第132話 温浴施設
遠征軍の総司令官であるアモイの信任を得たことで、クリエイト商会のムーラとして各地にある都市に出入りすることが可能な通行証を発行してもらえた。これにより、魔王軍の支配下にある街にも自由に出入りできる権利を保障されることになった。いち辺境都市にある商会としては破格の対応であり、俺の持つ生産系のチート能力とルシアパレスに住む住民達の力を持ってすれば大陸規模の大商会へ成長することも不可能ではなくなると思える。
修練のダンジョンをクリアして世界の崩壊を遅らせ続けている俺に対して魔王がいつ魔王軍全てを率いてルシアパレスに攻め込んでくるとも限らない。そのためクリエイト商会を大陸に冠する大商会に育てて、この世界を破壊しようと企んでいる魔王に対しての反魔王勢力を結集させ少しでも魔王の力を削ぐことを進めることにした。
そして、今、俺はルシアパレスの浴場を改築することに勤しんでいる。
「ツクルにーはんもお仕事するのが好きなんやね~。うちもお手伝いさせてもらいます」
「ルシアに頼まれてた住民達も入れる温浴施設を作っちゃおうと思ってね。これが完成したら住民達にも入浴の作法を伝授しないといけないな」
「沐浴とは違いますからね。キチンと講習会を開いた方がいいかもしれません。その時はうちが住民達に教えます~」
修練のダンジョンをクリアしたことで、ある程度の時間を得たとイクリプスから告げられたため、兼ねてより気になっていた浴場の改築に取り掛っている。これは、住民が増えたことで不衛生状態による病気の蔓延を気にしたルシアから、俺達専用になっている浴場を住民達も使えるようにと提案されての改築工事である。別に温泉は俺達専用にした覚えもないが、住民達は風呂に入るという習慣が無いようで、清潔な布で身体を拭く程度のことしか行っていなかった。
なので、今回の改築は温泉を大浴場に改築して子供達が安全に水遊びできるプールも併設した温浴施設を建設するつもりだ。場所も水源に近い崖上に移動させるつもりなので、まずはそちらに温浴施設の建物を建築しようとしていた。大きさ的には学校の体育館程度の大きさで製作しており、土台は石積み、外壁はヒノキの木材、屋根は腐食メッキをした鋼板で一気に建築を行っている。もちろん、天井には明かり取り用の天窓も製作しており、夜でも入れるように燭台も数か所設置して光源を取ってある。
温浴施設の入り口は男用と女用、それに家族向けの混浴用と三か所作ってあり、それぞれに目隠し用の木の仕切りが設置してある。これは、ピヨちゃんに配慮したもので、未婚男女の混浴はNGとのチェックが入ったため改装をした。ルシアパレスにも独身の男女が増えてきており、風紀委員長としては間違いがあってはならないと判断しているそうだ。けれど、俺としてはルシアと一緒に入りたいので、そこは交渉を行って家族向けの混浴風呂の設置を捻じ込むことに成功している。
「うちらはこの混浴風呂に入るんやね。それにしても大きいお風呂になってしまいました。これじゃあ、ツクルにーはんと寄り添え……」
「ん!?」
ファッ――――――――――――――――――――――――――――――――――!! ルシアたん! もっと寄り添っていいんやで!
ルシアとの混浴は何度も行っているが、いつも間にピヨちゃんが浸かっているため、俺の隣で寄り添うことは一度もできていなかったのだ。そのため、急遽、混浴風呂の中に二人用の狭い浴槽を設置した。これなら、二人が肩を寄せ合って入るくらいのスペースしかないので寄り添えるはずだ。
「ル、ルシア。ここなら二人で一緒に入れるよ」
急遽完成させた二人用の浴槽を見たルシアが顔を赤くして照れていた。
「これは、うちとツクルにーはんが一緒に入ると身体が密着してしまいますよ。あぅ……」
「こういったお風呂も必要だと思うんだよね。うんうん」
完成した二人用の風呂を見て鼻の下が伸びる気がしたが、大願成就のために伸びた鼻の下を引き締めることにしておいた。それから、各浴場に洗い場を設置して排水処理工事を行い、排水は水路に流れ込まないように別系統にして低地へ流すようにしておいた。浴槽面積が増したことでお湯の量が足らなくなりそうであったので、火山石の数を増やし湯量を豊富にしておいた。これで温浴施設の中は常時湯が張られていることになる。湯が流れたことで浴場は湯気が立ち昇り始めたことで温浴施設っぽくなってきているのを確認した俺は隣接する場所に子供達のためのプールを作ることにした。
このプールは俺のダイエット用にも使用される予定であり、子供達の安全を考えて長めではあるがあまり深いプールにはしないでおいた。石積みを重ね水を貯めておくことが出来るようにすると、溢れた分は浴場の排水に合流するようにして温浴施設兼プールが完成した。この立派な建物も製作期間でいけば半日で完成し、以前の浴場は更地にして別の建物用の敷地にすることにした。
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