第62話 大雪原
イルファのおもちゃとして仲間になったタマのステータスを確認してみた。
タマ
種族:妖猫族 年齢:232歳 職業:魔物 ランク:半人前
LV5
攻撃力:20 防御力:20 魔力:40 素早さ:20 賢さ:40
総攻撃力:20 総防御力:20 総魔力:40 総魔防:40
特技:火球(魔力+10 範囲攻撃) 魔術強化(魔力:+20)
装備 右手:なし 左手:なし 上半身:なし 下半身:なし 腕:なし 頭:なし アクセサリ1:なし アクセサリ2:なし
「待て! 百歩譲ってワシがお前等の仲間になるのは認めてやるが、なぜにワシがこの乳でか娘っ子の胸の谷間におらねばならぬのだっ!! うわっぷっ!! ここは乳肉によって溺れる危険性があるのだぞ」
イルファのスライム乳の谷間で溺れているタマが抗議の声を上げていた。だが、羨ましい場所に陣取っているタマに情けをかけるつもりはないので、冷たい言葉を返すことにした。
「それは知らん。イルファがそうしたいのだから、仕方あるまい。子猫になったタマに反論する力はないのだよっ!! 大人しくその極楽地獄にハマっておけ」
修練のダンジョンをクリアしたが、タマが言うにはダンジョンに入っている間は時間の進行が止まるようで、まだ日は高い位置に昇ったままであった。予備の作業台を出してタマによって溶かされた鉄装備を新しく作り直すと、当初の目的である北の大雪原に向かうことにした。
イクリプスから、この世界が滅亡の危機に瀕していることを告げられていたが、一部機能を回復したことで数ヵ月の猶予を得たことで次の修練のダンジョンへ向かう準備期間を得た。なので、生活の質を向上させつつ、自分達の力を高め、極悪仕様の次なる修練のダンジョンへの装備やアイテムなどを揃えることにした。
大雪原に着くと、辺り一面は雪に覆われており、白銀の世界になっている。ゲーム開始地点はかなりの僻地であったはずで、この大雪原を抜けた先に序盤の拠点となるはずの最果ての村と呼ばれる村が存在していたと記憶していた。だが、この世界はあの無能女神のせいで『クリエイト・ワールド』と似て非なる世界に変貌していると知った今は、その場所に村があるのかまったく自信が持てない。
「うわぁああ!! 素敵やわ~。うちの住んでた所は雪降ったことなかったから、白銀の世界ってどんなんやろと思ってましたわ。いやぁ、綺麗ですなぁ~」
ピヨ、ピピイ!!
「おいらも初めて見るがや、ああ、ちべたい」
「ハチちゃん、一人だけズルいわよ。あたしも初めて見るんだからねっ!」
ピヨちゃんとルシアとハチ、ルリは雪を初めて見たようで、雪原の上を駆けまわったり、雪を触ったりしてはしゃいでいた。俺ももう少し子供だったらはしゃいでいただろうが、社会人を経験したため、雪は悪夢の象徴でしかなかった。
雪は電車が遅れるし、色々と仕事が遅れるから、嬉しくないんだよな。子供の時は凄く嬉しいはずだったのに。ああぁ、でもここなら電車も遅れることはないし、仕事が遅れることもないからはしゃいでもいいのか……。
四人のはしゃぐ姿を眺めているとイルファとタマは寒いのが苦手らしく動こうとしなかった。
「うぅう、寒かところは苦手ばい。タマちゃーん、お母しゃんば温めてくれっと助かるわ」
「うぅう、し、仕方ねえな。今だけだからな。うわっぷ。ワシが溺れないように気を付けい」
タマはイルファの胸元で携帯カイロの代わりを務めることを承諾したようだ。
「なんだかんだ言って、その場所気に入っているんじゃねえか」
「うるさい。ワシも寒いのは嫌いだ。ここは人肌が温かいからいるだけだ。べ、別に気に入ってなどいないぞ」
「へいへい、そういうことにしときます」
