第4話 同居人
崖の上で助けた狐耳の美少女に心を一瞬で奪われ、『ビルダー』として世界を創造しようとしていた決意は、目の前の美少女とマッタリ暮らすのも悪くないなという考えに傾き始めていた。
「ルシアさんは追放者だと言っていたけど、住むところはあるの? 生活はしていける?」
「おにーはん、この魔物が跋扈する世界で追放者というのは、死を宣告された者とおなじどす~。ウチは住むトコもなければ、生活の基盤も無いさかい、ひたすらに死を待つ存在どす」
ルシアが急に元気を無くして地面に顔を伏せていた。
「死刑宣告……ルシアさんは街で何か悪いことしたの?」
「少々、魔術の研究にのめりこみ過ぎて、暴走した魔術が城壁をぶっ壊してしもたんどす~。それで、えらいさんにムチャクチャ怒られて、知らん間に追放刑にされてしまったんどすえ~。えげつないと思いませんかぁ~?」
「城壁破壊ですか……ほぼ有罪判決ですね。追放されてもおかしくない……建造物を破壊するのは大変に悪いことなので……」
ルシアには悪いが建造物の破壊は追放されてもおかしくない。人様が作った物を破壊するのはいけないことだ。ビルダーとしては作った物を破壊されるのが一番頭にくる。
だが、ルシアはカワイイので許す。カワイイは正義なのだ。もし、ルシアが俺の作った物を壊しても怒らない。今そう決めた。
「行く当てが無いなら、俺のところで住みませんか? 早急に別の小屋を作りますんで、雨露をしのぐことぐらいはできますよ」
申し出を受けたルシアが、ウルウルと瞳に涙を溜めて上目遣いをしてくる。
これはアカン……もうルシアたんのいいなりになりそうだ。カワイすぐる。
「おにーはん……本当に、本当に一緒に住んでいいんどすか? その……うち、けっこうご飯とかようけ食べちゃいますよ。こないな街から外れた辺鄙な場所で、食料の調達はでけるのどすか~?」
「ああ、大丈夫さ。俺は『ビルダー』だからね。大半の物は自作できるし、食料も農地を開墾すれば自給できる目処は立っているよ。しばらくは
「ツクルにーはんは、『ビルダー』どしたか……ええっ!! 『ビルダー』!? 素材から物が自由に作り出せるちゅう伝説の職業ですやろ~?」
「伝説? そうなの? よく分からないけど、物を作り出す能力はあるよ」
そう言って、背中から木槌を取り出し地面を叩く。
ドンッ! ボフッ!
目の前に穴が開き、ルシアの前に土のブロックが生成される。
「凄いやん~。本当に『ビルダー』って存在してたんどすなぁ……そんなら、安心してご厄介になれそうどすなぁ~。ツクルにーはん、不束者ですが今日からご厄介になります~。色々とお手伝いできることがあれば、うちに遠慮なく申し付けておくれやす~」
ルシアがキチンと正座をして姿勢を正し、三つ指を付いて頭を下げていた。
頭を下げたルシアの大きなおっぱいが、腕によって行き場をなくし、より強調された格好になっていた。
ルシアたん……素晴らしい……ブラボー……はんなり京都弁の狐娘だけでもサイコーなのに……おっぱいまでデカイだなんて……ルシアたんを追放してくれた街の偉いさんには勲章を贈らねば……。
「あ、ああぁ。ルシアも困ったことがあれば遠慮せずに申し出てくれ。素材さえあれば、大半の物は作り出せるようになるはずだからね」
「ツクルにーはん、素敵。えらい頼りになるわ~」
>魔術師ルシアが仲間になりました。
急に目の前にポップアップ画面が現れ、ルシアが仲間になったことを表示していた。『クリエイト・ワールド』では、放浪者であるNPCを自らが作った街に招待して仲間にできるシステムがあった。今回のポップアップメニューはそのシステムが作動したものと思われる。
ルシアたんゲットぉ!! これで一緒に行動することができるな。魔術師らしいけど、ステータス見てみるか。
ルシア・カバーサ 種族:妖狐族 年齢:18歳 職業:魔術師 ランク:新人
LV2
攻撃力:8 防御力:9 魔力:20 素早さ:6 賢さ:18
総攻撃力:8 総防御力:12 総魔力:20 総魔防:18
使用魔術:火炎の矢(魔力:+10 火属性) 建造物破壊(魔力:+?? ??属性)
装備 右手:なし 左手:なし 上半身:追放者の服(防:+1) 下半身:追放者のズボン(防:+1) 腕:なし 頭:追放者の帽子(防:+1) アクセサリ1:なし アクセサリ2:なし
ルシアのステータスを確認すると、もう少し若いかと思ったが一八歳のれっきとした女性だった。主に顔立ちが幼いのと身長が低いのを除けば納得の年齢である。
能力的には素人に毛が生えた程度の能力だが、使用魔術欄に燦然と輝く【建造物破壊】の魔術が不穏さを感じさせる。
だが、ルシアたんはカワイイのだ。きっと、魔術を放とうとしてズルベタンと転倒して、建造物を破壊しても怒ったりはせず、心で血涙を流しつつ、笑顔でルシアたんのほっぺをひっぱり『痛い~堪忍どすえ~』としたら許してしまうことは間違いなかった。
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