第2話 自給自足への道


 三〇分ほど歩くとゲームで見覚えのあるボロボロの小屋が見えてきていた。やはり、この世界は『クリエイト・ワールド』を模した世界だと思われる。


 ボロボロの木でできた小屋の中には、煮炊きに使う【焚き火】がセットされていた。色々な食材を焼いたり、煮たりするのに重宝する道具で、空腹を満たすための食事を作るには大変に重要な道具となっていた。


 とりあえず、目的地に着いたので色々とゲームと同じなのか試すことにした。万が一、ゲームの仕様と違っていれば、引き籠りながらの世界改造計画が頓挫してしまう可能性があったからだ。


「まずは重要物資の木材の調達だな。よし、あの木で試してみよう」


 背中に背負った木槌で青々と茂った大木をぶっ叩いてみた。


 ドンッ!


 ずっしりとした手ごたえが木槌の柄に返ってきたが、木は何の変化を見せてはいなかった。


 そういえば、木槌は二回叩かないと木を素材化できなかったな。もう一発殴ればいいか。


 再度、木槌で木をぶっ叩く。


 ドンッ! ボフッ!!


 木槌によって叩かれた木から白煙があがり、木が消えると薪のような形に変化した木材が地面にドロップされていた。


「おぉ、変化した。これはゲームと同じだな。となると、地面は……」


 木槌を地面に振り下ろす。


 ドンッ! ボフッ!!


 白煙と共に土色の立方体が地面から飛び出し、叩いた部分が空洞化していた。


「マジで『クリエイト・ワールド』と同じかよ。だったら、石も叩いてみるか」


 更に確認作業をするために、近くに飛び出ていた拳大の石に木槌を振り下ろす。


 ドンッ! ボフッ!!


 白煙が消え去ると丸い石に変化して地面にドロップされていた。


 生成された三つの素材をインベントリにしまい込む。


 >木材を入手しました。


 >石を入手しました。


 >土を入手しました。


 これで、ビルダーLVの低い序盤にでも作れる物が色々と作成可能になったと思われる。


 チェックのためにステータス画面を開いてみた。



 ツクル 種族:人族 年齢:23歳 職業:ビルダー ランク:新人


 LV1


 攻撃力:12 防御力:11 魔力:5 素早さ:7 賢さ:8


 総攻撃力:22 総防御力:13 総魔力:5 総魔防:8


 解放レシピ数:30


 装備 右手:木槌(攻:+10 左手:なし 上半身:布の服(防:+1) 下半身:布のズボン(防:+1) 腕:なし 頭:なし アクセサリ1:なし アクセサリ2:なし



 うむ、あの女神の言っていた転生初心者ボーナスとやらは無いようだ。見事に騙されたが、ゲームの知識さえあれば、この世界での生活は、どうにかなると思われるので気にしないでおこう。


 手っ取り早く魔物を倒してLVを上げて行くのもいいが、せっかくの転生。ゆっくりと地道に開発していくのも悪くはない。風雨をしのぐ場所はあるから、まずは食料と水の自給体制の確立が緊急の課題だな。そのためには、まず魔物を狩って食材や素材を集めなければならない。武器が必要だ。


 早速、武器を製造するための作業台を生成することにした。解放されたレシピの中から石の作業台を選択する。


 【石の作業台】……石器武器・道具の製造可能 消費素材 石:7 木材:7 


 ポップアップで表示された素材を集めるために、小屋近隣の石と木を木槌でぶっ叩きまわって素材を集める。そして、集め終わると素材が足りずに灰色だった【石の作業台】の表示文字が白く変わる。


 ポップアップされた画面に意識を集中するとボフンと白煙が上がって、石でできたテーブルのような作業台が小屋の前に現れていた。


「やはり、ゲームと同じ仕様か……ならば、序盤はウサギちゃんや牛ちゃん苛めだな。序盤の皮素材は貴重品。うまくすれば、肉もゲットできるはず。そのためには、まず【石の剣】と【石の弓】を作らねば、あと【石の矢】いるなぁ」


 必要な物が決まったので、素材の量を確かめるために各レシピを確認する。


【石の剣】……攻撃力+20 付属効果:なし 消費素材 石:5 棒:3


【石の弓】……攻撃力+10 付属効果:なし 消費素材 石:3 木材:2 ツル草:1


【石の矢】……攻撃力+5 付属効果:なし 消費素材 石:1 棒:3


 必要な素材を確認し終えると、小屋の近場を探索して素材を集める。石・木材に関してはすでに十分に手に入っているので、地面に落ちた枝を叩くと出る棒と、段差の近く自生しているツル草を入手した。


 そして、石の作業台で武器の製造を始める。石の作業台を作成したと同じようにポップアップされた画面を意識すると白煙が上がり、三種の武器が完成していた。


 ふむ。これで少し遠出ができるな。余った木材で木槌を大量に製造しておこう。消耗品だからたくさん持っておかないと、いざという時に叩いて素材化できないからな。準備を怠らずにやっておくべきだ。


 クゥウ~。


 武器製造までを一気に行ったために、知らぬ間に空腹になっていたようだ。インベントリからモモノ実を取り出して食べる。甘い果汁が口内を潤していくと同時にお腹が膨れていった。


「美味いなぁ……早いところ自給できるようになりたいが……今のところは落ちている実を拾い集めるしかないなぁ」


 芯の部分まで食べ尽くし腹を満たしたことで探索に出る準備は整った。

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