第30話 驚きの白さ
外に出ると、一晩寝て元気を取り戻したルリとハチが庭を走り回っていた。二人とも俺の顔を見ると、こちらへ駆け寄ってくる。
「おはようごぜゃーます」
「おはようございます」
二人とも昨夜、たらふく食べて温かい寝床でゆっくりと寝たことで元気を取り戻していた。
「二人とも早いね。朝の散歩かい?」
「とりあえず、やることがあらせんで、朝の見回りをしとっただわ。付近に魔物の匂いはないと思うがねー」
二人では木の扉を開けることはできないので、防壁内を見回ってくれていたようだ。
二人とも意外と真面目で働き者だな。
「とりあえず、今日は午後から素材収集も兼ねて魔物狩りに出る予定だから、ハチとルリにも手伝ってもらうよ。そのための装備を今から作ろうと思うんだ」
「「装備?」」
ルリとハチがお互いに首を傾げる。説明するよりも実際に作成した方が早いので、まずルリ装備を作業台のメニューからを選ぶ。
【フェンリルクラウン(銅)】……魔力+5 防御+5 付属効果:なし 消費素材 銅のインゴット:1 革ひも:1
【フェンリルテイル(銅)】……魔力+5 防御+5 付属効果:なし 消費素材 銅のインゴット:1 革ひも:1
【鉄鎖】……魔力+20 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:1
魔術攻撃を得意とするフェンリルのために魔力が上昇する装備を作成することにした。
ボフッ! ボフッ! ボフッ!
「これがルリの装備ね。フェンリルは魔術が得意な種族だから、この装備にしてみた」
銅製の冠と尻尾カバー、それに脚に巻き付ける鉄製の鎖をルリに装備してあげた。装備したルリは鉄鎖を器用に身体に絡ませてフィットさせていく。
「あぁ、素晴らしい装備ですね。何だかとっても強くなった気がします」
「ルリちゃん、元々カワイイけど、その装備つけたらえれーカワイなったと思うがねー。さすがルリちゃんだぎゃー。マジでカワイイでかなわんわー」」
装備をつけたルリの姿を見てハチの鼻がだらりと伸びていた。実際に俺もルシアの装備を見て鼻の下を伸ばしていたので、人の事はとやかく言えない。
「次は、鼻の下を伸ばしているハチの分も装備を作ってあげるとしよう」
ルリに見とれて鼻の下を伸ばしたままのハチを放置して、作業台のメニューからハチの装備をできそうなものを作成する。
【鉢金】……防御力+10 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:1 革ひも:1
【鉄のベスト】……防御力+20 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:2 革ひも:1
【鉄の爪】……攻撃力+30 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:2
物理攻撃を得意するヘルハウンドのために攻撃力と防御力を上げる装備を作成する。
ボフッ! ボフッ! ボフッ!
作業台の上に現れた装備を見とれたままのハチに装備させていく。
「おわっ! ツクル様、鉄臭うてかなわせんがね」
「命を守る大事な防具だから、我慢してくれよ。それに獲物を狩る大事な武器でもある。ルリを喰わしてやりたいなら、文句は言うべきではないな」
「わかっとりゃーす。ルリちゃんのためなら、何でも我慢するでよー」
装備の鉄臭さに辟易としているハチであったが、嫁であるルリを喰わすためには、頑張って強くならねばならぬという決意があるので、すぐさま文句を引っ込めていた。
頑張れ、ハチ。ともどもに自分の伴侶を喰わせるために頑張っていこうな。
「ハチちゃん……凄いカッコいいよ。あたしの旦那様は何を着てもビシっとしているわ」
「ルリちゃん、褒めすぎだてー。おいら、まだ装備に着られておるだけだわ。この装備使いこないて、ようさん魔物狩るでな。待ってってちょー」
我が家の新たな同居人のオオカミと犬の夫婦は熱々な仲を見せつけてくれる。
まぁ、俺もさっきまでルシアとイチャイチャしていたから、他人を冷やかすことはやめておこう。当人達にとってはそれが一番幸せなことである。
「さて、あとは【綿毛】を【綿糸】にする【糸車】と、【綿糸】から【織布】を織る【機織り機】もいるなぁ」
お互いの装備を褒め合ってイチャイチャしているルリとハチを横目に、【綿織物】を作るために道具を作成していく。あと、【裁縫箱(布)】も作っておかないと衣服は作れなかった。
【糸車】……羊毛・綿毛・絹を糸に変える道具 消費素材 木材:3 棒:3 竹:2
【機織り機】……それぞれの素材の糸を使って、毛織物・綿織物・絹織物を織る機械。 消費素材 木材:15 棒:20 竹:10
【裁縫箱(布)】……布製品を縫製するのに使用する 消費素材 鉄のインゴット:1 銅のインゴット:1 竹:1 木材:2
とりあえず、【綿織物】まで作り、布製品を作る道具類を作成する。
ボフッ! ボフッ!
