第55話 混浴ブロー


 ザバッ! ザバッ!


 俺の身体に温かい湯がかけられると、背中に柔らかな布の感触が触れる。


「ツクルにーはん、これぐらいの加減でよろしかったですか? どうですやろ?」


「ルシア様、アタシも一緒にツクル様の背中洗わせてくれんばい。ルシア様は右側でアタシが左側ばあらうけん。どうせ、ツクル様は目隠しばしとって、アタシ等の裸は見れんけん、この布も外して動き易うして洗うた方がしっかと綺麗にしきるはず」


「そうですねぇ~、イルファさんが脱がはるなら、うちも脱いだ方がよろしいですなぁ~」


 バサッ、バサッという音が耳に聞こえてくる。しかし、ルシアとイルファによって厳重に目隠しをされた俺の視覚は白い世界に覆われており、二人の素晴らしい裸体を肉眼に収めることはできないでいた。


 くそう、この白い世界の向こうには楽園が広がっているというのに……。


「ハチちゃんっ!! ルシア様とイルファさんの方ばっか見てちゃダメよ。せっかく、ルシア様が一緒にお風呂を楽しんでいいと言われたのだから、ハチちゃんはこっち向くっ!」


「イデで、堪忍してちょー。おいらはルリちゃんだけだがねー。はぁ、それにしても温まるがやー」


 ハチはすでにルリとの混浴を果たしているようで、浴槽に浸かってルリとよろしくやっているらしいが、その様子を目視することは不可能だった。


「ツクルにーはんは、ホンマに凄い人ですわぁ。こないな辺境の土地に温泉付きに立派な屋敷を短期間で建ててしまわれはった。普通の方やったら、無理難題なこともツクルにーはんにお頼みしはったら、えろう簡単に解決してまうんやろなぁ」


「ルシア様!? このお屋敷はツクル様がそぎゃん短期間で作られたんか?」


 二人が俺の背中をゴシゴシと洗いながら、屋敷の建設期間について話し始めていた。ルシアはこの屋敷が掘っ立て小屋だったことを知っている唯一の現地人であり、我が家の最古参なのだ。といってもまだ一週間は経っていないが。


「まだ、数日くらいですやろか……あない大きなお屋敷も半日で作り上げられはったんよ。凄い人やろ?」


 背中を洗っていたと思われるイルファの手が滑り、背中にしっとりとした肌の感触と弾力が押し寄せてきた。


 ファッーーーーーーー!! 生乳っ!! あかんっ!! これはアカン奴やっ!! 


 思わず動揺してしまい、胸が当たっていることをイルファに注意喚起しようと咳ばらいをする。


「ゲフン、ゲフン。イルファ君、あーその。実はだね……」


「凄かっ! 凄か人だっ! ツクル様はあぎゃん大きな屋敷ば半日で作らるっんかっ!! ひゃぁ!? 信じられまっせんばい」


 イルファは俺の能力を知って興奮しているようで、自分のスライムおっぱいが背中に触れていることに気付いていない様子であった。


「そーなんですわぁ。ツクルにーはんは下手しはったら、魔王様より凄いことをできてしまうお人なの。イルファさんも魔王軍でぎょーさん苦労されてきた様子。今回のご縁を大事にしはった方がよろしいわぁ」


 ルシアが俺のことを持ち上げてイルファに吹聴しているが、本当に二人ともいつの間に仲良くなったのかよく分からないうちに姉妹のように打ち解けている。


 ちなみにルシアたんの距離も背中に近すぎておっぱいが当たっているため、視覚を奪われた俺の神経は背中に全部集中していた。


 ……至極の楽園……神は私を見放さなかった……。


 背中に当たるこの世の中で一番の気持ち良さを誇る物体を楽しんでいると、何だかのぼせたように頭がボーっとしてきていた。心なしか、口の中も鉄臭い匂いが拡がってきている。


「ふぁっ!? ツクルにーはん!! なんで目隠し布が真っ赤に染まってはるのっ!? ひゃぁ!! イルファさん、ちょっとツクルにーはんが大変なことにならはってるっ!!」


