第36話 奇跡のコラボ
「ひよこ?」
黄色いくちばしが見えたことで、白く丸い物体が卵であることが判明し、中にヒナがいることも分かった。
「ひよこやったら、殻を破いてやらんと死んでまう。通常は親鳥が卵をつついて割るのを手伝うてんはずさかい。このままだとこの子は死んでしまいますよっ!」
ヒナがいることを知ったルシアが、慌てて卵の殻を割り始めていた。ベリベリと一心不乱に卵を割り続けていく。
ピヨ、ピヨ。
半分ほど卵の殻が割れたところで、ヒナの鳴く声が聞こえてきた。割れた殻からチラリと顔をのぞかせる。あきらかにニワトリのヒナにしては身体がデカイ。何だか嫌な予感が脳裏をよぎった。
「わぁああっ! ツクルにーはん! おっきなひよこちゃんですわぁ。あぁ、うちを突いても何も出てきまへんえ」
巨大な体躯のひよこがルシアのおっぱいをポヨン、ポヨンとくちばしで突いている。
いいぞ、もっとや……れ。じゃない。絶対にこのデカさはニワトリ以外のひよこだ。ダチョウかそれとも大ニワトリか……。
「えりゃーデキャーひよこですね。何の魔物のひよこだろきゃー?」
「鳥系の魔物なのは間違いさなそうだけど……あたし、あんなにデッカイひよこは初めて見るわ」
ルリもハチも卵から孵ったひよこを見て首を傾げている。その間にもひよこが殻を自分で割り、卵から転がり出てきた。大きさは体長二メートル近いひよこだ。
ん? 尻尾が生えているのか……?
体長二メートルのひよこには小さな尻尾が生えていた。目を凝らしてよく見ると、それは蛇の頭を持っており、ウネウネと動いてもいた。
……ふぇ!? ふぇぇえええぇえぇっっ!!! これってまさかっ!! コカトリスのひよこかぁああ!!
びっくりして腰が抜けそうになった。ひよこの正体は、コカトリスだったのだ。『クリエイト・ワールド』では、こいつの石化ブレスで何度も石化させられて仲間が葬られていった苦い思い出が蘇ってくる。
確か、魔物レベルは50以上でヘルハウンドやフェンリルといった最終盤で現れるはずの厄介な魔物のはずだったのだ。
「ル、ルシア……この子は自然に帰そう……それがお互いにためになると、俺は思うんだ」
ピヨ、ピヨ、ピョオ!
コカトリスのひよこが抗議したそうに大きな鳴き声をあげている。どう見ても、刷り込み効果でルシアを親だと思っているようだ。マジでヤバい。
「えー、飼うちゃあかんのですか? ホラ、こないに可愛いんですよ。ピヨちゃんが大きゅうなったら、きっと卵を産んでくれはるっ!! 食材の確保にも貢献してくれる思うんよっ!!」
ルシアはすでにフワモコ生物であるコカトリスのひよこに取り込まれたようだ。猛烈に飼いたいアピールを俺に向けて送ってきている。しかも、もう名前まで決めているようだった。確かにニワトリの親戚だから、卵も産むだろうが……。
だが、ルシアたんよ。その子はコカトリスの子供なんだ……おっきくなったら、毒のブレスとか石化ブレス吐いてみんなに迷惑をかけちゃうかもしれないんだぜ。
そう、伝えてやりたかったが、どうしてもルシアの悲しむ顔を見たくなかったので、渋々ではあるがコカトリスを飼うことに決めた。
とりあえず、毒のブレスと石化ブレスはお家では吐かせないように教育しておかないと……朝目覚めたら、石化していましたじゃ、笑えない。
「……ルシア、飼ってもいいけど、この子はコカトリスの子供だから、飼育には細心の注意を払うようにっ!! ピヨちゃんも毒と石化の息は吐かないこと!! これだけ守れるか?」
ピヨ、ピピピヨ!!
コカトリスのひよこは人語が理解できるようで、俺の言葉を聞いて羽で敬礼を返してきていた。
むぅ、コカトリスめ。人語を理解するとは、なかなかやるではないか。
「ひぇ~! ピヨちゃんはコカトリスさんですかぁ、えろうカワイイ子に育つんやろねぇ~。ツクルにーはん、飼うの許してくれてありがとうぉ~。ピヨちゃん、ツクルにーはんとのお約束はちゃんと守らなあかんよ」
ピヨヨ!
ルシアはどうもコカトリスがどれくらい危険生物か理解していないらしい。体毛が乾いてフワモコ生物になったピヨちゃんを抱きしめてハグしていた。
「ピヨちゃんはおいら達の仲間に入ったってことでいいのきゃー?」
「そうだな。ルシアがどうしても飼いたいそうだ。ルシアが飼いたいといえば、俺に否決権はない。よって自動的に飼育許可が可決されることになるのだよ」
「まぁ、あたしは別に大丈夫よ。カワイイ子だし」
ルシアが体長二メートルのひよこに乗って辺りを走り回っていた。これにより、後の世に奇跡のコラボと言われたコカトリスライダールシアが爆誕した瞬間であった。
>ピヨが仲間になりました。
ピヨ 種族:コカトリス族 年齢:1歳 職業:魔物 ランク:新人
LV1
攻撃力:8 防御力:8 魔力:4 素早さ:8 賢さ:4
総攻撃力:8 総防御力:8 総魔力:4 総魔防:4
特技:くちばし(攻:+5)
装備 右足:なし 左足:なし 身体:なし 頭:なし アクセサリ1:なし アクセサリ2:なし
仲間になったことでステータスを確認したが、生まれたてなので毒のブレスや石化ブレスは覚えていなかったのが、せめてもの救いだった。
「ルシアー、ピヨちゃん。木材を伐り出すからあまり遠くに行かないようにね。ルリとハチもこの入り口辺りの魔物なら自由に狩っていいよ」
「はいよ~。ルリちゃん、あっちから魔物の匂いがするで、倒してこよまい」
「ハチちゃんについていくわ」
ルリはハチの先導で近場にいると思われる魔物を狩りに出かけていった。一方ルシアはピヨちゃんに乗って辺りを爆走して楽しんでいた。
三人を横目に霧の大森林の入り口の付近の木を木こり斧で切り倒して、多くの木材を収拾することに邁進することにした。
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