第82話 銃器開発
※ツクル視点
修練のダンジョンをクリアすると、外に転移しクリア報酬は【転移石】と各種能力アップの種が多数祠から手に入った。攻略された修練のダンジョンはその姿を消し、砂漠の景色のみが残されていた。
転移ゲートを回収し、数日かけて歩いて屋敷に戻った俺達はその日夜、こっそりと発酵樽で生成しておいた麦酒を取り出し、ルシアの料理を肴に飲めや歌えやの大宴会を深夜まで行っていた。
……そして今、目覚めたら裸でベッドの上にいる。しかも、両手には裸のルシアを腕枕しているのだ。幸い、シーツが掛かっているため、丸裸ではないのが救いだが、非常に危険な状態であることは免れない。
ファッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!! こんなのピヨちゃんに見つかったら、一発でアウト宣告くるぅーーーー!
そう思って周りを見渡すがピヨちゃんの姿はいつもの場所に見られなかった。ちなみにタマもイルファもベッドにおらず、どこか別の場所で寝ているようだ。
……これはチャンスなのか……い、いや、絶対に罠だ。ここまでの流れなら、俺がルシアのおっぱいを触ろうとすると、必ずピヨちゃんの鉄槌がくだる流れだった。そうだろう、同志たちよ。俺は君達の代弁者であり、忠実な実行者であった。だが、ここでエロを選択すると今度こそ、この物語が終わってしまう流血の大惨事が起きてしまうのだよ。LVアップしたピヨちゃんのくちばしが会心の一撃で俺の脳天を貫くのが目に見えている。そういうことなので、ここは裸で寝ているシーンで止めておこうと思う。俺をチキン野郎と蔑んでもいい。だが、ピヨちゃんの『エッチなのはいけないと思います』攻撃は恐怖の象徴なのだよ。そこだけは理解して欲しい。
冷静さを保った俺は、昨夜からの流れを思い出していく。みんなで麦酒をしこたま飲んで、フラフラになりつつ、色々脱いでベッドにたどり着いたのは覚えているが、ルシアが裸になっている理由が思い浮かばなかった。
やっべえ、記憶が飛んでる。ルシアも酒がいける口だったので、俺と同じようにカパカパと麦酒をあおっていたはずだ。
……やってないよな……。同衾だけって約束だもんね……。恋人とはいえ無許可はまずい。
考えるとさーっと血の気が引いていく。記憶がないいじょう、何かあっても答えられないが、その時はキチンと責任を取るのが男の務めだと思う。むしろ、俺としては好都合でもある。
そうすると、子供部屋や勉強部屋も作らないといけないなぁ。それに教師や医者もこの屋敷に招かないといかんなぁ。教育と医療の向上は最優先課題として考えよう。それと銃器・大砲対策として城壁をもっと拡大させて領域拡げると同時にこっちも砲座を作っていかんとなー。色々と強化策をまとめて第二次改装に入らないと。修練のダンジョンクリアで半年近くは余命が伸びたからな。街にそろそろ行ってみるか。
これからのことを考えていると、下半身の方がもぞもぞとし始める。気になったので、シーツをめくると、頭から赤髪のアホ毛を一房生やした一〇歳くらいの少女がいた。
ファッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!! だ、誰だぁーーーーー!! あんた誰や!!
思わず現実から目を背けるためにシーツを下ろして周りを見渡す。
やばいよ。なんで俺のベッドに見知らぬ女の子がいるのさ……というか誰だ。兎人族の子じゃないし……あんな見事なアホ毛は見たことないな……国宝級?
