第56話 身支度
チチチ、チュン、チュン、チチチ……
天窓から朝日が差し込み……こんでねぇえよっ!!
ブハッウ!! なにゆえにおっぱいらしき物体が俺の顔を覆っているのだ。誰か詳細な報告を求めるっ!!
ふにょん、ふにょん。
俺に呼吸をさせないようにおっぱいの圧力が顔一面に押し付けられていた。
ぷに、ぷに。
おっぱいの圧迫も苦しいが、下半身にも何やら柔らかい感触が押し当てられて脳を揺さぶる感触を送り込んでくる。
れ、冷静になれ。このおっぱいは多分イルファの物と思われ、下半身のプニプニはルシアがまた寝ぼけて足にしがみついているものと思われる。
圧迫されたおっぱいから身を逸らすように動くと、予想を裏切る光景が拡がっていた。
ファッーーーーーーーー!! ルシアたんっ!! おっぱい、おっぱいしまうのですっ!! こんなにおっぱいはだけて、俺にしがみついていちゃダメー!!!
俺は胸の谷間に抱き寄せるようにしがみついていたルシアの手を解くと、ボタンがはだけたルシアのパジャマを整えていく。
ピ……ピピヨ……ピヨ!! ピイイヨ!!
近くで寝ていたピヨちゃんが目覚めたようで、ルシアのはだけていたパジャマのボタンを閉じようとしていた俺を見ると背後に陽炎が立ち昇っていた。
「ピ、ピヨちゃん!! 違うんだっ!! これは違うんだよっ!! 俺は無実なんだっ!!」
「ひゃぁあ!? ツクルにーはん……そないにおっぱい揉んだらあかんのよ……ふみゅ、ふみゅ」
「違うんです……俺は無実なんですっ!!」
ルシアの寝言を聞いたピヨちゃんの背後の陽炎が、業火に変わっており、『エッチなのはいけませんっ!!!』と言いたそうに殺気を放ってきていた。
ピヨヨ。ピヨ。ピヨヨ。
『ツクルさんは有罪です。これより、処刑を開始します』と言ったように、ピヨちゃんがのっそりと俺の頭部に近づいてくる。
その間も、足にしがみついているイルファからは、押し当てられたおっぱいの柔らかな感触を与えられ、寝ぼけたルシアが俺の胸に顔を埋めてクンクンと匂いを嗅いできていた。
ファッーーーー!!! 天国と地獄がまた繰り返されてしまうっ!! ピヨちゃん、俺は無実なんだっ!!
ギロリと残忍な目をしたピヨちゃんの鋭利な嘴が、俺の額に向けて振り下ろされた。
ズビシュ!!
「あんぎゃーーーーーーーっ!!」
俺の悲鳴を聞いたルシアやイルファがびっくりして飛び起きてくる。
「ひゃあぁ!! どないされたんっ!! 急におっきな声を出して……ひゃああぁ!! ツクルにーはんっ!! しっかりしてや~!! 死んだらあかんの!!」
「ふあぁあ! はっ!! アタシばなんてはしたなか恰好をして……」
目覚めた二人はピヨちゃんの鉄槌を受けて、額から煙を出してシクシクと泣いている俺の額を撫でてくれていた。
「ピヨちゃん。ツクルにーはんの額をつついちゃあかんと言うてますやろ。ツクルにーはんは大事なお人だから、大事しはってや~」
プリプリと怒っている様子のピヨちゃんに、ルシアがお説教をしていたが、すでに反抗期が到来したと思われるピヨちゃんは『ツクルさんがエッチなのがいけないの』と言いたそうに首を傾げていた。
「そやかて、エッチなのは男の人やし、ある程度は仕方ないんよ。それにな、うちもえらい寝相が悪いことやし、許したってくらはりますか?」
ピヨ、ピイ、ピヨ。
ピヨちゃんもルシアに説得されて渋々了承してくれたようだ。毎朝、起きる度に額を貫かれるのは非常に危険なので自重していただけるとありがたい。
目覚めのイベントをこなしたことで、ピヨちゃんは朝食を取りに畑に出ていき、イルファはルシアの料理の手伝いをするため、一緒にキッチンへ向かった。
痛む額をさすりながら、畑に出て水撒きをして、昨日帰りに苗化した【大豆】と【小麦】を植えると、ちょうど朝食の時間となった。
朝食後、イルファも魔物討伐に同行したいと申し出てきた。どうも、昨日食べたルシアの料理によって彼女に心酔しているようで、ルシアの護衛をしたいがため、俺の外出許可を求めてきた。
昨日まで魔王軍の士官であった女性だが、ルシアの護衛をしたいと申し出たイルファの眼には、信仰に近い輝きが宿っているのを見て取れた。
ルシアたん……本当にヤバイ薬入れてないよね……。イルファの眼がかなりいっちゃっているんだけどっ!!
