第130話 量産化

 ゴーレム製造工房に到着した俺は遠征してきている魔王軍が万が一、ルシアパレスに攻撃を仕掛けてきた時のために戦力を更に補強しておくことにした。すでに大砲や対空砲を配置して、鉄人形隊や門番君シリーズの拡充もちまちまと進め、過剰な防衛力だと思われるが、住民達の安全をより確かにするための戦力補強は欠かさないでおこうと思っている。

 

 なので、今回は量産化を先送りしていた試作強襲型ゴーレム『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』の量産試作を行おうと思う。これも修練のダンジョン内で発見したゴーレム生成器のパワーアップ部品を作れる素材である【令呪器】を手にいれたことに端を発している。


 【令呪器】は【量産補助装置】を製作するために必要な素材で滅多に発見されないレアな素材であるのだが、魔王が作ったダンジョンは意地悪く作ってある代わりにレア素材がしまってあるという仕様なので、早速ゲットしたレア素材を使い生成器の性能を上げることにした。


 【量産補助装置】……ゴーレムを多数生成する際の素材量が減少する装置 消費素材 令呪器:1 呪器:3 金:5


 ボフッ!


 チップのような小さな部品が生成されたと思ったら、生成器に取り込まれていく。すぐに生成器メニューを開くと『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』の製造データを呼び出す。すると、今まではメニュー画面に無かった量産化のボタンが追加されているのを見つけた。


 ボタンを押すと、各種パラメーターを弄れるようになり、『量産化強襲ゴーレム』の基本性能を決めていくことにした。


「門番君シリーズは砲戦仕様に特化させるつもりだから、この『量産化強襲ゴーレム』の基本戦術はルシアパレスの城壁に設置された重砲群による優勢火力の援護下で後方攪乱兵器としての働きをして欲しいな。10メートル級のゴーレムが集団で後方に現れたら魔王軍も焦るだろうし」


 魔王軍と全面的な戦いに陥るハメになれば、このルシアパレスは大軍に包囲される可能性が高く、包囲下で後方を襲える部隊の存在は大切であった。


「『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』は高性能すぎるから、集団運用を前提にして色々と簡素化させないとな。機動力もあんなにはいらないし、武装も少し過剰に搭載してすぎているため、背部の無反動砲を破棄して、チェーンガン、杭打ち機パイルバンカー、中折れ式ショットガン、高硬度大太刀に装備を搾り、コアの容量も『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』より控えて、供給量の確保できるものになるように調整していこう」


 レアすぎる素材をパラメーターを操作することで、よりレア度の低い物へ置き換わるようにしていく。『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』は一体で銃砲撃型門番君が五体ほど製作できるほどふんだんに素材を使用して製作していたが、『量産化強襲ゴーレム』では門番君二体分ほどの素材量までに低減していた。


 量産化するものの外装は『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』に似せて白銀のままにしておき、アンテナだけを外して姿形だけは似せておいた。これには魔王軍に高性能機の『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』がたくさんいると錯覚させるための処置で、圧倒的な殲滅力をみせる『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』に似せた機体が大量に現れたと思えば混乱を与えられると思われる。


「量産型はミラージュ型と命名しよう。装備は色々と変更できるから仕様変更も視野にいれておくか」


 ミラージュ型は強襲仕様が基本であるが、装備を変更することで汎用性を持ち得る機体となっていた。生成器のメニュー画面でシミュレートしているミラージュ型は、『不可視の蜃気楼インビジブル・ミラージュ』の指揮下で一〇体が一ユニットとして戦って驚異的な戦果を挙げていた。シミュレートしたのはアモイが連れてきていた遠征軍とであるが、一万の遠征軍の内、単独で三千を壊滅させる力をみせていたのだ。ここに重砲支援や門番君シリーズの援護が加われば撃退も可能であるように思えた。


 なんとか、このミラージュ型が配備できれば、遠征軍に対応できそうだ。アモイ懐柔を失敗した時に備えて製作をしておけば、最悪でもルシアパレスを防衛することは可能だろう。


 表示されている素材の量を集めるためには、時間的にもまだ少しかかりそうであるため、『巨人の大槌』でアモイの歓心を繫ぎ止めつつ、時間を稼ぎ、上手く取り込めそうであればこちらの仲間に引き込むことを優先していく必要があった。


「とりあえず、ゴーレム製造予約を入れておこう。鉄人形隊は人数的に充足しているから生産停止して、資材をミラージュ型生産に振り向けていこう」


シミュレーターに表示されているミラージュ型の完成を待ち、メニューを閉じて作業工房を後にしてルシアの夕食を食べに屋敷に戻っていった。

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