第15話 リア充生活万歳!
小屋の中に行くと、スライスされた牛肉がニラと一緒に炒められて、木の大皿にドドンと山盛りに盛り付けられていた。これが、ルシアが作ってくれた本日の夕食であった。
それにしても、二人分にしては分量が多いような……ルシアたんは健啖家だけど、これはちょっと盛り付け過ぎなのでは……主に牛肉が……。
木の大皿に盛りつけられた牛肉は、すそ野にニラを敷き詰め、積み上げられたスライス肉の山がありえない高さにまで積まれている。まさに『肉山』と名付けるべき偉容であった。
「やっぱりまだ調味料が足らんさかいに、こないな手抜き料理になってしもて、堪忍なぁ。あと、最低でも【
料理人の祖母に仕込まれたルシアとしては、納得のいかない出来の夕食らしいが、木の大皿に盛られている『肉山』の炒め物からは猛烈にいい匂いが立ち上って、俺の嗅覚を刺激していた。
「いやいや、これも凄く美味しそうな匂いがしているよ。さすがルシアが作った料理なだけのことはある」
「お口に合うか分かりまへんが、たくさん食べてくださいね。まだ、熱いかもしれへんから、うちがツクルにーはんに、フーフーしてあげますさかい」
ルシアが大皿の盛り付けられていた炒め物を小皿に取り分けると、湯気をあげる炒め物をフーフーと冷ましたものを箸でこちらに差し出してきた。
ふぐぅうううっん!! ルシアたんのフーフーされた夕食キタァーーーーっ!! もうね。至極の楽園とはこのことを言うんだよぉぉおお! そこで『リア充爆発しろ』と恨み節をぶちまけている君。私は爆発などしないのだよっ! HAHAHA! これから、ルシアたんと素敵タイムを満喫するのを、指を咥えて見ているがいい! HAHAHA!
ニッコリと笑顔で自分の作った夕食を差し出すルシアの姿にたちまちに魅了される。そして、俺は差し出された炒め物を口の中に収めて咀嚼を始めた。
……ああぁ……美味い……美味いぞぉおおっ!! ルシアたんの料理は美味いぞぉおおっ!!! ルシアたんの愛情タップリのご飯は美味しいのだぁ!
咀嚼した牛肉は臭みもなく歯を使わなくてもよいくらい柔らかさで、ちょうど良い塩気と、山椒の爽やかな辛みが食欲を増進させるとともに、ニラのほのかな甘みがアクセントとして絶妙な味を醸し出していた。
とても、調味料が足りなくて手抜きした料理とは思えないクオリティーの料理に仕上がっている。
はっきりいって、お店に出してお金が取れるレベルの料理だと思う。それほどまでに美味い料理なのだ。
「うはぁああ、美味いっ!! ルシア、美味しいよコレ!! ほら、ルシアも食べてみて」
自分の箸でルシアの炒め物を取ると、お返しのフーフーをしてあげて、ルシアの口元に持っていってあげる。ルシアは差し出された炒め物を恥ずかしそうに頬張ると、モキュモキュと咀嚼を始めた。
グぅ、カワイイぜ……ご飯を食べる姿も絵になるルシアたんは、マジで天使の生まれ変わりとしか思えないぜ……
「そうどすなぁ。味見しながら作らせてもらいましたけど、案外、ツクルにーはんに食べさせてもろたら、美味しいわぁ……お返しにもう一つどうどすか?」
ルシアの差し出した炒め物を再び食べて口内で咀嚼する。ジャンクフードと言われる食べ物で育ってきた俺だが、このルシアの料理に慣らされてしまうと、ビルダーの力で作る食事では耐えられなくなってしまうかもしれなかった。
それほどまでに、ルシアの作る料理は俺の胃袋をガッチリと掴んでいた。このまま、なし崩し的に嫁として転生人生を終えるまで一緒に暮らしていきたいとの思いが強くなる。
「美味い……美味いよ。ルシアも遠慮せずにいっぱい食べてね。ほら、アーン」
再びルシアの口元へ炒め物を運んであげる。この姿を転生前の俺が見れば、『恋人同士がイチャイチャしやがってリア充爆発しろ』と恨みの籠った目で見ていたに違いない。
だが、実際にリア充生活をしているのが自分であるため、そんな暴言を吐くつもりは、欠片も持ち合わせていなかった。
「美味しいわぁ~。やっぱり、ご飯はどなたかと一緒に取る方が楽しいですよね」
「そうだな。一人の食事は寂しいよ。ルシアと出会えたことを神様に感謝しないとな……」
「そうどすなぁ。うちも街を追放されてツクルにーはんと、出会えたことを神様に感謝しときますわぁ~。神様、おおきにどした~。フフフ」
温かい食事をカワイイ恋人と一緒に食べられるこの瞬間は、俺にとっては至福の時間であった。転生前の生活では社畜として日付が変わる寸前まで監禁されて、休日以外は仕事一色に塗りつぶされる生活を送っていたに違いない。
産んでくれた両親には悪いと思うが、転生して本当に良かったと思う。
そうやって、ルシアとイチャイチャしながら夕食を終えた
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