イルファの剣幕に押され、渋々、魔物討伐に参加を許すことにした。そのため、急遽彼女の装備を制作して、必要な物を色々と制作することにした。
>イルファが仲間になりました。
イルファ・ベランザール
種族:竜人族 年齢:20歳 職業:戦士 ランク:新人
LV1
攻撃力:10 防御力:10 魔力:2 素早さ:6 賢さ:6
総攻撃力:20 総防御力:25 総魔力:6 総魔防:6
戦技:螺旋突き(攻+10)
装備 右手:手槍(攻+10) 左手:なし 上半身:革の胸当て(防:+5) 下半身:革の草摺り(防:+5) 腕:革の手袋(防:+5) 頭:革の帽子(防:+5) アクセサリ1:なし アクセサリ2:なし
仲間と認識されたことで、イルファのステータスを確認したが、ビックリしたことにイルファは竜人族でもLV1だった。つまり、イルファが言っていたように竜化もできない駆け出しの竜人族であったのだ。
「イルファ……お前、LV1って……どんだけ弱いんだよ」
「し、仕方なかやろっ!! アタシはよかとこんお嬢様やったけん、外で魔物狩ってLV上げなんて野蛮なことはさせてもらえんかったと。す、すぐに強うなるけんお願いや」
作業スペースでイルファのステータスを確認して、思わず吹き出しそうになってしまった。恐るべき竜人族もLV1ならば全く恐ろしくないことが判明し、必要以上に彼女を恐れることもなくなった。
「とりあえず、着ている革の装備品を脱げ!」
「はぁ!? 何ば言いよるんと!! これ脱いだら裸になってしまうばい。こぎゃん場所でそぎゃんこつば求められてん困るっ!!
「ド阿呆!! 別に変なことをするわけじゃないわっ!! そんなことをしたらピヨちゃんに突き殺されるわっ!! 俺は皮素材が足りないから、イルファの鎧を分解させろと言っているのだ。とりあえず、代わりにこれを着ておけ」
俺はイルファが来る前に作っておいた綿のシャツと綿のスカートを渡しておいた。受け取ったイルファは何やらとても喜んで寝室に向かい、戻ってくると脱ぎたての革の装備を手渡してくる。
生暖かい……これが脱ぎたての温かみ……。おっといけない、変態だと思われてしまう。
変な気分になる前に革の装備を分解するために木槌で叩く、すると白煙を上げた装備が消え去るとなめし革が素材として転がっていた。実は品物は木槌で分解すると、その品物を作った時に使用した素材の一番初めの素材が再生成されるのだ。なので、皮素材が足りないため、イルファの着ていた装備を分解して、なめし革を手に入れることにした。
そうして手に入れたなめし革で革ひもを生成し、イルファに鉄の装備を制作してあげた。
イルファ・ベランザール
種族:竜人族 年齢:20歳 職業:戦士 ランク:新人
LV1
攻撃力:10 防御力:10 魔力:2 素早さ:6 賢さ:6
総攻撃力:40 総防御力:60 総魔力:6 総魔防:6
戦技:螺旋突き(攻+10)
装備 右手:鉄の槍(攻+30) 左手:なし 上半身:鉄の鎧(防:+20) 下半身:鉄のグリーヴ(防:+10) 腕:鉄のガントレット(防:+10) 頭:鉄の面貌(防:+10) アクセサリ1:なし アクセサリ2:なし
鉄の装備を着込んだイルファであったが、おっぱいのサイズがちょっときつかったようで、胸元が盛り上がってはみ出しそうだった。
「なんか、胸がきつかばってんよか装備ばこぎゃん簡単に作るなんて凄か力やなあ」
「んんっ!! とりあえず。これで魔物狩りに同行できるようになったよ。後は、この前強めの魔物と戦うこともあったから回復系の薬を調合しておくことにしよう」
「ツクル様は薬までつくると? 凄か、凄かねぇビルダーの力」
「まあね。そこで見てていいよ」
イルファが興味津々で調合台の傍に陣取っていた。まずは傷を癒す効果のある【回復薬】を作り出すことにした。この【回復薬】は傷口を自然治癒させる力を上昇させて傷を癒す薬で、即時効果は無いが魔物討伐には必須のアイテムとなっているので、たくさん作っても邪魔にはならない。
調合台のメニューから【回復薬】を選択する。
【回復薬】……自然治癒力を上昇させて傷を癒す薬 消費素材 薬草:1 ヒーリングリーフ:1
ボフッ!
まとめて五〇個ほど生成してインベントリにしまっておく。続いて【魔力回復薬】も調合することにした。【魔力回復薬】は魔術師の魔力を自然回復させる力を上昇させる薬で即時効果はないが、魔力の枯渇を防ぐのには必須のアイテムとなっている。
【魔力回復薬】……魔力の自然回復力を上昇させて魔力を満たす薬 消費素材 魔力草:1 薬草:1
ボフッ!