 俺の異変に気付いたルシアが慌てて、目隠し用の布を外そうとしてしてきた。


「ルシア様!? 今外されるとアタシら真っ裸ばい。ちょ、ちょっと待ってくれんっ!! 何か着らんば!!」


「そんな暇はあらしませんっ!! もし、ツクルにーはんの身体に異変があったら大事に至ってしまうわぁ!! ツクルにーはんのおらん世界なんてうちはいらしませんのや!!」


 ルシアが俺の様子をかなり心配して慌ててくれているが、多分、鼻血が大量に出てしまっているだけなので、何だか申し訳ない気分になる。だが、ルシアは俺のことが心配でたまらなかったようで目隠しの布を外してきた。


 視界を覆っていた布が外されると、目の前にたわわに実った果実が四つ実っており、プラプラと揺れて俺の目線をくぎ付けにしてきていた。


 ブッハッ!!! やべえ!! 凶悪的すぐるっ!! 


 脳内に飛び込んできたルシアの輝くような裸体と、イルファの魅惑的な裸体により、俺の脳が一瞬で焼き切れてしまい、そこで記憶が途切れてしまった。



 次に目を覚ますと、バスタオルを巻いたルシアが俺を膝枕してくれていて、同じくバスタオルを巻いたイルファは少し呆れた顔で団扇を扇いでくれていた。


「ツクル様も意外と純情な人やったね。もっと、エッチな人かて思うとったばってん、アタシ等の裸ばちょっと見ただけで鼻血吹いて倒れるとは思いまっせんやったばい」


「イルファ、うるさいぞ。裸にひん剥いてやろうかっ!!」


「あら、ツクルにーはん気付かれはった。もう、えろう心配しましたんよぉ。急に鼻からダバダバと血を流されはったんで死んでしまうかと思たわぁ」


「そうばい。ルシア様がどれだけ心配されたことか、二人でツクル様ばここまで運ぶときにタオルが外れてツクル様の大事なところがポロリしてんの気にせんで看病してくれたんば、ルシア様ばい」


 イルファの漏らした言葉に脳髄を打ち据えられる衝撃を受けてしまった。


 ファッーーーーーーーーーーーーー!! ポロリってなにさっ!! ナニが何してポロリなのさっーーー!!! ちょ、ちょっと待てよ!! イルファは意識のない俺のマイサンをチラ見したのかっ!! ルシアたん、俺は汚されちゃったよぉお!!


 イルファにポロリした物を見られたショックで脱力状態に陥ってしまう。そんな俺の顔にポタポタと冷たい滴が流れ落ちてきた。


「……ツクルにーはんっ!! 良かったぁ。ホンマに良かったわぁ。死んでしまうかと思たら心がぎゅーっと重たなって身体が震えてきてしもたんよ。その時、うちはこの人のことがえろう好きになってしもてんと分かった。ツクルにーはん、にーはんのおらへん世界は耐えられん」


 ボロボロと泣いて涙をこぼすルシアを見ていると愛おしさがこみ上げてくる。転生し、出会う運命が決められていた女性であり、俺の魂の片割れともいうべきソウルメイトのルシアを愛していることを再び認識することにした。


 ……俺だって、ルシアのいない世界なんて考えられないよ。


「ルシア、俺は絶対にルシアと一緒に添い遂げてみせるよ。だから、泣かないで。泣いているルシアを見るのは俺も辛いからさ」


「ヅグルにーはんっ! 約束でずからねぇ! うちを一人ぼっちにせーへんと約束したんですからねっ!!」


「ああ、絶対にルシアを一人ぼっちになんかさせないさ」


 俺はルシアの膝枕から起き上がると、おでこにキスをしてあげた。本当なら口にしてあげたいが、イルファやピヨちゃんの視線もあって憚られたのでおでこにしておいた。


 こうして、イチャイチャ混浴大作戦は部分的大勝利を収めることに成功し、風紀委員長のピヨちゃんからもバスタオル着用であれば、混浴は可能とのお墨付きをもらうことができた。


 入浴を終えると身体が温まったこともあり、皆が部屋に戻ってすぐに寝ることになったのだが、イルファがなぜか俺とルシアの寝室のベッドで寝たいと駄々をこねて、ルシアに説得される形で渋々了承した。


 ダブルベッドであるが三人が寝るとなると狭いので、三人が一緒に寝るのならキングサイズのベッドにバージョンアップさせねばならなかった。

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