もぞもぞと動いたかと思うとシーツから顔を出した。銀髪のショート髪に一房の赤いアホ毛を生やし、クリッと丸い金色の眼が俺を捉えていた。
「あたし、ルシアお母さんにエッチなのはいけないと思うの!! もちろん、あたしにも!! だから、ツクルにはてんちゅーするの!!」
少女は訳の分からないことを言うと、ものすごい勢いで自分のおでこを俺のおでこに振り下ろしてきた。
「あんぎゃああああああああぁぁ」
ここで、俺の意識は一旦途切れていった。
ハッ! 夢か! ふぅ、リアルすぎてマジでビビったぜ。ルシアたんとの同衾ならまだしも、銀髪少女とかマジないわー。やべえな。ルシアたん成分不足してるのかな。そういえば、今日は尻尾も弄ってないぞ。
目覚めると先程のベッドの上で同じように裸で目が覚めた。ただ違うのはベッドの上に寝ているのは、俺一人だけだった。
「ツクルにーはん起きなはれ……いいかげんおひいさんが昇ってますよ」
「そうばい。ツクル様が起きてこんば、うちらも朝ご飯にありつけんのばい」
普段着に着替えた二人がにこやかに着替えを差し出してくれていた。辺りを見渡したが先程見たアホ毛の少女はどこにも見当たらず。代わりにいつもの様子で小首を傾げているピヨちゃんが、オレを見つめているだけであった。
あれ? さっきのは夢か……。夢だったんだな……妙にリアルな夢だったが……酒の飲み過ぎか……。はぁ、夢だったらルシアのおっぱい揉んでおけばよかったぜい。
「おはよう。なんだか、妙な夢を見た気がする」
「そうですか? 昨日はよーさんお酒を召し上がられはったからちゃいます?」
「そうですばい。ツクル様はたくさん酒ば飲み過ぎて奇妙な夢ば見たんに違いなか!! まさかルシア様とえっちなことばしてたじゃなかろうね」
頭がズキズキと痛むのは二日酔いのせいだろうか……。
額に手を持っていくと、何かにぶつけたようなたんこぶができていた。
ふむ、飲み過ぎてどっかにぶつけたかな……。
「酒はほどほどにしておかないといけないね。いささか、飲み過ぎたようだ。さて、朝ご飯食べるとするか」
二人から受け取った着替えを着ると朝食を皆で一緒に頂くことにした。
その後は各人自由行動にして、俺は作業場で第二次改装案を考えることにした。
「まずは銃器・大砲MODがキチンと追加されているかを確認しないと」
作業台メニューを確認していくと【万能工作機械】という道具が追加されていた。これは『クリエイト・ワールド』には無かったアイテムであった。とりあえず、素材は揃っていたので作ってみる。
【万能工作機械】……金属製品の削り出しや整形加工等色々な加工を施す機械 消費素材 鉄のインゴット:50 銅のインゴット:20 魂石:1 中魔結晶:3
ボフッ!
現れたのは、幅三メートル長さ二メートルの本格的な工作機械であった。とりあえず、邪魔にならない場所に設置をすると、メニューを開いていく。
「うぉ、なんだこれマニアックすぎだろ」
メニュー画面から現れたのは銃の設定画面で形状指定、口径指定、機構指定、弾丸指定、装弾数指定、その他諸々の設定群だった。大砲も同じような設定画面が作れられており、小口径から大口径まで取り揃えられていた。
……自分たち様にカスタマイズできるということか?
試しに一つ作成してみることにした。まず、形状指定から始まると『拳銃』、『小銃』、『突撃銃』、『狙撃銃』、『散弾銃』、『機関短銃』、『軽機関銃』、『重機関銃』の八種類から選べるようになっていた。その中の『拳銃』を選ぶと『口径指定』へ進んでいく。『拳銃』カテゴリで使える口径のみが光っていた。
『二二口径』、『二五口径』、『三〇口径』、『三二口径』、『三八口径』、『四五口径』、『五〇口径』、『9mm』の口径が選べるのか。フルパワーな奴でいってみよう。『五〇口径』を選択した。
続いて『機構指定』は『リボルバー』、『オートマチック』の二択であったので、『オートマチック』を選択、『弾丸指定』は『銅合金』、『徹甲』、『通常』の中から『通常』を選択。『装弾数指定』は『9+1』しか表示されなかった。あとはグリップ形状や安全装置の有無などを選択すると、銃の名前を問われた。とりあえず、実験銃なので『ツクルカスタム』と記入すると必要素材が表示された。
【ツクルカスタム】……五〇口径オートマチック拳銃 消費素材 鉄のインゴット:2 銅のインゴット:2 硫黄:2 砕けた骨:2 亡霊の霊核:2 魔結晶:2
ボフッ!
完成した銃が作業台の上に飛び出した。手に取るとずっしりと重い感じがして片手撃ちは危ないと感じた。
「重いな」
とりあえず、試し撃ちがしたかったので、裏の崖上に昇って周りに人がいないことを確認すると、手近な木に向って両手でしっかりと構えて狙いを定めて引き金を引いた。
ズバシュ!
もの凄い反動と射撃音にビックリして、身体が後ろに反ってしまう。弾は明後日の方向へ飛んでいき、木は無事なままだった。
「デカイの作り過ぎたな。こんなに反動がデカいと上手く当てるのなんて至難の業だぞ」
もう少しだけ距離を詰めると、もう一度しっかりと構え、反動に負けないように足を踏ん張った。
ズバシュ!
再び放った銃弾は、今度は逸れずに目標の木に命中すると幹を貫通してへし折っていた。
「威力は十分か……けど、これだと危ないから、もう少し、口径の小さいやつを護身用に作るか……小銃や狙撃銃も作って損はないだろうし、大砲も実験しないとな」
俺は試作品で作った銃の威力を確かめ終えると、今度は大砲の試作品作るために作業場に戻っていった。
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