8-15 発掘
よく大破って言うとスクラップになってるのを想像する事が多い。
しかし、実際の大破は見た目まだ動くし使えそうに見えたりする。
なら、何故大破扱いになるか。
それは。
「股関節は……引っ張られて基本フレームから歪んでんな……左腕部は失くなってるし、爆発の衝撃で胴体内部のジェネレーターが歪んでる。動力パイプも凹んでるし……良く爆発しなかったな……メインコンピュータは無事だが全体の歪みが右にも影響してる」
「直そうにもパーツあらへんし、細かい調整出来る設備使うとなると……こんぐらいや」
「げっ!?所長、もー少しなんとかならん?」
「アホぬかせ。全パーツ特注やで?バラして余剰パーツにした方が早い。更に左腕部はもう一台からコピー取って複製品作らなあかんのに安なるかいな」
ぐぬぬ……。
分かっちゃいるが、余剰パーツが有るであろう
でも、バラしたくねーんだよなー。
姉貴の機体があるとは言え、これをエンハンブレかフィール工房に持っていければギガンティックやラーに出来るかもしれない。
何よりカリンさんのワクテカしたおめめが浮かんで、バラす決意を鈍らせる。
「……このまま置いとくのは?」
「場所代もらうで?」
「……中佐に回しといて?」
「ひどっ!」
しゃーねーじゃーん!別次元のエンハンブレに請求できねぇしさ!こっちの通貨知らねーし持ってねーし!
それよか機体だ。
ここの大地には無数の機体が埋まってる。中には使える機体や組み合わせる事のできるパーツがあるはずだ。
「所長さん。機体の発掘をしたいんだが」
「スクラップの山から作れんか?それやったら安ぅしたるで?」
いやー……それきついな。
前にここのスクラップの山をスキャンしたけどろくなの無かった……いや、何機かは組めそうだったか?
「……じゃあよ、売っても使っても良い機体をあたいがスクラップから作って、鉄錆団に売って、それを発掘調査の費用にするのは?」
「ふぅーん…………2台、いや3台。性能は問わんから、作ってくれるんやったら発掘調査もコレの場所代も無料にしたる。と言うか3台目からは儲けしか出ぇへんからな。3台以上できたら市場販売額の差額分、全額とはいかんがはろーたる」
「ええの!?」
「かまへんかまへん。差額分のうち……1割でええか?」
「いや、あたい市場販売額知らんけど?」
「物にもよるけどな?こんなもんや」
所長さんが手に持ってたタブレット端末から今の販売額を見せてくれた………通貨はZ(ゼラ)で、価値は円や宇宙軍での通貨ᒍ(ジュール)とほぼ変わらず。
大体あたい等のMAの販売額と同じ感じか?
トニー君が自力で作ったザ○…グーテン・タークが、リサイクル扱いなのに4000万なのは驚いたが(完品だったら7000万ほど……ファイターとほぼ同じ金額)
中央政府が使用している機体と同じ物だとザッと1億か……てか軍の機体、ジェ○ンかよ!格納庫内をじっくり見てなかったのが悔やまれるぜ………。
てか、性能的に見て……この値段は安すぎるんだが?
「ジ○ガンがこの値段は安すぎね?」
「中央政府のか?そんなに性能高ぅないからこんなもんちゃうん?」
「いやいやいやいや」
んな訳ねーじゃん!長年使われた傑作量産機なんだぜ!?
て事はよ?軍の兵士ってめっちゃ練度低い?もしかしてもしかする?前に見た警備隊が主人公君もといリュー君に負けたのって機体もそうだが純粋に弱い?
とりま所長さんにジェ○ンの本来のスペックを説明しつつ、トニー君を探す。
「あ、おった。トニー!」
「あ、所長……ケイトさん!もう良いんすか!?」
「なんとかなー。それよかトニー、話しあんだけどさ」
「何でも言ってください!」
おおぅ、前のめり。
「じゃ、じゃあ、お前のターク、貸して?」
「いやー、もう完璧に完成してんなグーテン・モルゲン」
てかデミバ。
「そうっすよ!代替燃料の問題も解決して使ってるんすけど、ヤベーっすねこの機体!思った通りに動くってのは!!」
そりゃ、パーメット粒子つこてるしな。
正確には違うんだが、思念や情報の伝達をパーメット鉱石に似たヤツでグランドロアがみっけてたから、それを組み込んだ。
まぁ、元ネタでも推進剤なんかにも使われてたしな。
「でもあの武装だけなーんか使えないんすよね」
あの武装、右腕部にくっついてるフェーズドアレイキャノンか?
