第38話 調合器具
ピヨちゃんの装備を作り終えると、再び作業台に向かい合う。
「さて、後は灯りを作らないと。屋敷にアップデートして焚き火の明かりだけじゃ、足らない場所が出てきそうなので、【ハチの巣】から【蜜蝋】を制作して【ローソク】を作らねば……魔術の光を宿すのは希少な素材を使わねば作れないからな……」
とりあえず、素材から成分を抽出したり、調合したりできる道具の【調合器具】をまず制作することにした。素材から成分を抽出したり、色々な薬を生成できるので、作業スペースに設置しておいて損はない。そのためには、まず足らない素材である【金のインゴット】、【銀のインゴット】、【ガラス】を作らねばならならなかった。
製錬炉からメニューから【金のインゴット】、【銀のインゴット】、【ガラス】の作成を選択していく。
【金のインゴット】……金鉱石を製錬した金属塊 消費素材 金鉱石:2 石炭:2
【銀のインゴット】……銀鉱石を製錬した金属塊 消費素材 銀鉱石:2 石炭:2
【ガラス】……砂と石英を溶け合した透明ガラス 消費素材 砂:3 石英:2 石炭:2
ボフッ! ボフッ! ボフッ!
【調合器具】の必要な素材を揃ったので、作業台から作成する。
【調合器具】……抽出鍋、調合釜、乳鉢、ガラス管、薬研など数種類の器具類 消費素材 金のインゴット:2 銀のインゴット:2 鉄のインゴット:2 銅のインゴット:2 石英:2 石炭:5
ボフッ!!
ガラス管や乳鉢、薬研など数種類の器具が一つの台座にセットされ、まとまって出てきていた。空いているスペースにその【調合器具】をセットする。
「これで、素材の調合や抽出が可能になったな。これで【ハチの巣】から【蜜蝋】と【ハチミツ】が抽出できるようになった」
【調合器具】の抽出メニューから原材料に【ハチの巣】を選択した。
【ハチの巣】……ハチが幼虫を育てたり花の蜜などを蓄えたりするために作る巣 抽出素材 蜜蝋:20 ハチミツ:5
ボフッ!
黄みがかった色の粘土状の物体が調合台の上に飛び出していた。これは【蜜蝋】で、【ハチの巣】から【ハチミツ】をとった後に残るものに、熱と圧力を加えて抽出される「ロウ(ワックス成分)」のことだ。口紅やクリームの原料にもなるので、染料が手に入ったらルシアに口紅の一本でも作ってやりたい。
だが、今は調合メニューの中にある【ローソク】を制作するのが優先だ。屋敷として改築し広くなったため、灯りがないと何も見えないし、それに真っ暗闇は俺自身もかなり怖いのだが、ルシアがもっと怖がるので是非とも必要な物だった。
【ローソク】×20……綿糸を縒り合わせたものを芯にして、芯の周囲に蝋を成型したもの 消費素材 蜜蝋:3 綿糸:1
ついでに【ローソク】を差す【燭台】も制作することにした。
【燭台】×5……室内照明の持ち運べる道具で、ろうそくを立てるのに使う台 消費素材 鉄のインゴット:5 銅のインゴット:5
ボフッ! ボフッ!
一つだけ【ローソク】が差せて持ち運べるタイプの【燭台】が作業台の上に現れた。先に完成していた【ローソク】を差して火を灯した。橙色の炎がユラユラと揺れて薄暗くなっていた作業スペースを照らし出す。
「おおぉ、灯りはいいね。夜を明るく灯すのは文明の力だ。結構な労力を使ったけど、完成させることができたぞ。これで、夜の闇に怯える必要もなくなる」
ピヨ、ピヨ、ピヨオ!
装備の確認を終えたピヨちゃんがパチパチと羽で拍手してくれていた。その愛らしい姿に思わずギュッと抱きつこうと思ったが、あの黄色いくちばしがズビシュと額に打ち付けられてしまうので、グッと我慢をすることにした。
完成した【燭台】を持って、夕食を作っているルシアの元に向かい、ダイニングテーブルに燭台を二つセットした。日が暮れかけていて、薄暗かったダイニングテーブルやキッチンスペースが明るくなる。
「あら、明るうなって良かったわぁ^。焚き火からかまどに変わってちょい暗いかな思うとったとこやったんで、ツクルにーはんに灯りを作ってもらわなあかんと思ってたとこだったんです」
「これで、かなり明るくなったでしょ? まぁ、ローソクの火だからそんなには明るくないけど、無いよりはだいぶマシだ。夜になってもルシアの顔が見られるしね」
「あら、ピヨちゃんもえろう綺麗な恰好にしてもらえましたなぁ。似合うとりますなぁ~」
明るくなったことで、ピヨちゃんの装備が追加されたことに気付いたルシアが嬉しそうに褒めていた。
ピヨ、ピヨロ、ピピ。
「そうどすかぁ、ツクルにーはんはセンスが良いですから。それに、ピヨちゃんの可愛さはうちが保証したります~」
ルシアはピヨちゃんのジェスチャーだけで完全に意思の疎通をこなしていた。これが、ライダーと騎獣の絆といものだろうか……。
ピヨちゃんも可愛いが、俺はルシアの方がカワイイぞ。うん、やっぱりカワイイ。
ローソクの明かりに照らされたルシアは、日の光の下で見るのとは、また違った幽玄な雰囲気を発していて、手際の良い調理姿も優美で気品を感じられる立ち振る舞いを感じさせていた。
……本当にルシアはカワエエなぁ……祖母に厳しく育てられたって聞いているけど、案外いいところのお嬢様だったのではなかろうか……?
その後、夕食ができるまでピヨちゃんと一緒にウットリとルシアが調理する姿を見つめて過ごしていた。
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