作業台に載りきらなかった機織り機がルリとハチの目の前に現れた。
「ひゃーっ! ツクル様! おそがいがねー! 作る時は声をかけてちょー」
「すまん。意外に道具がデカかったようだ。邪魔にならない所に設置するよ」
すぐさまインベントリにしまいこむと、製錬炉やタンニン漬け壺のある工房予定地に設置しておいた。朝食後に小屋の改装を予定しているので、仮置きの場所となっている。
仮置きした【糸車】からメニューを開き、【綿毛】がある分だけ【綿糸】を作成する。
【綿糸】×5……綿毛をほぐして縒り合した糸 消費素材 綿毛:1
細くよられた糸巻がそれなりの量になった。そのまま、すぐに【機織り機】のメニューを開き、【綿織物】を選択する。
【綿織物】……綿製品の元になる織布 消費素材 綿糸:10
機械で織ることなく生成された【綿織物】が白煙とともに【機織り機】の上に飛び出した。機織り職人が見たら憤慨ものの作り方だろうが、織り方を知らない俺としては非常に助かる仕様だと思う。
そして、【裁縫箱(布)】の木箱から、型紙を選んでいく。もちろん最初はルシアの下着だ。純白の白である。ちょっとばかり、レースが入ったエッチめなヤツにしておいた。
【ブラジャー(綿)】……綿製のブラジャー 消費素材 綿織物:1
【パンティー(綿)】……綿製のパンティー 消費素材 綿織物:1
ボフッ! ボフッ!
木箱の上に飛び出た純白の下着を握り締める。肌触りはフワフワとして柔らかい。おまけに汗もしっかりと吸収してくれる逸品なので、是非とも下着として使って欲しい。
あとは、普段着用にダボっとした緩めのラインをした【コットンシャツ】と、膝上一〇センチの【コットンスカート】、更に寝間着用に【コットンパジャマ】を作成することにした。三つともシンプルなデザインで、白い色をしているので、ルシアによく似合うと思われる。
【コットンシャツ】……綿製の上着 消費素材 綿織物:2
【コットンスカート】……綿製のスカート 消費素材 綿織物:1
【コットンパジャマ】……綿製の寝間着 消費素材 綿織物:2
ボフッ! ボフッ! ボフッ!
ルシア改造計画も軌道に乗り始めてきたので、最初に着ていた黒い囚人服は廃棄する予定だ。
「あとは俺のパンツと作務衣だな……」
型紙を見ていたら、男性用下着はブーメランパンツのような形しかなく、とても恥ずかしいが、見られるのはルシアくらいだと思えば、冒険したくなったので作成することにした。そして【作務衣】の方は寝間着代わりに使おうと思っている。後は、沐浴の際に身体を洗う【洗い布】も一緒に作成した。
【ブーメランパンツ】……綿製の男性用下着 消費素材 綿織物:1
【作務衣】……綿製の衣服 消費素材 綿織物:2
【洗い布】……綿製のタオル 消費素材 綿織物:1
ボフッ! ボフッ! ボフッ!
生成された衣服が木箱の上に置かれていた。これだけあれば、何とか着回しをしてしのげると思う。畑に植えた【綿の花】が生育すれば、新たな衣服も作れるようになると思うので、それまではこれで我慢するしかない。
「さて、完成したな」
「……相変わらずのデタラメな力ですね。あっという間に布製品が出来上がってしまうなんて……職人泣かせな技ですね」
ルリがビルダーの技を見て『デタラメな力』だと言った。
確かに非常識な力であるが、僻地にて自給自足生活をするには持ってこいの能力だと思われる。ルシアが言っていたビルダーが多くいた時代は俺よりももっとヤバイ物を量産していた奴もいたかもしれないのだ。
それから比べれば、俺の生成品など、カワイイものである。
「まぁ、人里離れたこの地で俺達だけで生活しようと思えば、こういった力を有効活用しないとね」
「ツクル様の力は神さんから貰った、どえらりゃー力だで、あんまり見せびらかさん方がええぎゃー」
「そうしておくよ。外ではなるべくコッソリと使うことにする」
「そーしたほうがええ」
ハチも俺の力のことを心配してくれていた。二人の忠告には感謝しておく。油断と慢心から、弾圧の対象であるビルダーであることを知られては元も子もない。僻地だといって人の目がゼロということはないので、気を引き締めることにした。
衣服を作り終わったところでルシアの呼ぶ声が耳に届いてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます