第34話 強さとは
新しいキッチンで存分に腕を振るったルシアの昼食を終えると、四人で北の鉱山地帯に来ていた。
道具や装備、それと我が家の改築で素材を大量に消費したので、鉱石と石炭の補充も兼ねて小山をまた一つ削ることにした。ルシア達には待っていてもらう間に【薬草】やハーブ類、その他素材になりそうなものを探しておいてもらうことにしてある。
削ることにした小山に登ると、【鉄のつるはし】を装備して地面を掘り返していった。つるはしで地面を削る度に【土】や【粘土】、【砂礫】ブロックなどが一気に素材化して辺りに散乱していく。その中に【鉄鉱石】や【銅鉱石】、【石炭】といったものが紛れており、それらも一様に素材化されて地面に飛び出していた。
そして、小山を削り終えると地面に散乱した素材をインベントリに収納していく。
「お、【金鉱石】や、【銀鉱石】、【石英】もボチボチ混じっていたなぁ。それに【石灰石】ブロックと【石膏】ブロックも大量にあったのは僥倖だ。今回の山は意外と当たりだったかもしれない」
【金】、【銀】、【石英】は装飾や魔術書を作るための祭壇に必要な金属で、序盤では見つからないと思っていたが、近場に埋もれているとは攻略記事にも書かれていなかった事実だった。
みんな序盤の場所を掘り返すより攻略を優先していたからな。俺も転生前ならゴリゴリ攻略していたんだろうけど、今はルシア達とゆっくり過ごすのも悪くないと思える。
少しばかり深く掘り過ぎたので、誰かが落ちて怪我しないように土で埋め戻しておいた。
「ツクルにーはん。鉱石掘りは終わりはった? ルリちゃんとハチちゃんのおかげさんで、結構ハーブ類と薬草類が見つかってますさかい、素材化しとくれやす~」
「はいよ。どこだい?」
ルシア達では素材化できないため、見つけた場所へ俺が出向いていく。ハチとルリが誘導して数か所歩き回った。
回収できた素材は【玉ねぎ】、【毒消し草】、【魔力草】、【セージ】、【ヘンルーダ】が素材化できた。
【毒消し草】、【魔力草】、【ヘンルーダ】はともに薬草で【調合器具】で【毒消し】、【魔力回復薬】、【目薬】を生成する時に材料となる素材だった。
「色々と回収できたね。さて、あとは魔物を狩りながら木材回収するとしよう」
「ツクル様、どえりゃー油臭い匂いが漂ってきとるんだけど、魔物かな?」
ハチが鉱山地帯の方に鼻を向けてクンクンと嗅いでいた。
「油臭い……そりゃあ、スラッジスライムだね。よし、そいつ弱いから倒そうか。ハチ案内を頼む」
「よっしゃ、任せてちょー」
ハチを先頭に油の匂いのする方へ案内してもらった。
しばらく進むと黒い水がしみ出した水溜りにウネウネと蠢く、薄黒く染まったスライムの集団が数十匹いるのを発見した。
「いっぱいいますね。あたし達で倒せるのかしら……」
ルリが不安そうにスライムの集団を見ている。
「スラッジスライムは魔物レベル2の雑魚だから、ルリやハチの今の装備ならダメージを負わないよ。安心して突撃してよしっ! ルシアは火炎の矢で援護なるべく遠くのを狙ってくれ。ルリ、ハチついておいで」
「へぇ、了解どす」
「あ、はい」
「ルリちゃん、おいら頑張るわ」
剣を引き抜き、盾を構えると、ルリとハチを率いてウネウネ蠢いているスラッジスライムの中に殴り込みをかけた。ルシアが放った先制の火炎の矢が奥にいたスラッジスライムを燃え上がらせて蒸発させる。
スラッジスライム達は俺達を認識したようで、ウネウネゆっくりとこちらへ近づいてきていた。
「ルリちゃんのためなら、油くさゃーのも我慢したるがや」
先頭を走っていたハチが身体に纏わりつこうとしたスラッジスライムを爪で引っ掻いて一撃で絶命させる。すぐさま、別のスラッジスライムに飛びかかると爪でスライムを引き裂く。そのハチの姿を見たルリが驚いていた。
「ハチちゃんがカッコイイ……装備でこんなに強さが変わるなんて……あたしも頑張ってみよう」
ハチの奮闘に勇気づけられたルリもスラッジスライムに向けて【氷の息】を吹きかけていった。ルリの息に触れたスラッジスライムの表面が霜に覆われて、カチンコチンに固まる。しばらくすると、スラッジスライムは白煙を上げて素材をドロップしていた。
「ハチちゃんっ!! あたしも倒せたよっ!」
「さすがルリちゃんっ!! おいら達って実は強かったのかも知れんねー」
ハチが言ったように、ルリとハチは成長すれば最強生物に近い魔物である。ただ、いかんせん生まれたてということと、親元を離れて家出したことでレベルアップができず、強い魔物が闊歩する地域を横断してことで、狩りで食料を手に入れられなかっただけである。
キチンと育てば、俺よりも強くなる可能性があるんだが……ビルダーは戦闘に関してはそこまで強くならないんだよなぁ。戦闘に関してはハチとルリに期待をしておこう。
剣と盾を構えていたものの、ルリとハチ達が逃げ惑うスラッジスライムを次々に捕捉して倒していった。
「ツクルにーはん、あとはお二人さんにお任せでよろしですか?」
「そうだね。ダメージも負わないし、特殊な攻撃を持っているわけじゃないから任せていいよ」
しばらくすると、水溜りに集まっていたスラッジスライムは、ルリとハチによって殲滅させられていた。そして、全員が光の粒子に包まれていった。
>LVアップしました。
LV3→4
攻撃力:20→24 防御力:19→23 魔力:11→13 素早さ:11→13 賢さ:12→14
「おいら強うなったの?」
初めてのレベルアップを経験したハチが不思議そうにこちらを見ていた。
「ああ、強くなっているはずだ。どんどんレベルアップしていけば、ハチもルリも強くなるのさ」
「おいら、頑張る!!」
強くなる方法をしったハチはとてもやる気が湧いているようだ。一方でルリも強くなったことを実感しているようだった。
「さて、もうひと狩りする前にスラッジスライムが落とした【油脂】を集めるとしよう」
レベルアップの喜びを噛みしめているルリとハチを尻目に、俺とルシアは素材化した【油脂】を集めて回っていく。そして、回収終えると、木材を調達するために霧の大森林の入口付近に足を延ばすことにした。
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