第127話 空の守護神候補(仮)
「というわけで我が家に新たな子供が増え――」
ズビシュ!
黒龍の幼龍を抱えた俺の姿を見たピヨちゃんから陽炎が立ち上り、身体がブレたかと思うとくちばしが額を撃ち抜いていた。
「あんぎゃあぁああああ!!」
額を撃ち抜かれた痛みに耐えられず地面を倒れ込んだ。抱えていた幼龍が俺の腕の中から這い出るとピヨちゃんの真似をして額をツンツンとくちばしで突いてくる。
「まぁ、ピヨちゃん! ツクルにーはんを突いたらいかんでしょ!」
ピヨちゃんはルシアに怒られてシュンとしているようだが、多分反省はしていないと思われる。最近、特に風紀委員長の風当たりは俺に厳しく、ルシアたんとイチャイチャしていると鉄拳制裁ならぬくちばし制裁を喰らわせてくることが多数あった。
「ルシア、俺は大丈夫さ。あまり怒らないでやってくれ」
ピギャ―!
俺の額に追い打ちをかけている幼龍を抱えると立ち上がり、あらためて新たな仲間が増えたことを宣告することにした。
「新しくうちの仲間にしようと思う黒龍の幼龍だ。ワイバーンの巣に托卵されていた子でさっきの黒龍の子供だと思う。卵から孵化した所で俺を親だと思っているらしいんだ」
黒龍の幼龍はピヨちゃんに興味を持ったらしく、地面に下ろしてやるとピヨちゃんの足元をトテトテと歩き回っている。ピヨちゃんは見慣れない生物にすり寄られて気になったらしく、くちばしで軽く幼龍を小突いている。
ピギャ――!!
ピヨちゃんに小突かれた幼龍が盛大に鳴き声を上げると、ピヨちゃんが焦ったように俺とルシアの顔を見てきた。
ピ、ピピヨ! ピピ!
「あー、ピヨちゃんが泣かした」
俺の言葉に慌てたようにピヨちゃんが首を振る。
「小さい子を苛めたらダメやって言うてるでしょ」
ピヨ! ピピピ!
『わたしのせいじゃない』とでも言いたそうに羽根を広げて抗議しているピヨちゃんであるが、小突いていたのは見ていた。なので、罰として幼龍をあやして貰うことする。ルシアの乗る場所である鞍の上に泣いている幼龍を乗せてやるとピヨちゃんが慌てて幼龍をあやし始めた。暇な時は屋敷でも年少組の遊び相手をしているピヨちゃんであるため、あやすのは得意技なのである。
「ツクル様、黒龍の子やて言いよったが、黒龍の親は托卵した卵から孵った子供から別の生物の匂いがしたら食い殺すって知っとって連れてきたんと?」
幼龍を見たイルファが冷や汗をかきながらこちらを見ている。
「え!? マジで? こいつって食い殺されちゃうの? 俺に懐いていたから思わず連れて来ちゃったけど」
「黒龍は匂いで自分の子ば認識しとるけん、別の匂いがするとすぐに食い殺して去って行く習性があるんばい。きっと、今度あの幼龍が親と遭遇したら絶対に敵対して食い殺される。もう手遅れやけん、ツクル様が立派に育てにゃんばい。黒龍はさっき見とった通り巨大に成長するけんね。お屋敷にも専用スペースがいるんやなかと?」
イルファの言葉に自分が軽はずみに行った事の重大さを認識した。
ファッ――――――――――!! ぬいぐるみみたいで可愛いじゃねえかとか思って思わず連れて来ちゃったけど、そういえばよく考えればさっきの親みたいに巨大に成長するじゃねえかぁあ!! 何やってんの俺。
大失策に気が付いたことで背中から冷たい汗が滝のように流れ落ちていく。
「そうやねぇ。君はクロちゃんね。今日からうちと一緒にツクルにーはんのお屋敷で暮らそうね~」
ファッ――――――――――――――――――!! すでにお名前をルシアたんより命名されてしまっているではないかっ!? これはまずいよ。自分が招いた事とはいえ、龍族の頂点たる黒龍が我が家に住み着くとなると完全に魔物四天王が居着いてしまわれる。
すでに名を受けたクロちゃんもルシアを気に入ったようでピヨちゃんの鞍からルシアの背中にパタパタと飛んでしがみついた。
「あら、うちの背中がいいの? ほんまにかわいい子やね」
ぬいぐるみばりの可愛さを持つクロちゃんにすでにルシアが魅了されてしまっている。ちなみに俺もクロちゃんの可愛さにはメロメロなのであった。
「イルファ……これはもううちで面倒を見るしかないな。大丈夫さ。俺はビルダーだからクロちゃんのための立派な家を作るくらいはどうってことないさ」
「ツクル様はビルダーやけんね。作るやろうけど……。アタシらの住む屋敷は龍の住む屋敷になるか。知っとっと、黒龍が住み着く場所は人が住まんていうことば……」
「人が住まない? なんでだ?」
「黒龍が人も動物も食べてしまうけんばい。彼らは大飯くらいなんであらゆる生物ば捕食していくと聞いとる」
ファッ――――――――――――――!! 忘れていた!! 黒龍肉食じゃん!! やばいよ。クロちゃんに人肉食べさせないようにしないと。菜食主義の龍にそだてねば。
俺はイルファによって黒龍が肉食であることを指摘され、早急にクロちゃんの食事を形態を考えねばならない事態であった。
「クロちゃんは何が好きなんやろね~。お肉はん食べますか~?」
ファッ――――――――!! ルシアたん、クロちゃんに肉の味覚えさせちゃダメ―――――!!
背中にいたクロちゃんを胸の前に抱かかえたルシアがご飯の話を楽しそうにしていた。
ピギャ―!
クロちゃんはぬいぐるみみたいか姿でルシアのだっこから抜け出そうともがいているが、もしかしたら将来、我が家の空の守護神として君臨する可能性のある子であると思い知らされた。
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