これもまとめて五〇個ほど作ってインベントリに入れた。後は状態異常の回復薬である【目薬】、【毒消し】も一応の用心として持ち歩くことにした。
【目薬】……盲目状態を即時回復させる薬 消費素材 ヘンルーダ:2
【毒消し】……毒(弱)を即時回復させる薬。強毒には効果なし 消費素材 毒消し草:2
ボフッ!
これらは二〇個ほど生成してインベントリに入れておく。とりあえず、後は予備の鉄の作業台を一つ生成してインベントリに放り込んでおいた。これは、出先でも武器の生成ができるようにと、『クリエイト・ワールド』のプレイヤー達が考え出した小技でもある。
予備の作業台をインベントリに放り込むと、インベントリが再び圧迫されてきているので、緊急性の低い素材を素材保管箱に移すことにした。
ビルダーとしてランクアップしたため、補完可能数が二〇から五〇まで増えているので、鉱石系や草系、魔物素材など腐りそうに無い物はどんどんと保管箱に移していく。
収納スペース (半人前) 43/50
【石】、【棒】、【木材】、【鉄のインゴット】、【銅のインゴット】、【岩塩】、【綿毛】、【なめし革】、【革ひも】、【羽毛】、【砂】、【鹿の角】、【蜘蛛の糸】、【雑草】、【干し草】、【樫の古木】、【竹】、【綿の花】、【薬草】、【ヒーリングリーフ】、【鉄鉱石】、【銅鉱石】、【金鉱石】、【銀鉱石】、【石英】、【油脂】、【魔力草】、【ヘンルーダ】、【肥料】、【ゴブリンの骨】、【コボルト銀】、【石灰石】、【ハチの巣】、【蜜蝋】、【溶岩】、【硫黄】、【木炭】、【木灰】、【縄】、【金のインゴット】、【銀のインゴット】、【ガラス】、【綿糸】、【綿織物】
素材系のアイテムをインベントリから保管箱に移し替えて整理し終える。保管箱に入れた素材は収集と同時に保管箱の方に移され、生成する際も保管箱から消費されるようになるので、素材系のアイテムをストックするにはちょうど良かった。
後は【小麦】を自動的に粉化してくれ水車小屋を設置したいので、【石臼】、【水車】を生成する。
【石臼】……小麦などを入れて粉にするための道具 消費素材 石:8
【水車】……水の流れるまたは落ちる力で回し、石臼を動かす仕掛け 消費素材 木材:5
ボフッ! ボフッ!
生成された【水車】はそれほど大きくなく直径1メートル程度の大きさだった。石臼の一人で抱えられそうな大きさである。インベントリにしまうと、イルファを連れて温泉場から水掘へ向かう水路の途中に水車小屋を建てることにした。
「さて、ここに水車小屋を建てるとしよう。今の所は【小麦】の粉化だけだけど、水路の力を借りて色々と出来る小屋をつくりたいからね。さて【レンガの壁】で囲うか」
手早く五メートル四方を【レンガの壁】で囲んで天井もレンガで埋めていく。ものの数分で小屋が完成し、木製のドアをはめ込み、中に松明を取りつけて灯り点しておいた。
「ファッ!!! なんちゅうデタラメな力!! 凄すぎる!! これならルシア様の言われちょった、あのお屋敷が半日で作られたちゅうんも理解しきるわ。ツクル様はこの世界の法則ば完全に無視した存在」
「そうかい? まぁ、仕方ないさ。これもビルダーという職業の力なのさ」
ささっと完成した水車小屋に【石臼】と【水車】をセットする。すると、【水車】が回転するのに合わせて【石臼】が回転を始め、【石臼】の中に【小麦】を入れるとゴリゴリと音がして粉化して【小麦粉】になった粉が下に溜まっていく。
木槌で【小麦】を叩けば【小麦粉】は生成できるのだが、俺も色々とやることが増えてきているので、誰でも【小麦粉】が作れる水車小屋をつくり、イルファ辺りに管理させようと思っている。
「とりあえず、この水車小屋はイルファの担当ね。【小麦】をこの【石臼】に入れるだけの簡単なお仕事だから、頑張るように」
「はいっ!! 全力でこの水車小屋ば管理するっ!! 粉モンはアタシにおまかせください」
「なら、これだけ粉にしておいて」
イルファに【小麦】を手渡すと、畑の見回りに向かった。ピヨちゃんが相変わらずワームを食べて肥料をドロップしているので、拾い集めつつ、初期に植えた作物を収穫していく。一部は枯らして種にするために残しておいたが、収穫物は大量にあり、やはりココでもビルダーの能力の凄さを垣間見ることになった。
やはり三日程度で栽培を終えたな。これなら、食料の自給はほぼ確立された。後は【牧場】を作って大人しい魔物を家畜化して色々と素材を供給してもらう場所も考えないと。また素材集めもしてこないとなぁ。そろそろ、移動も面倒だから【転移ゲート】も欲しいけど。
一応の食料自給体制を構築できたことで、自宅のさらなる発展を目指し、色々と調達したい素材を思い描き始めた。
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