よく見つけたな?
「そりゃなぁ。でも普通にビームキャノンとして使えるはずだが?」
「知ってるんすかあの武装!?」
どれどれ、ちょいと見てみっか。
…………あー………無理矢理腕部につけてるからか、配線間違ってんじゃん。
「トニー、こことここ。繋ぐんだったらこっち側だ」
「………あ!ミスった〜……そりゃ動かないはずっす」
これでよし、と。
あ、ついでにシステム面も見とくか。
ふむふむ、フォーマットは無いけどいけるな。
『擬似的にあのフォーマット再現できるっすよー。コンセプトは似てるんで』
「………グランドロア、マジか〜。トニー?」
「はいっす」
「いっぺん死んでみる?」
1時間後
「クラクラするっす〜………」
「うっそだろおい」
「やるよーなったなー。次の査定見直さなあかんなあ」
スコア3耐えやがったぞ。
グランドロアの根幹であるDMCシステムの応用で、擬似的にあのフォーマットを再現して情報の逆流をどれだけ耐えられるか試してみたんだが…………あたいも試してみたが、最初は体内のナノマシンが干渉してスコア上がらず、グランドロアにナノマシンの調整してもらってなんとかスコア2だったのに……。
腕部を見るとちゃんとキャノンが展開状態になってるし。
『やっぱこのシステム危険性が高いっすねー。ウチが補助したらどこまでもいけそうなんすけど』
「タヌキっ娘じゃねーんだ。そりゃおねーちゃんに逆流の負荷肩代わりしてもらえりゃ……あ?」
逆流……肩代わり……そっか!
「やっば。あの大蜘蛛野郎、スコアが高い理由分かった」
「何がっす?」
「あたい等が戦った大蜘蛛の事だ。ありゃパイロット以外にもう一人乗ってる」
「あの黒い機体かいな?2人乗りやったん?」
「ちょいと違うが、似たようなもんだ」
こりゃ姉貴達とも話さなきゃな。
てー事で全員集まったんだが。
会議室ギッチギチたぜ。
「もう大丈夫なのか?」
「大丈夫っすよ中佐。それよか今回、恐らく中央政府の切り札と思われる黒い機体、スパイダーって呼称するけど、あの機体について分かった事がある」
「アイツね。倒す方法見つかったの?リベンジしたいんだけど」
モルさん、あん時あたいが割って入ってなかったらやられてたもんな。
「手は考えてある……が、現状厳しいのは変わんねー。分かったのはアレの内部的なもんの事だ」
「交戦記録の映像を見たが、目下の所最大の障害だと言う事は認識した。詳しく聞こう」
「了解団長。アレは所長さんには話したが、特殊なシステムを使っている。詳しくは資料に纏めといたから後で読んでくれ。で、そのシステムはスコアってのがあって、上がっていくと情報の逆流が起きてパイロットの負担が大きくなる。トニーにも体験してもらったが、スコア3だと操縦どころじゃなくなる」
「まだ、気持ち悪いっす。心臓痛いっす」
「だけどよ、相手にそんな様子見られなかったぜ?」
「理屈は簡単だよ姉貴。肩代わりしてんだ、グランドロアの様にもう一人がな」
メイサさんがすっと挙手。
「2人乗りと言う事ですか?」
「いや、乗ってんのはパイロットだけだ。もう一人は、電子生命体と言うか精神が機体のメインコンピュータの中、データの海にいると言うか」
「電子生命体……機械生命体とは違うのか?」
「根本的には変わんね。本人がどう認識してるかだけのはず……だよなグランドロア」
『そうっすね。ウチは今、電子生命体みたいなもんすけど、本体はグランドロアと言うMAなんで、今の状態がイレギュラーなんすけど、電子生命体は体に対して執着しないっす』
「発生方法と言うか条件は?」
「色々じゃねーかと思ってる。多くの機械生命体からしたら自身の精神を分離する……グランドロアがやってる事は禁忌だが、やれない事はないらしい。んで、その複製だとかコピーだとかが本体に帰れなくなった、離反した。または元々そう言う存在。多分それが電子生命体でこれは一番面倒くさいもんで、やばくなったら他に乗り移って体を変える。逃げれなくしないと際限無く逃げ回る」
「それは際限無いな……」
「で?対抗手段は考えてんだろ?」
「おうさ姉貴。答えは単純。こっちに乗り移れないシステム組んで、同じ状態になればいい」
簡単に言えばこっちもフォーマットを使う。
これなら人間速度で動く相手に追いつく事ができる……が。
「それ無理っすよ〜。3の段階で死にそうになるんすよ?全機体搭載すればそりゃみんな速くなるっすけど……」
だよなー。
「それに疑似フォーマット……GROUNDフォーマットと仮に呼称するとして、今はトニーのモルゲンしかないしな。だから感覚だけでも掴んでもらう。グランドロア」
『はいな。機体のサポート及び情報伝達に特化したシステム組んどいたので皆さん自分の機体にインストールしといてくださーい』
これで少しはついてけるはず。
後は……あたいの機体か。
「トニー、ヘンリー少尉、ちょいと手伝って。契約分も含めてジャンクの山や荒野からあたいの機体含めて何機か組むからさ」
「了解っす」
「任せてくれ」
さーて、しっかり見てなかったけど、どんなお宝が眠ってるかなー?
