7-9 魔法?いいえ気合です!
「て、訳なんよ」
「ドアを開けて開口一番に「て、訳なんよ」と言われて誰が理解できるんだ?あ?」
ちょっとした冗談やん。
だからアイアンクローは止めていただきたい。
「で?何をやらかした?怒らないから言ってみな?」
「やれふぁひふぁふぁへえふぁにゃひっふほ」
「艦長、理解不能なので放してあげてください」
エリーゼさんの一言で開放されたあたいは改めて艦長に説明する。
「……ふう。やらかしては無いッスよ。システムDMCについて新たに分かった事があったので報告をと」
「最初からそう言え…で?何が分かった?」
「まずはコレを」
あたいが端末を起動させるとちっちゃい、デフォルメされたあたいがぴょんと飛び出した。
『まいど!』
「良くできたホロアバターだな。で?次のライブ用にホームページでも作るのか?」
何言っての艦長は。
「ちゃうて。コイツは…」
『毎度毎度うちのパイロットがお世話になってます、グランドロアのAIですー』
「あー勝手に喋んなって……艦長?」
艦長、目を見開いたまま固まっておられる。
エリーゼさんは興味深そうにしてるが。
「おい、何だコレは」
「何ってグランドーアのAI。DMCが成長したら勝手に動き出した」
「………マジで?」
「マジで」
そうとしか言いようがないんだってばよ。
「エリーゼ、アイツを叩き起こしてくれ」
「あ、はい。確か今は……」
「邪魔だったから20番ドックに放置している」
20番に放置って何をよ。
「ったく……なんでこう厄介な案件ばかり…ん?ケイト、その腕どうした?」
腕?なになに?
自分の右腕を見てもなにも……おん!?
二の腕にざっくりと切り傷が!?
「ほぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
多分あれだ、グランドロアが動いた時にコクピットシートの角にでもぶつけたんだろう。
こう言うのは認識するまでは痛み無いんだが、認識してしまったらめっちゃ痛い。
「ぁぁぁぁ……って、ナノマシンで治るな」
痛いけど。
それに既に出血はとまってるし。
「ほれ、見せてみろ……ふむ、いくらナノマシンが優秀でも時間がかかるな、コレ」
「血ぃ止まってるから後で医務室にでも行ってくるわ」
「いや、すぐ行けよ……てか、俺が治すか」
艦長自ら手当してくれんの?
んー……ありがたいがエリーゼさんに目ぇつけられそうだな。
艦長があたいの腕を取り傷口に手をかざすと、淡い青の光が……
「って、はぁ!?なんこれ!?」
「ジッとしてろ……ほい、これでいいだろう」
光が収まると傷口が綺麗さっぱり無くなっていた。
「なんこれ!?なんこれぇ!?」
「何って、軍式医療術式だが?………もしかして知らねぇのか?」
軍式医療術式?
「色々調べてる見てーだから知ってて言ってこないと思ってたんだが。そうだな……30年ほど前だったか?とある惑星に事故で調査員が跳ばされた時にな、その惑星独自の技術として発展してたのを会得して帰ってきたのが始まりだ。向き不向きはあるが軍には使える奴は結構いる」
「ほ、他には何を……」
「他には火炎術式、水式術式、風塵術式、土石術式が基本だな。組み合わせで色々できるが、そのパイオニア的な人は風と闇系だったな」
う、うおおぉぉぉ……マジか!
これってアレだよな!
「魔法じゃねーか!」
「あん?地球にもあんのか?魔法」
「いやいやいや!魔法なんてファンタジー漫画やアニメの中だけだって!!」
「そうか?まぁ、軍も30年前まで知らなかったからな。研究の結果、科学的に説明できたからな」
「そ、それってよ……あたいにも使える?」
「んー……どうだったか」
艦長がコンソールをいじると、登録されてるあたいのデータが。
「ふむ。喜べ、1個だけだが適性があったぞ」
マジか!!
「あー……でも宇宙じゃ使い道が限られるな」
「それでもいい!教えてくれ!」
思わず前のめりになるっての!
これであたいも魔法使いだぁ!!
「待て待て落ち着け。肌に使える術式の起動印刻んだりしなきゃ知識だけじゃ使えねぇんだから、まずそれをしにゃならん」
ちっ……直ぐには無理か。
「ま、それ用の道具は持ってるんだが」
出来るんかい!
