第13話 あまーーい砂糖とハーブ
ルシアと恋人になれたことに浮かれながら、二人で歩いていくと魔物を倒した地点には【ウサギの毛皮】、【鹿の肉】、【牛の皮】、【牛の肉】が素材としてドロップされていた。
毛皮系の素材は革の鎧を作成したり、皮革製の服などを作るのに重宝するうえ、金属系の鎧のつなぎや建具にも使用される頻度が高い素材であるので、どれだけあっても困らない品物であった。
「牛のお肉は、えらいたくさんありますなぁ……うちも大食漢どすけど、これだけたくさんは食べきれへんと思うわぁ」
「素材化しているから、俺のインベントリにしまっておけるよ。腐りもしないし、重さも無いから、もう少し狩って素材を溜め込んでおこうか」
「ツクルにーはんの、いんべんとりぃちゅーのは、そない凄い機能まで付いてるんですかぁ!?」
「そうみたい。昨日のウサギ肉もまだ新鮮なままだしね。このインベントリの中に放り込んでおくと、時間が進行しなくなるようだ。鮮度が命の食材は使う分以外は、インベントリにしまった方が良さそうだね。腐らなそうなものは、小屋に作る予定の素材保管箱に放り込んでおくつもりだけど」
『クリエイト・ワールド』でも、食材は時間とともに鮮度が落ちていく仕様になっており、インベントリにしまうと時間の進行が止まる裏技的な使用の仕方があった。
けれど、インベントリ欄も有限であるため、鮮度低下を遅らせる【冷蔵庫】が完成したら、レアな食材以外はそちらで管理した方がいいと思われる。
とりあえず、ゲットした素材をインベントリにしまうと、目的のテンサイを探して辺りを探索する。
新たに発見した毛長牛と双角鹿を退治すると、【牛乳】と【鹿の角】が手に入った。だが、目的の品物であるテンサイが中々、発見できずにいた。
「ツクルにーはん、コレとちゃいますやろか~」
少し離れた所でテンサイを捜索していたルシアが発見したようだった。
急いでそちらに向かい、足元にあった長円形の葉に大根に似た白い根部をした紛れもなくテンサイだと思われる物体があった。
本当なら【スコップ】でテンサイごと掘り出して持ち帰り、畑に植えることで種を取得したり、素材化することができたが、まだ道具を作成していなかったので、今度来たら掘り返して持って帰ろうと思う
とりあえずの分の【砂糖】が欲しいので、ルシアが見つけたテンサイを木槌で叩く。
ボフッ!
テンサイが消えると素材化された【砂糖】が入った袋がドロップされる。
「お砂糖ゲット! これで甘味ができるようになったね。味覚の幅が増えるのは嬉しい事だ」
「そうどすなぁ。それと、この草原にはハーブの類も結構自生しているし……ざっと、見ただけで【エゴマ】、【バジル】、【ニラ】がぎょーさん自生しているようやわ~」
ルシアが指し示した雑草としか思えない草がハーブ類らしい。そういったハーブがあることくらいは知っていたが、ゲーム攻略上必要だった【砂糖】とは違い、料理のレシピの幅を広げるだけのアイテムだったので、ゲームでは積極的に採取していなかった。
「ルシアはハーブに詳しいんだね。俺じゃ、全部雑草に見えちゃうよ」
「うちは産まれた時から両親がおらんかったから、おばーさんに厳しく料理を仕込まれたんどす。【料理人】やったおばーさんが、うちを連れて街の外にハーブ採りに行っとったさかい、自然と覚えてしまいました。それに、うちが大食漢になってしまったのは、おばーさんのおかげで、料理が美味しすぎたからどすねん。十五の歳におばーさんが亡くなった後は、うちが自分で用意するのに苦労しましたわぁ~」
ルシアが語ったことが本当なら、彼女はすでに天外孤独の身の上になっていると思われた。祖母が他界したあと、自分一人で生活をやりくりして頑張っていたルシアを、城壁破壊をしたという理由で、死刑宣告に等しい追放刑にしたと思うと憤りを感じてしまう。
思わず、ルシアの頭をワシャワシャと撫でてしまった。
「ルシアはいい子だね。本当にいい子だ……」
「そないに褒められることちゃいます~。そやけど、ツクルにーはんが褒めてくれると凄いうれしーどすなぁ」
「なら、おばーさんに仕込まれた料理の腕を活かせるように、このハーブ類も素材化しよう。それと、鉄製の農具ができたら、小屋に畑を作るからそちらで栽培するのもいいかもね」
「そうどすなぁ。料理にハーブ類は必要ですし、栽培ができるようになったら、わざわざ採取しなくても良くなって楽できますよって」
「とりあえず、明日には畑ができるようにしておくよ。栽培はその後だね。とりあえず、当座に必要な物としてちょっとだけ素材化して持ち帰ろうか」
「へぇ、そちらはツクルにーはんにお任せします」
ルシアが教えてくれた草を木槌で叩くと、白煙が上がりそれぞれが素材化したものをインベントリにしまい込んでいく。
そろそろ、帰らないと日が暮れてしまうな。
周りを見ると日が傾き始めており、今から帰らなければ、小屋に帰りつくまでに日が暮れてしまいそうだった。
「さて、食材も手に入れたし、ハーブも手に入ったことだし、帰ろっか」
ルシアがコクンと頷くと二人で手をつないで、来た道を帰っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます