第100話 百獣平原



 『雑貨屋プロスペリッティー』、『デリカトゥーラ』、『旨味食堂』と立て続けに繁盛店となったことで、フェンチネル一帯で俺のクリエイト商会は廉価で品質が良く、美味い物を提供してくれる庶民の味方という企業イメージを獲得することに成功していた。おかげで、下町に近い商店街にある個人商店主達が『雑貨屋プロスペリッティー』の看板をあげることを認め、オーナー店主として一号店に研修に来てもらい、ノウハウを学んでもらっている間に改築工事を俺が担当し、研修を終えて戻ってきた店主達に引き渡していった。


 これにより、『雑貨屋プロスペリッティー』は五店舗に増え、フェンチネル下町地区の住民の衣食を支える重要な店舗としての地位を確立していった。

 

 クリエイト商会の方は軌道に乗ったため、今日は本来の目的である世界の崩壊を止めるために、修練のダンジョンをクリアーするという目的を達成するための自主練習をすることにした。もちろん、ハチ、ルリ、ピヨちゃん、イルファ、タマ、ルシアもみんな一緒に来てLVをするつもりだ。フェンチネルの東側にある百獣の草原には多くの動物系魔物が住んでおり、LV帯も南の砂漠より高くなっていた。


「ツクル様、おいら久しぶりの戦いで腹がでらりゃせんかね?」


 最近はクリエイト商会の仕事を優先していたため、戦闘要員であるルリやハチ、イルファ、タマは暇を持て余していたようだ。ハチの言う通り、心なしかハチの腹が膨らんでいるかもしれない。デブったヘルハウンドなんてのは、我が家の四天王として恥ずかしいので、しばらくは魔物退治でしっかりと運動してスリムな身体を目指してもらおう。


「久しぶりに外に散歩にいけるみたいですね。まぁ、お屋敷の中も広くなっていて、兎人族の子供達と遊んでいるのも楽しかったですけど」


 これまた、身体がハチよりも一回り大きくなったルリが久しぶりの魔物狩りで喜んでいた。ハチよりも身体の成長が早く、すでにかなりの威圧感を備えたフェンリルとなっているが、その身体の素となったのは、毎食後、ルシアにスイーツをねだっていたからに違いないと思われる。


「クリエイト商会の方は順調に軌道に乗ったからね。今日からは次の修練のダンジョンに向けての修行期間だと思ってくれよ」


 クリエイト商会を通して、レアな素材を多数手に入れることができるようになり、転移ゲートを作るための転移石も高かったが、二つほど手に入れることができ、フェンチネル常設用と、移動用ゲートと分けて使えるようになった。なので、屋敷には正式に転移部屋を製作することになり、その部屋に転移ゲートを出口を常設することにしていた。


「アタシもタマちゃんと日向ぼっこしたり、デートしたり、以下色々としとったばってん、そろそろ腕がなまってきよるけん、今回ん修行で勘ば取り戻しゃんば。ツクル様、アタシはがんばるけん」


 イルファもクリエイト商会の仕事には、あまりタッチせず、屋敷でメイドとしての仕事をしつつ、住民達の細々として要望を聞いて俺に伝えることをしていたくらいで、あとは和装イケメンになったタマと日中からラブラブとしていたそうだ。完全にオラオラ君のタマにぞっこんらしい。けれど、タマも子猫モードの時はイルファの胸に溺れて喜んでいるらしいので、お互い似合いのカップルなのかもしれない。


「ピヨ! ピピ! ピヨ」


 ピヨちゃんはバニィーやミックとともに俺が拡張した畑の管理に精を出していたようで、作付けされていない畑を突いてはワームを食べて、生育に必要な肥料を量産してくれていた。食事量が増えているため、ピヨちゃんも一回り大きな身体になっており、そろそろ大人の身体に変化するかと思ったが、ひよこのまま身体だけが大きくなっているだけだった。


 この辺は俺も魔物成長に関しての知識が無いので、ピヨちゃんが大人のコカトリスになるのが遅れているのか、それとも何か別の要因で大人になるのかが分からない。仕方ないので、現状のまま様子を見ているのだ。


「はいはい。ピヨちゃんも久しぶりにくちばしが疼くね。期待しております」

「そうやねー。ピヨちゃんもおっきくなってきはったから、魔物はんも一撃やろね」


 ルシアがふわもこ生物のままのピヨちゃんに抱きついていた。最近では、寝室で寝る際もピヨちゃんの方に寝転がっていくので、俺も一緒にそちらへ転がるようにしていたのは、内緒にしたい事実だった。


「さて、みんな準備できたみたいだから行こうか」


 事前に百獣の平原まで行って転移ゲートを目立たない場所に設置しておいたので、転移ゲートを起動させるだけで、目的の場所に到着することができるようにしてあった。俺は転移ゲートのスイッチを押すと、起動した転移ゲートを潜り抜けていった。

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