第137話 ピヨの思い

 ※ピヨ視点


 今日はツクルおとーさんとルシアおかーさんたちと一緒に新しい街に到着した。ルリちゃんやハチちゃん、イルファおばさんとタマちゃん。それとクロちゃんも一緒にお出かけできてちょっとウキウキしてる。


 新しい街は前に通っていた街よりもいろんな人が多くて、色んなものが置いてある騒がしい街だった。もちろん、ツクルおとーさんが作ってる街の人も騒がしい人たちが多いけど、そういった騒がしさとはちょっと違う騒がしさだった。


 街に着いたらツクルおとーさんはお仕事の話をしにいくとハチちゃんとタマちゃんを伴って、どこかに行ってしまったので、あたしはルシアおかーさんたちと【しじょうちょうさ】をするために大きな市場にきていた。あたしとしてはツクルおとーさんとルシアおかーさんと一緒にお買い物したかったけど、お仕事だからわがまま言わずに我慢しておいた。


 最近になってルシアパレスの子供たちに教えてもらって知ったのだけど、子供はおとーさんとおかーさんに似るらしい。そのことを聞いた時にあたしは自分の姿を鏡で見てツクルおとーさんとルシアおかーさんの姿と比べてみた。全然違った。二人ともくちばしもないし、羽根もない。だからきっとあたしはあの二人の子供じゃないんだと思った。


 でも、あたしの記憶の一番最初にはルシアおかーさんの顔しかないし、その次の記憶のあるのはツクルおとーさんの顔だけで、本当のおとーさんとおかーさんの顔は全然分からない。本当はどっかにいるんだろうけど、あたしの中ではツクルおとーさんとルシアおかーさんが本当の両親だとしか思えない。


 ツクルおとーさんはちょっとエッチで頼りなさげだけど、街の人のために一生懸命に働いてるし、ルシアおかーさんのことが大好きだし、あたしのわがままも怒らずに聞いてくれる。ただ、本当にちょっとだけエッチなのがおとーさんとして残念だから、ついあたしのくちばしもツクルおとーさんには厳しめになっちゃう。だけど、ツクルおとーさんがルシアおかーさんと仲良くしてるとあたしも心がホカホカするからもっとしてもらってもいいけど、できればあたしも混ぜて欲しい。


 るりちゃんもハチちゃんもタマちゃんもイルファおばさんも、そして新しい家族になったクロちゃんもこのホカホカの中に入れてあげて欲しい。みんなでご飯食べて、笑って、一緒に寝て、起きて、朝の挨拶をする。ただ、それだけのことだけどみんなといるとあたしのこころがほかほかするんだ。だから、あたしはこのホカホカを守るためにちょっとわがままも言う。


「ピヨちゃん。どないしたん?」


 あたしがぼーっと考え事しながら歩いていたから、立ち止まったルシアおかーさんにぶつかった。ルシアおかーさんはツクルおとーさんのために服をいくつか物色していた。イルファおばさんも嫌々着いてきたわりにタマちゃんに着させるための服を作る糸を選んではきゃーきゃー言ってる。


「ぴう? ピヲヨ」

「考え事してたん? 大きな街だから人にぶつからんように気をつけてな」


 ルシアおかーさんとは言葉は通じないけど、あたしの言っていることが、ほとんど通じる。なんだろうね。やっぱ親子だからかな。


 あたしは人で溢れかえる大通りの端に寄って人が通りやすいようにしておいた。その間、背中ではクロちゃんが暇を持て余して鞍に噛り付いて遊んでいるので、しょうがないからあたしの頭の上に移動させてあげて高い景色を見せてあげることにした。


 クロちゃんもあたしと同じように卵から孵った黒竜の赤ちゃんだけど、ツクルおとーさんが連れ帰ってきた子で、あたしの多分、弟になると思う。ルシアおかーさんからもそう言われているし、ルシアパレスの街の人達もあたしの弟として認識してた。


 同じ卵から孵った子だから親近感はとってもあるし、お世話してあげるとめちゃくちゃに喜んでくれる。たまに羽根をかじるのはご愛敬だから笑って許してるけど地味に痛いから、もうちょっと大きくなったらしっかりと言って聞かさないとアタシの羽根がなくなっちゃうかもしれない。


 だけど、かわいい弟のクロちゃんに厳しい言葉で注意できるかな。クロちゃんが泣いちゃったりしたら、きっと『ゴメン、お姉ちゃんが悪かった』って言っちゃうかもしれないな。それくらいにクロちゃんは可愛くて大事な存在だ。


 我ながら、いっぱい大好きな人が居すぎて大変だ。あたしの好きな人と一緒に暮らせるこの世界は本当に素敵だ。ツクルおとーさんが作った『かみさま』ってあの像の女の人に感謝しておこう。ずっと、この世界が続いていくようにってお祈りを欠かさずしよう。


「ピヨちゃん! 次はピヨちゃんの飾りリボンを探すからこっちきて~」


 あたしがクロちゃんと遊びながら待っていたら、ツクルおとーさん用の服を買ったルシアおかーさんから呼ばれた。あたしに新しい飾りリボンを買ってくれるようだ。この市場は大きいから綺麗なリボンもいっぱいあるのかな。ああ、そうだ。ルシアおかーさんにクロちゃんの蝶ネクタイもねだってみようかな。


 きっと、クロちゃんは可愛いから似合うよね。


「ピヨ! ピヨロ」


 あたしはルシアおかーさんの下に駆け出していった。

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