次の日
「いきなり2機掘り出すやなんてなー。仕事速いで」
「まーなー」
あたりは付けたてしな。
「で?これはキャタピラ?戦車タイプなんかいな?」
「長距離後方支援用の機体。脚部がキャタピラだから踏破性能が高く既存の機体には出せない走行性能と燃費の良さ、整備性と量産性に優れた機体………なんだが」
「反面、立体的な動きやブースターを使った高速戦闘には向いとらへんっちゅう訳やな?拠点防衛に特化しとんな。んでこっちは?」
「中・遠距離支援用だな。両肩の2門のキャノンでの支援と装甲厚を利用した近・中距離の格闘戦もできる」
「欠点は近距離で戦うには重すぎるっちゅう事か。ええなコレ。ワイが使うわ」
「商品にしねーの?」
「せや。ポケットマネーで買わしてもらうわ。他はなんかできそうか?」
「ん〜……商品にしにくいのならなんとか」
「ワンオフけ?」
「せやね。バンマス中佐に似合いそう」
あたいとしては、完成したら中佐に乗ってもらいたい。
そんな高性能機。
ほんと、この世界の地面の中、無茶苦茶だな。
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補足
GROUNDフォーマット
別の次元に存在するはずのパーメット元素を使用したフォーマットをグランドロアが似た形に組んだ操縦支援用プログラムで、パーメット鉱石以外の情報伝達物資を使用した機体の情報伝達を補助する。
元々のパーメット元素は人体に流入し、パイロットの思考を機体へ、機体が受けた外部情報(外気温や風圧等)をパイロットにフィードバックするのだが、余計な情報(それこそ小石が当たった程度でも)をも一気にフィードバックする為、パイロットの神経が保たず自律神経にまで作用し、随意筋のみならず不随意筋にまで影響が出る。
原作で「脳が焼かれる」と言っておきながらパイロットの死因が「心臓発作」なのはコレが原因である(説明自体は逆流で死に至る、ぐらいしかない)
グランドロアが作成したのはスコア2(トニーは3)まで、かつ、人体に必要無い情報(機体表面温度や風圧や塵)をはなから無視しフィードバックをほとんどしないようにプログラムした物である。
ぶっちゃけ、反射神経並みにピーキーな仕様になっただけとも言う。
「反応が良すぎる?慣れろ」
「うっそーん」
なお、某白い悪魔の大尉殿は「相手のモノアイが左に少し動いた」に反応する……らしい。
※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)埋もれた鋼の魂を探す。探す。探す。
しかし、探せども探せども見つかるは残骸ばかり。
かつての大戦とはなんなのか。
この世界とは一体なんなのか。
天使が答えに辿り着くが先か、革命の日が来るのが先か。
次回「謎」
天使の視線に神が映る。
(ちゃんらーちゃん!)
稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&70000PV突破感謝なのだ!
今回の考察は筆者がそう思ってるだけなので「ちゃうぞ」と言われても「そうですね」としか言えないのだ!
てか、人の速さで腕振るロボットってぶっ飛んだパイロット(セルフブラックになった某准将とかズラとかワンコとか白い悪魔な大尉殿とかプッツンとかスペシャルなガキとか)以外じゃ犠牲覚悟の飽和攻撃でしか対処できんて。
少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!
そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!
思った以上に発掘してねぇな………
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