1-5 過去からのゲーマー

『博士、艦長がお呼びです』


帰還したグランシードの戦闘データを確認していた博士は、オペレーターからの通信に作業の手を止めた。


「艦長が?わかった」


『彼女、ケイトも連れてきてくれとの事です』


「アイツもか。了解した………あの幼女、何処へ行ったのやら」


戦闘終了後、回収作業も行わず文字通り飛んで帰ってきたケイトは余っているパイロットスーツか宇宙服の場所(コクピット内のシート裏にあった)を聞くと、だぼだぼの手足を靡かせながら何処かへと去っていった。


「ま、艦内には違いない」


博士は避難ブロックから戻ってきた作業員にケイトの事を話し、ブリッジへと向かった。




――――――――――――――――――――

「ふー………ヤバかった~」


ずっと寝ていたカプセル、コールドスリープカプセルから目覚めて今まで、時間にして2時間ほど。

その間ずっと全裸でいた為、30分ほど前から(丁度グランシードに乗り込んだ後から)ずっと我慢していた。






トイレを。






「さてと後で着る物を確保しないとな……」


だぼだぼの宇宙服を再び着込み、手足を捲りに捲り調整しながら起きてからの事を整理していく。


「あれから何年経ったんだ?てか、今どこら辺の宙域なん?」


左腕に付けられた端末を色々弄り倒し、今日に至るまでの歴史を確認していく。


「えーと………あーやっぱそうなったか」


ケイトは自身が眠りにつく前の事を思い返していった。




――――――――――――――――――――

20XX年


『勝者!ケイト・アーカイブ!!』


「イヤッハーッ!!」


『第5回コズモスピクシス~ティタノマキア~世界大会優勝者は!……ケェェェイト!!アァァァァァカァァァァァイブッ!!!』


この年、あたいはずっと夢だったカードゲームの大会で優勝した。

今でも思い出す。

第1回大会はトラブルがあって予選と決勝の間が2年ほど空いたが、初代優勝者は赤い髪の女性で、当事中学生になったばかりのあたいは強い衝撃を受けた。

その時からひたすらに、がむしゃらにゲームをしまくり、専門の高校に特待生として入るとコズピク以外のゲームにも着手、総合選手として腕を上げていった。

そしてジュニアクラス高校2年の時………


「ケイトさん?特待生である貴女に面会ですよ」


「あたいにか?」


教師に呼ばれたあたいがゲストルームに移動するとそこに居たのは………


「あ、ハロハロ~」


「ま、ま、ま、まあ!!」


今思い出しても震える。

光を跳ね返す燃える様な赤い髪。


「ヒジリ・カノウ!!」


「はい、ヒジリちゃんですよーでも今はヤマベだよー」


Oops! Excuse meおっと失礼.てか何でこんなとこに!?」


「ヒジリで良いよ。一応此処の出資者だから?それに次の大会の代表選手を探すのもお仕事だし?それはそうと今新しいプロジェクトを立ち上げていてね。その候補者を探してるの。」


「プロジェクト?候補者?」


ヒジリさんの話では新たにロボット物のゲームが出るから、そのテストプレイヤーをスカウトしに来たとの事だった。





テラ・マーテル研究所北米支部



「うわスッゴ………」


ヒジリさんに連れてこられた場所はテラ・マーテル研究所北米支部。

テラ・マーテル研究所は日本政府直轄の研究所で、地球の内部構造を中心に研究している場所だ。

何でこんな研究機関がゲームと関係してんのか全く不明なのだが………

その一室、かなり広い部屋に大きな箱の様な物とそれよりも少し大きな球体型の物体が鎮座していた。


「ヒジリさん、あの2つは筐体ッスか?」


「ん~……そうとも言えるかな~?四角いのは戦闘機のコクピットを参考に作ったヤツで丸いのはモーションセンサー使ってる。違いは戦闘機型は扱いがムズい代わりに細かい事ができて、モーションセンサーは細かい事は出来ないけど直感的で扱いやすい……乗ってみる?」


「良いんスか!?」


「まだ開発途中だし、北米支部ここに置いてるのプロトタイプだから動きおっそいけどね」


あたいは二つ返事で乗せてもらい、まだ世の誰も触っていないを堪能させてもらった。



そう。



あたいがグランシードをいきなり動かせたのは、この時に同じようなシステムの操縦をやったからだ。




当時は網膜投射ディスプレイなんて無かったけどな。





正直驚いたよ。

大分洗練されて変わってたけど、同じタイプのコクピットだったのは。

やっぱ同じ事を考える奴は何時の時代でもいるもんだ。

それからしばらくして、突如外宇宙からなんかよくわからん奴等が攻めてきた。

陳腐だと思うだろうが本当だからしょうがない。

虫みたいな奴等だったが、やたら進んだ技術力で、あっという間に地球の軍隊は壊滅。

わずかに残った人類はコールドスリープを使い隙をついて地球を脱出した。

その時、地球に囮として残った人達も別の手段があったらしく、そっちは今現在でも不可侵領域としてコンタクトが取れていない。

そしてさっき調べたが、あたいを助けてくれたこの艦は、統合宇宙軍にちょくちょく依頼を受けてる艦で、その軍はたまたま地球圏にやって来た宇宙を旅する知的生命体達で?現在は木星の裏っかわに軍の本隊……旗艦を置いて、その近くのラグランジュポイントに各施設艦を配置して駐留してるって事か。



――――――――――――――――――――

「と、こんな所か?年表見る限り300年は経ってるな」


300年とはあたいも随分とお寝坊さんしてたな!

あーもう、色々終わってんじゃねぇか!

大会とか!

ゲームとか!

アニメとか!

しかも300年もかけて太陽系内近場居眠り( ˘ω˘)スヤァしてた!



せめて隣の星系ぐらいには行ってて欲しかったぜ………



端末から調べた歴史とあたいの記憶を擦り合わせて、他も調べようかとトイレから出た時声をかけられた。


「あ、やっと見つけました!」


「お?あんたは確か………」


紺の軍服(スカート)を着たツインテールの女性が息を切らせながらやって来た。


「オペレーターのミレイです。艦長が呼んでたのですが繋がらなくって………」


「わりぃわりぃ。トイレ行ってた。んで、あのオールバックのおっさんが何の用?」


「おっさん………えーと、艦長が色々と聞きたいみたいで………」


そりゃそっか。

向こうからしたら、いきなり部外者が出てきて機密っぽい機体を動かしたんだ。

あの爺さんが説明しても足りない所とかあるだろうし。


「じゃ、ブリッジか?艦長室か?どっちでも良いから案内ヨロ!」



――――――――――――――――――――

補足


テラ・マーテル研究所

日本政府直轄の研究機関で、地球を中心に惑星内部を調査・研究する機関で、様々な研究を行っていた。

また、多岐に渡るその研究成果は凄まじく、外宇宙からの侵略に対し世界で唯一渡り合う事ができたほど。

現在では音信不通。



※コールドスリープは底冷えするからね!仕方ないね!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る