としては底辺。

なお、軍で伝説となっているグレッグやカリンは自営業(艦長や工房主)の為S。

軍に居たときからこなしまくってたケイト姉は既にUランクであり、本人にその気は無いが軍上層部に対して発言権があったりする。

なお、ケイトやサユリは実績が無い為、C。



※色々書いたけど、ランクと実力は別なのだ!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

5000通り越して6000も通り越して7000すらも通り越して8000越えて9000貫いて10000PV突破感謝なのだ!

止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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