5-10 カーディナル

自分でやっといてなんだが、後は残りの1体を捕らえるかすれば終了。


『そこの機体に告ぐ!武装を解除して投降しろ!繰り返す!武装を解除して投降しろ!』


マリアさんの投降勧告に対し、相手は両手を挙げて投降信号を出してきた。

そら、あんなバ火力見せられて自分以外残ってなかったら投降するわな。

あたいとリックが近付くとコックピットハッチが開き、パイロットが身を乗りだし両手を挙げて投降の意思を示す。


『謎の熱源が高速で接近!?避けてぇ!!』


ピフピヘットの叫びにあたいは咄嗟に回避すると、今度はリックが叫んだ。


『セイッハァァ!』


リックの機体がアッパーを繰り出すと黒い何かが弾き飛ばされた。

うっそ~ん……リックの奴、高速で飛んできた何かをノールックでぶん殴ったの!?


『……そこの指揮官機のパイロット、すぐにコックピットに戻って。アルファフォー、投降者を守って』


「お、おう……」


リックに言われるがまま、あたいは下がりながら投降者の機体に触れると、機体を通じてパイロットの声が伝わってきた。


『な、なんなんだこの小隊は……?そ、それにあ、あの機体は……!』


おっさんの声だ。

うん、パニクって逃げ出すとか不意を突こうとか考えられないみたいだから放置で。

弾かれた敵機は、体勢を立て直し此方に向き直る。

やっぱそうか、前に金ピカ相手にした時に現れた三つ首竜のエピ○ン擬きの機体だ。


『……なかなか気骨のある者がいるようだな』


広域通信?無駄に渋い声だな。


『それはどうも』


『若いな。しかし場数は踏んでると見える。そこのオレンジも思い切りが良い』


あ、さっきの見てたんだ。


『黄色と白いのは動きに無駄がない。また、各々の機体が特徴のあるオリジナルなのも面白い』


黒い竜の姿の機体が変形していく。


『面白い、面白い面白い面白いっ!を連れ戻すだけかと落胆していたが!!』


現れたのは頭部が竜の顔のMA。

頭部以外はまんまエ○オン……これ作った奴間違い無く地球人だろ!?


『これ程の強者が試練の如く現れるとは!!此処からは我の試練として挑ませてもらおうか!!我は人竜族が一人「番竜」の叉匡丸さきょうまる!愛機ダークマタードラゴンカーディナルと共に………推して参る』


ドラゴンカーディナルの腰に着いてた尾の部分が分離し付け根が右腕に装着される。

まんま鞭ってか機体名長っ!てかカーディナル(枢機卿)!?

いきなり教会のトップクラスじゃねーか!!

しかし人竜族って何だ?軍のデータベースには載ってなかったぞ?


『ここは僕に!』


リックが前に出ると同時に叉匡丸とやらも突撃し、リックのビームソードと叉匡丸の尾の鞭がぶつかり合う。


『ビームで斬れないってどんな金属なのかなあ!?』


『我は武人故詳しく知らん!!』


リックと叉匡丸がガンガン斬り結んでいくなか、あたい等はと言うと。


『今の内に離脱していこう』


『あいよ』


「どの道、拮抗しているしなー。ほれ、あんたも投降するなら着いてこーい」


『あ、あぁ……』


てーか、激しすぎて手が出せんのよ。

どっちも近接のみで斬りあってるから下手すりゃリックに当たっちまう。

さてさて、こっそり撤退の間にっと。


「アルファファイブ、輸送機の方はどうか?」


『無事ですよー』


「アルファワン、アルファツー、アルファスリー単独で帰還出来るかな?」


『ちょっと不安ね……アルファツーは私と一緒に輸送機と投降者をエスコート。アルファフォー、ファイブはスリーを援護して隙見て帰還』


『『「了解」』』


あたいはUターンしてぶつかり合っている2機の近くへ。


「ピフピヘット、エネルギー残量は?」


『80%ほど』


80かぁ……だったら。


「アルファスリー!気合いで避けろ!マイクロミサイル!行けー!!」


グランシードの両肩から無数の超小型ミサイルがぶつかり合う2機へと射出される。

全弾受けとれ!サービスだっ!!


『なんとっ!諸ともか!!』


咄嗟に後方へ下がる叉匡丸。

しかし、リックがその隙を逃すわけねぇ!!

防御で手が止まった瞬間、リックが相手の頭部を引っ掴んで押さえ込んだ。


『お前はそこでじっとしてろ!!』


相手の頭部を起点にくるりと身を翻すと、そこに無数のミサイルが直撃する。

1発1発の威力は大した事無いがこの数なら!


『ぬおあぁぁぁぁぁぁ!!』


次々とマイクロミサイルが着弾し、連続して爆発していく。


「全50発の小型ミサイル!堪能したか!?」


爆煙が晴れると両腕をだらんと下げた叉匡丸の機体が現れた。

うっそーん、マイクロミサイルとは言えどこも砕けてないってどんだけ頑丈なんだよ……


『……腕が動かん…ふ、ふふふ……我の……負けか』


「投降しろ。条約に基づいて命の保証はするぞ」


この場合の条約ってのは投降する対象に対して、命は取らず捕虜として丁重に扱うってやつだ………そんなの有るのか知らねぇけどな!!


『……いいや?勝負には負けはしたが我の勝ちぞ!』


何言って……


『熱源多数!数……数えきれません!!』


ピフピヘットの声でレーダーを確認すると、そこに写ったのは100を超える機影。

マジか………


『言うなれば我は先行していたに過ぎん。かのビーム砲とて、あの数は捌ききれまい』


うん、流石に無理。

半数は落とせそうだが、その後エネルギー無くなってフルボッコだ。


「アルファスリー!撤退だ!」


『行かせると思うてか!!』


叉匡丸が突っ込んできてグランシードが蹴飛ばされる。


「このっ…!」


『さあ、最終局面ぞ。我を倒し逃げおうせるか、本隊に捕まるか!』



――――――――――――――――――――

補足


捕虜に対する条約

この条約は統合宇宙軍において戦時傷病者及び捕虜の待遇改善のための条約である。

基本的に地球におけるジュネーブ条約とほぼ同じであり、違いとして未開惑星での条約が盛り込まれている。

未開惑星での条約は、その惑星における技術力を上回る技術を用いてのあらゆる行為は行ってはならないが、倫理観に基づいて生命を救う場合のみ用いても良い、と言うもの。

以上、これ等の条約は軍士官学校で習う基本理念であるのだが、ケイトは地球人故に知らなかった。

ケイトが言ったのはあくまで地球におけるジュネーブ条約の事であり、取り敢えず言ってみただけのはったりだった(交渉術とも)



※頭引っ掴んで「そこにいろ」はとあるアニメの劇場版からなのだ!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

ボーッとしてたら40000PV突破してた!感謝なのだ!

止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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