しばらく遊んでいたい気もするが、そろそろ素材収集を始めないと日暮れまでに屋敷に帰り着かないので、はしゃぎ回っている三人に声をかけることにした。
「あー、四人ともはしゃいでいる所、悪いがお時間の方が残り少ないので、目的である素材収集を始めたいと思う。ルリとハチは魔物発見。ルシアとピヨちゃんは野菜・果物・ハーブ類の発見、イルファとタマはピヨちゃん達の護衛だ。素材化したい物や魔物を見つけたら呼ぶこといいね」
「「「「「は~い」」」」」
魔物探索チームと素材収集チームに分かれ大雪原に散っていった。俺もとりあえず【雪】を素材化してインベントリに詰め込んでいく。特に必要かと聞かれると疑問符が付くが、せっかく作った温泉を雪化粧させる程度の風流は楽しみたいので持ち帰ることにした。その他にも【氷】も手に入れておく。これは冷蔵庫の能力を維持するのに必要な素材であるため、多めにストックしておくことにした。
しばらくするとルシアがハーブを発見したようで呼ばれた。その場行くと二メートルほどの常緑木が数本まとめて自生して雪を被っており、【ローリエ】の木だと説明され調味料として使いたいから素材化して欲しいらしい。一本をスコップで苗化させ、残りは素材化して【ローリエ】に変化させておいた。
「あと、こっちにもハーブがありますさかいに早う来てください」
ハーブマスタールシアのハーブを見つけ出す能力は特殊技能域に達しているようで、俺では見分けのつかない雑草からハーブとして有用な物を見つけ出してくる。ルシアに連れて行かれて見つけたのは【ラベンダー】だった。調味料としてはあまり使用しないようだが、このハーブは上級回復薬の素材となるとなるので、一部を苗化させると、根こそぎ素材化して持ち去ることにした。
「ラベンダーゲット! 調合素材として重宝するから、畑でいっぱい栽培しよう。ルシア、他にもありそうか?」
「そうですね。あそこにおネギさんが顔を出されてますなぁ。えろう、立派に育ったおネギさんやわぁ」
雪原から飛び出すように自生していたのは、首の太い青々とした【ネギ】が自生していた。すぐさま、一部を苗化すると、残りを素材化していく。
「ツクルにーはんっ!! 大変ですっ!! えらいもん見つけてしもたっ!! 早う、こっちへ来てください!!」
付近を捜索していたルシアが急にテンションを高くして俺を呼び止める。急いでルシアの近くに駆け寄ると雪を掻き分けた足元には、寒い時期でも赤い実を付けた【氷イチゴ】が自生していた。
「か、甘味っ!! イチゴだ!!」
思わず俺もテンションが上がってしまう。甘味の元になる素材はそれだけで嬉しくなり過ぎてしまう。元々、甘党ではなかったが、ルシアの料理の腕にかかると麻薬的な美味さになるので、どうしても身体が欲してしまうようになった。なので、甘味の元になりえる素材は大歓迎である。
すぐに苗化と素材化をして、根こそぎ奪っていく。畑で栽培すれば、いつでも甘味を手に入れられるのでありがたい。
「イチゴジャムとか作るとええかも知れませんなぁ」
ルシアが作るイチゴジャムの味を想像したら思わず口の中が唾液だらけになる。垂れそうになる涎を我慢して飲み下だしていった。
「とりあえず、収集品はこんなものか?」
「ざっと確認しましたが、これくらいやろね」
「ツクル様!! 魔物がおったがや。鹿と兎と山羊がおった」
魔物捜索に出していたハチが急いで駆け戻ってきていた。どうやら、魔物を発見したらしい。
「そうか、じゃあ、素材収集は切り上げて魔物退治に行くぞ」
みんなを引き連れてハチの後を追い、魔物のいる場所へ向けて走り出していった。
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