第44話 庭園管理人
昼食後はいつものようにみんなで揃って素材収集と魔物狩りに出かける。新調された防壁をみたルシアが余りの立派さに息を呑んでいた。
「ツクルにーはん……立派な防壁を作ったんですね~。これなら、魔物も入ってこれへんですなぁ。この防壁見たらどこの魔王軍のお城やろうかと思うわぁ~」
【鉄筋コンクリート】によって作られた防壁を、ペタペタと触りながら強度を確認しているルシアのお尻からは素敵な尻尾が垂れていた。
あぁ、何という天使……ルシアたんは何をしていても絵になるわぁ~。
恋人のお尻に垂れるフサフサの尻尾に視線を奪われていると、脳天に鋭い痛みが走っていた。
ズビシュ!
「いでぇ、ピヨちゃんスンマセン。別に不埒なことは考えてないんだ。ルシアのお尻が素敵だな~っと思っ……」
ズビシュ!
振り向いて弁解しようとした俺の額にピヨちゃんのくちばしが突き刺さった。
「おぐぅうっ! スンマセン、もう見ません。くすん」
ピヨ、ピヨオロ!
ピヨちゃんは『分かればよろしい』と言いたそうに胸を張って羽を腰に当てていた。
クゥ、かわいいフワモコ生物に手が出せないと思って調子に乗りよって……絶対にお風呂でハンドマッサージを達成してピヨちゃんを蕩けさせてやるぜ。『むりぃ、これ以上はむりぃなのぉ。あひー』って悶えさせてやる。
「ツクル様、ルシア様、いつまでも遊んどったら、日が暮れてみゃーますがね。今日はどこへいくんですきゃー?」
ハチに行き先を尋ねられたが、特に行き先を決めていなかった。とりあえず、色々と欲しい物もあるが、ある程度LVをあげておかないと、魔物と戦うのが厳しいので、しばらくは雑魚狩りをしてLV上げに専念しなければならなかった。
「う~ん。ルシアに決めてもらおう。【お風呂】と【冷蔵庫】どっちが欲しい?」
防壁に見とれていたルシアに今日の狩場を決めてもらうことにした。とりあえず、ルリとハチ、ピヨちゃんまで加わっているので戦力的には火山地帯の入り口や氷結地帯の入り口までたどりつくことは可能で、そこで得られる素材により生成できるものが違っているのだ。
「へぇ? 【お風呂】と【冷蔵庫】ですかぁ? どちらも欲しいモノですなぁ~。でも、どちらかと言われれば【お風呂】が欲しいのですが。沐浴のお水さんが冷たいんわ、かなわんさかいに」
思わずニヤリと笑みがこぼれそうになるのを必死でこらえることにした。選択はルシア自らが【お風呂】を希望したのであって、俺が誘導したではないのだ。緩みそうになる顔をハチの方に向けると、あちらもルリの方を見て顔をにやけさせていた。
わかるぞ。我が友よ。その気持ち、健全な男子なら抑え切れないはずだ。
混浴お風呂同盟員であるハチも、ルシアが【お風呂】を選んだことで自らもルリと混浴できると思い、顔の締まりが無くなっていた。
「あー、ルシアがそう言うなら、今日は東の火山地帯の入り口まで足を延ばすとしよう。目的はお風呂を沸かす【火山石】を作る元となる素材のゲットだ。よし行くぞ」
ピヨ、ピヨッロ、ピヨ。
ピヨちゃんが騎乗できるように屈むとルシアが跨っていく。その際にチラリと白いものがスカートの裾から垣間見えた。
ルシアはやっぱ白が似合う……白がいいよ。うんうん。
「ツクルさん、ルシアさんの下着を見ていると置いていかれますよ」
じーっとルシアの方を見ていた俺をルリが背後から小突いてきた。どうやら、パンツを覗いていたのを見られたらしい。
「そ、そんなわけないじゃないか……」
「そうですかね? あたしの勘違いだったかしら?」
「そうだね。勘違いだよ。HAHAHA!」
ルリの追求の視線を避けるように鉄の門を開けると、新たに設置した花畑と生け垣についてルシアに説明することにした。
「とりあえず、屋敷の外を綺麗にしようと思って、庭園を造ってみたんだ。花とか木はその辺の繁殖力の強い種類を植えてあるけど、手入れはほぼ不要なんだ」
「わぁああ。素敵なお庭をつくらはったんやね~。ツクルにーはんは、ほんまに何でもできるお人で凄いわぁ。お花も綺麗に咲いてええもん見せてもらえたぁ~」
「庭園造りは俺の趣味だから、花畑に勝手に立ち入ったり、花を勝手に摘んじゃ駄目だよ。それと、庭園内は石畳の通路を必ず歩いてくれ。草地には色々と花の種やら、木の苗が植えてある可能性があるからね。草地も花が咲いている場所は踏まないように」
「へぇ、分かりました。綺麗なお花さんを踏むのは可哀そうですからなぁ。それに庭園はツクルにーはんが作らはった方が綺麗にできますからお任せしますわぁ~」
「うむ、任されたぞ。綺麗に花が咲いたら、幾つか摘んで食卓を飾ることにしよう」
「素敵やわぁ。そういった彩があるとご飯も美味しなると思います」
ルシアに庭園の手入れをしなくても良いことを伝えてから、火山地帯に向けて歩き出した。
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