「……直ぐやるか?」
「やるやる!」
艦長が引き出しから千枚通しみたいなのを取り出し、着席を促す。
「さて、何処がいい?」
「一般的には?」
「手の甲だな。肩とか背中とかもいるが、彫り手の腕が良ければ大きさは関係ないからな」
「艦長の腕は?」
「1級魔紋彫刻士の資格持ってるぜ?あ、この上には特級しかないし、特級持ちは軍お抱えの数人しかいないからな。それに、次の更新の時に特級に挑むから、合格できればこれだけで食っていける。ま、1級でも同じだが」
つまり、艦長の腕は確かと。
なら安心。
「じゃ、右手の甲で」
「おう。あ、そうだ。刻む紋様だが、どんなデザインになるかは本人の適性しだいだ。出来なくはねぇが、法律上な?特級なら自在なんだが」
「構わねぇよ。それに変なデザインにして後で後悔するよりよっぽどマシだ」
カッコイイからって中途半端な知識でおかしなもん刻むのはダセェからな。
とあるファイターの背中に「痛風」ってでかでか書いてあったのには唖然としたぜ……。
「分かった。手を出せ」
あたいが右手を出すと、千枚通しの先端を甲に軽く当てる。
痛えのかと思ったが、撫でるだけなんだな。
千枚通しの先端がさっきと同じく光りだす。
その光があたいの手の甲に入っていき、その光が触手を伸ばす様にあたいの手の甲を、を、をををを!!
「いっっっっってぇぇぇぇぇえ!!」
「お。どうやらお前の精神力量かなり高いみたいだな。高い精神力量だと反発して簡易刻紋機だと痛いんだよなー」
先に言ってもらいたい。
「本来なら変換器使って俺の精神力と同調させるんだが、軍かでかい病院にしかないからな。だが痛いだけで済んでるから感謝しろよ?」
「ど、どう、かんしゃ……しろ、と……」
「ファクトリーなんかでやってる腕の悪いもぐりだと、腕が吹っ飛ぶ。そうなりゃ腕はなくなる、術式は使えん、医療費はかさむ、結局正規で刻むしかないから金だけが消えていく」
そう考えると簡易でもやってもらえてラッキーなのか?
手に何かが侵食していく痛さはいただけないがな!
しばらく悶え苦しむと、肩にまで来てた痛みが一瞬で手の甲へと収納されるかの様に治まる。
光と痛みが治まった手の甲を見ると、これはなんだ?紋章っての?オレンジ色のラインが甲に刻まれていた。
「……………ふぅ……やっと治まった。まだ痛えが。てか、精神力なん?魔力じゃなく?」
「魔力なんてそんな産出場所が限られる物なんかに頼れるかよ。周りの環境や自身の力の方が頼れるだろうが」
?
ど言う事なん?
「わかってねーなこりゃ。良いだろ、アイツが起きるまで講義と行くか」
————————————————————
補足(グレッグ艦長の術式講義)
グ「まず、魔力と精神力の違いからだが、精神力はまんまだな」
ケ「ですよねー」
グ「気合だの根性だの…ま、本人の心とかそんなもんだ。で、魔力だが、これにはその惑星内に溢れてる精神力やら生命力やら思念やらがまざくりあったもんでな、基本、その惑星内でしか使えんリソースだ。例外に近いが、個人の魔力保有量で行ける奴もいるが、その惑星のルールに則っている以上、他の場所での使用に制限がかかる」
ケ「ほむほむ」
グ「そしてそのリソースもアクセスの仕方がバラバラでな。基本的には思念やイメージをリソースに与え形にし、現象として出す。」
ケ「確かに魔法だなー。詠唱とかはないの?」
グ「有る物も有る。だが、結果的にはイメージを強固にする物だからな。出来るんだったらんなもん無しだ。よっぽどの威力の物でなければ長々唱えてる間に撃たれてお陀仏だからな」
ケ「ですよねー」
グ「でだ。技術としては凄いんだが、他所で使えない物を軍が欲しがるか?それなら、向き不向きは有れども兵士個人が気合や信念で、場所を問わずに使える方がいいだろ?そうして研究・開発されたのが軍式術式だ。これは半分は超能力に近いが、脳の未使用領域にアクセスするナノマシンを対象に打ち込む。この魔刻針だな。んで、この時、そのナノマシンを対象に馴染みやすいように調整するのが魔刻彫刻士」
ケ「精神力なのに治具と称号?資格?は魔の字を使うんだな」
グ「違いはあるが魔力も精神力も生み出す事象や現象は大して変わらんからな。それに精の字だと倫理的になー……精神刻むのか、と騒ぐ奴等がいてな……」
ケ「その手の輩は何処にでも居るのな……」
※魔力だと回復しにくく、自然回復(ジッとする・睡眠を取る)か魔力回復効果のある物を経口摂取しなければならないけど、精神力なら最悪、応援でも回復するのだ!自力でも可!枯渇すると倒れたり最悪死亡するのは同じなのだ!
稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!
はいぱー○ャン子作ってたら60000PV突破してた!感謝なのだ!
止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!
少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!
そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!
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