第49話 美女捕獲
ドサッ!
重たいものが落下する音がすると、『フゲェ』という情けない声が聞こえてきていた。助けた女性が受け身を取り損ねて顔面から地面にダイブしてしまったらしい。
あ、やべ。気にせずに落としちゃったぜ。……まぁ、死んでないからいいよね。
「痛か、痛すぎる。ぬしゃ阿呆かっ! なんでゆっくりと地面に降ろそうとせずに急に縄ば解くばい。何かアタシに恨みでもあっと!」
顔を強打した女性が、赤くなった鼻をさすりながら抗議してきた。助けた女性はぱっつんと切り揃えられた前髪と、お尻まで垂れた長い黒髪が印象的な女性で、吊り目気味の赤い瞳で恨みがましくギロリと睨んできている。年齢はルシアよりも上の感じられ二〇代前半に感じられるが、派手で露出度の高い服に包まれた身体つきは、ルシアよりも更に凶悪な女性らしさを発揮していた。
ブハッ! 逆さ吊りの時もデケエェと思ったけど、おっぱいデケえぇ!! 何このエロスな生物は……。喋るだけで揺れているのは俺の目がおかしくなったのか……。
ファッ! 違うんですっ! ちょっとおっぱいデカいなと思っただけで、俺は全然ルシアたんLOVEなわけで……これ! そこ、君の持っている拳銃はもちろん玩具だよね? やめるんだ。そんなことをして人生を棒に振っちゃいかんよ。君の衝動的な行動がルシアたんがどれだけ心を痛める行為がわかっているのか! そうだ。落ち着け。引き金から指を外すんだ。今ならまだ間に合う自首しろ。情状酌量をしてもらえるように陳述書は書いてやる。いい子だ。
抗議のために詰め寄ってきた女性の大きすぎる胸が、エアバックのように俺の身体に衝突していた。
ぼよん、ぼよん。
ファッーーーーーーーーーー!! ナニコレ!! おっぱい当たってるのぉーーーーーーー!! 待て!! みんな、動揺するな!! 俺はルシア派だっ!! そこ、短機関銃なんて持ち出すなっ! で、デザートイーグルなんてどこから持ち込んだ! やめろ、これは不可抗力だ。俺はルシアたんLOVEなんだーーー!!
詰め寄った女性のおっぱいアタックにより、動揺してしまい、例の武士言葉が漏れ出てしまう。
「至極かたじけないが、おぬしの立派にお育ちになられたでござる、お胸殿がそれがしの身体に当たっておるので、どうにかして貰えぬでござろうか?」
捲し立てるように抗議していた女性の視線が下を向く、俺の身体に当たってムギュっと押し潰れた胸を見ると、少し日に焼けた肌が一気に紅潮していった。
「ふ、ふぇ!? すまんっ!! アタシの胸ば無駄に大きゅう育ってしもうたけん、気付かんかったとはいえ失礼した。そ、そのワザとやなかけん勘違いせんごつ!!」
自分が俺に胸を押し付けていたことに気付くと、バッと飛びのいて距離を置く。身長は俺と同じくらいのため、当たっていた場所は胸の辺りだった。
「……すまない、俺もちょっと動揺しておかしな発言をした。君がわざとやったことではないのは理解した。ところで、君はなんでこんな辺鄙な場所で罠に引っ掛かっていたのだい?」
冷静さを取り戻した俺は、素性の知れない女性が罠に掛かった事情を聞き出すことにした。どう考えても女性が一人でこんな辺鄙な場所を訪れる理由が見いだせないので、彼女の素性も同時に聞き出していきたかった。
「ゴブリンとコボルトの集団の面倒ば見させられとったと。
女性は俺が聞く前に自らベラベラと自分の素性を喋り出していた。どうやら、イルファは俺のことを通りがかった一般人だと思っているらしい。話の内容によれば、イルファの部隊が飯探しをしてさすらっていた際に、俺の家を見つけて踏み込もうとして全滅の憂き目にあったということらしい。
……ふむ、このまま生かして帰すと、俺達の存在が魔王軍に露見してしまうかも知れないな……まだ、防備が完全ではないので、現時点で見つかるのは非常に不味い。悪いがこのまま帰す訳にはいかないな……かといって殺すのも非常に後味が悪い……どうしたものか……。とりあえず、捕獲は決定だな。
おもむろに括り縄を手に取ると、ベラベラと今後のことを無邪気に喋っているイルファの背後に周り、逃げられないように縄で手を縛る。
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