第65話第 門番と呪文書
【ゴーレム生成器】と【魔術書の祭壇】を設置したことで、ゴーレム作りと魔術書作りが可能になった。早速、ゴーレム作りを開始することにした。
【ゴーレム生成器】のメニュー画面から作成可能なゴーレムが表示されていく。現時点で作成可能なゴーレムは【土】、【石】、【鉄】、【銅】の四種類だ。その中でもっとも耐久度の高い【鉄】を選択する。続いて、ゴーレムの体格を問われた。体格が大きくなるほど耐久値が上がるが、消費する素材が増えるようになっている。
「鉄のゴーレムで体長は3メートル程度にしておくか……」
メニューから選択を終えると必要な素材が表示されていく。
【鉄のゴーレム】…人型の鉄の塊に命を吹き込み下僕となる 消費素材 呪器:1 鉄のインゴット:50
ボフッ!
生成器から大量の白煙が上がり、煙が晴れると身長三メートルほどで、ガッチリとしたローマの彫像のように均整のとれた体つきの鉄のゴーレムが現れた。眼と思われる部分に赤い光が宿ると、俺に向って頭を垂れて跪き拱手の礼を取る。
「おお、強そうだ。とりあえず君の名は『門番くん一号』だ。しっかりと我が屋敷の門を侵入者から守ってくれたまえ」
名を与えたことで、鉄のゴーレムは目を点滅させると、器用に外へ通じるドアを開けて門のある方へ歩いていった。これで、侵入者への防御力は更に向上されていくことだろう。また、ゴーレムを見つけたら破壊して【呪器】を手に入れて、門番君の仲間を増やしてやることにしよう。
ゴーレムは敵味方の自動識別機能を持っているため、俺が通していいと言った人間を自動で覚えていき、それ以外の者は排除する仕様だ。
「さて、あとはルシアにあげる魔術書を生成しないとな」
続いて、呪文書も元となる【白紙の羊皮紙】をタンニン漬け樽から生成することにした。壺のメニューから【白紙の羊皮紙】を選択する。羊皮紙とは、『羊(または他の動物)の皮を木枠に張って限界まで伸ばし、ナイフで削って薄くして乾燥させたシート状のもの』で動物の皮であれば制作できるので、何枚か制作していく。
【白紙の羊皮紙】……動物の皮を伸ばしてシート状にした物 消費素材 各種動物の皮:1
ボフッ!
数枚の束になった羊皮紙が壺から飛び出してくる。その羊皮紙を持って、【魔術書の祭壇】に移るとメニューから作成できる呪文書を選択していく。
【氷の矢の呪文書】……氷の矢を飛ばし敵を敵にダメージを与える 氷属性(魔:+5)単体 消費素材 氷結晶:2 雪:2 白紙の羊皮紙:1
【氷属性付与の呪文書】……指定武器へ一定時間の間氷属性を付与する 氷属性付与 消費素材 氷結晶:2 雪:2 白紙の羊皮紙:1
【炎属性付与の呪文書】……指定武器へ一定時間の間炎属性を付与する 炎属性付与 消費素材 火結晶:2 溶岩:2 白紙の羊皮紙:1
今の所の素材では低級な魔術しか生成できないので、修練のダンジョンで手に入れた【白紙の魔術書】はしまっておくことにした。羊皮紙では取得確率は50%程度だが、素材的にレアな物を使っていないので、複数枚用意しておく。
ボフッ! ボフッ! ボフッ!
白紙だった羊皮紙に文字がビッシリと書き込まれた呪文書が完成した。これで、ルシアの魔術の幅を増やせられるはずだ。より、高威力の呪文書を作成するには更なるレアな素材が必要となってくるために高LVの魔物討伐をする必要があった。
呪文書を完成させたところで、ルシアから夕食の準備ができたと呼ばれた。その後、キッチンスペースへ行き冷蔵庫を設置したことで、ルシアが大いに喜んでくれ、更に新たな呪文書を渡すと、ピヨちゃんを説得して混浴露天風呂権をゲットすることができた。例のバスタオル付ではあるが、風紀委員長公認の混浴にソワソワとしてしまう。
「ツクルにーはん……頑張ってお背中流しますから、期待して待っててくれはる?」
少しだけはにかんだ様子の上目遣いで、そんな風に言われたら、首を思いっきり縦に振るしかなかった。
めっちゃ期待して待ってますともっ! 俺はこのためにタマの与えた痛みに耐えてよく頑張った! 自分で自分を褒めてやりたい!
ご褒美とも言えるルシアとの混浴を想像するだけで、顔の締まりが無くなっていくのが感じられた。しかし、同時に背中に殺気のようなものを感じて振り返る。
そこにはピヨちゃんが鋭い視線で嘴を光らせながら、俺を見据えていた。
ひえっ!? ふむ、けして邪な気持ちは無いのだよ。単純にルシアとお風呂に入れるのが嬉しいのだ。ゲフン、ゲフン、本当にやましい気持ちはないぞ。ピヨちゃん。
風紀委員長の厳しい視線に晒されて、背筋に冷や汗が流れていくが、何とか平静を保つことに成功した。
そして、ルシアの作った夕食となった。新たに食卓仲間となったタマは相変わらずイルファの谷間に挟まれたまま、グッタリとしているようだが、案外あきらめの境地に達したのか、抵抗を示さなくなっていた。
「タマちゃーん! 今日はルシア様ば作ったお肉料理やけん、おかしゃんが噛み噛みしてやるけんねー」
「ワシは……まぁ、いい好きにしろ」
イルファの胸に溺れないように抗うことで体力を消費したタマは元気がなかった。みかねたハチがタマを元気づける言葉をかけていく。
「タマちゃんもルシア様の料理食べたら、絶対に元気出るがや。マジでうみゃーでよ」
「そうね。今日もいい匂いがしているわ……じゅるり」
よだれが垂れそうになっているルリはすでに食欲に負けているようだ。
「はい。お待たせでした。本日のメニュー肉づくしですよ。各種、動物のお肉さんを食べ比べしてもらいましょうか」
ルシアが大皿で取り出したのは各種の動物の肉を串焼きにした物だった。こうして、タマを迎えた初めての晩餐は串焼きパーティーとなり、皆がたらふく肉に舌鼓を打ち、タマも文句を言いながらもイルファが柔らかくかみ砕いた肉を食べて喜んでいたのを俺は見逃すことはしなかった。
タマも何だかんだいってあのまま、イルファの玩具として調教されてしまう気がするぞ。
かいがいしくイルファがタマの世話を焼いているのを見て、ルシアも俺の隣に来て、口の端に付いた肉の脂を布で綺麗に拭いてくれた。
ルシアたん。そういったお世話をして貰うことは、俺としてはやぶさかではない。というか、滅茶苦茶嬉しいですっ! 心臓がキュンキュンして萌え死にそうですっ!
その日の夕食はルシアにアーンをしてもらったり、口に付いた脂を布で拭いてもらったりしてまことに充実した夕食を過ごすこととなった。
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