第31話 マイホームビルダー キッチン&ダイニング編


 ルリとハチの防具姿を見たルシアが二人を褒める。褒められた二人は尻尾をブンブンと振り回して喜んでいた。その後はみんな揃って朝食を食べ終えると、ルシアにさっき作った綿の衣服を渡して着替えるように言うと、非常に喜んでくれた。


やはり、革製の下着は少しゴワゴワしていたようで、手早く後片付けを済ますと朝の沐浴にいそいそと出かけていった。


 一方、ルリとハチには小屋の改築工事を始めることを伝え、外で日向ぼっこをしてもらうことにした。そして、鉄の作業台を家の中に持ち込んで改築作業を始めていく。まず、室内の物をインベントリにしまいこみ、小屋の中をがらんどうにしていった。


「よし、とりあえずは小屋の木の壁を外すとするか……」


 木槌を装備すると、小屋の壁と床を叩いてドンドンと素材化させていく。この【木の壁】と【木の床】は沐浴場に再利用するつもりなので、インベントリにしまっておいた。あまり広くなかった小屋はものの数分で更地になってしまっていた。


「ちょっと、四人だと狭いんだよね。リビングは広くとりたいから、水路の反対側の崖の斜面を削って、そこに寝室を作るとするか」


 手始めに水路と反対の崖を木槌で削っていく。土と粘土が混じった地盤であったので、サクサクと削れていき五メートル幅で防壁付近まで平らにならしていった。これで、かなりのスペースを確保することができ、上層階への改築も考えればかなりの広さの家になる予定だ。


 家の敷地を確保したところで、切り開いた時に大量の【粘土】と【砂】が手に入り、木の壁では魔物に侵入された場合に強度的に不安があるため、レンガ造りに踏み切ることにしたのだ。そして、建築資材となる大量の【レンガの壁】とレンガの壁を高く積むための【はしご】を制作していく。


 【レンガの壁】……粘土と砂を焼き固めたレンガの建材 消費素材 粘土:10 砂:10


 【はしご】……木製のはしご 消費素材 木材:2 棒:3


 大量に生成された【レンガの壁】を見ると、幅一メートル、高さ1メートル、奥行き一メートルの立方体の建材として生成されている。ルリやハチが大きく成長した時のことを考えて、一階の室内高は六メートルほど確保することにした。


 なので、天井分も入れて七ブロック分の【レンガの壁】を積み上げることにした。


最初に取りかかったのは、飲料用の水場を利用したルシアの砦となるキッチンフロアだ。順番に【レンガの壁】を積み上げていき、身長では高さが届かなくなったので、はしごに登り天井部分も覆っていく。そして、換気口を兼ねた箇所から竹の樋で飲料水の通り道も確保する。


「水瓶と流し台があった方がいいだろうな……」


 とりあえず、思い付いたものを作って設置してみる。後でルシアが要らないと言えばインベントリの肥やしにすればいい。


 【水瓶】……粘土を焼きあげて作った大瓶 消費素材 粘土:2


 【流し台】……石製の流し台 消費素材 石:3 岩石:2

 

 ボフッ! ボフッ! 


 完成した【水瓶】は竹の樋から水を受け、溢れた分は元々の水路に流れ込み、水堀へと流れ込んでいく。一方、【流し台】は新たに外に掘った下水用の深い穴につながる排水路を掘っておいた。こうしておけば、水堀の汚染も避けられ、水の汚染による病気の発生も防げると思われる。


「よしよし、キッチンはルシアが一番喜ぶところだから、気合を入れて作らないと。後は【レンガのかまど】を作って、調理スペースを反対側に作ればシステムキッチン風にはなるな」


 機能性の高いキッチンを作って、料理番であるルシアの負担を少しでも和らげてあげたい。そう思い、作業台のメニューから【レンガのかまど】を作成する。


 【レンガのかまど】……レンガ製のかまどで火力は強め 消費素材 レンガ:20 鉄のインゴット:5


 ボフッ!


 生成された【レンガのかまど】を【流し台】の横に置く。そして、先に作っておいた通風孔と外への導線を兼ねた勝手口に【木の絡繰り扉】を取りつける。この【木の絡繰り扉】はドアを開けず扉部分を上下に開閉できる優れものであるのを発見して生成しておいた。これで、調理の最中にルシアが酸欠でぶっ倒れる危険性はなくなっただろう。

 

 対面側の調理スペースには耐久性を考えて岩石ブロックを並べておいてみた。少しゴツゴツとしているが、気になる凹凸ではないと思われ、調理器具も置けるように広めのスペースを取っておいてある。


「キッチンは完成だな。次はリビングに取りかかろう。まずは【木のダイニングテーブル】と【椅子】×2 後は【暖炉】も設置しておかないと冬は乗り切れなそうだ。とりあえず、最低限の物だけでいいな」


 今のところはご飯を皆と一緒に食べるだけの場所なので、必要最小限の物だけにしておく。作業台から生成する物を選んで選択していく。


 【木のダイニングテーブル】……木製の大きな四人掛けのダイニングテーブル 消費素材 木材:3 棒:2


 【椅子】……木製の椅子 消費素材 木材:2 棒:2


 【暖炉】……レンガでできた暖炉 消費素材 レンガ:20 鉄のインゴット:2 銅のインゴット:1


 ボフッ! ボフッ! ボフッ! ボフッ!


 生成されたアイテムを設置していく。テーブルとイスの設置し、天井を覆い終えると、暖炉を崖側に設置して煙突用の穴を天井に開ける。そして、ルリとハチの出入りができるように広めのスペースを取った玄関に【木の扉】をはめ込む。


「よし、これでよし。殺風景だけどボチボチとかえていけばいいよな。でもリビングダイニングで一〇〇畳近い広さはちょっとやり過ぎたか……天井も高いし、ちょっとしたビルのエントランスホールくらいになっちまったぜ」


 幅五メートルほどある巨大な玄関扉を開けると、一〇〇畳のリビングダイニングがババ―ンと拡がっていた。小屋から比べれば十倍以上の広さになっている。まぁ、床は建材が足りないので土間のままであるが……。

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