第65話 ハエと対決 2

 明らかにこの前よりも大きくなった体。

 存在感も増して強さを感じる。


 ハエは確実にレベルアップをしている。


 俺がトレントたちを消滅させている間に、お前もどこかで魔物を狩っていたんだろ? いいぜ! 俺とお前は戦う運命にあるんだ。


 前に地龍を見た時、怖いと思った。

 

 だけど、あの時以上の恐怖が背筋に感じている。


 毛並みが逆立っているぞ。


「GYAAAAA」

「ピーーーー!!!(王者の咆哮)」


 互いに鳴き声で牽制する。


 わかっているよ! お前もやりたいんだろ。

 気に入らない相手が目の前にいる。

 だから、ぶっ殺したい。


 ああ、一緒だよ。


 咆哮が効かない存在だ。

 もう言葉は意味を持たない。


 進化した存在としては向こうが上。


 だが、相手の最大の攻撃手段は、口と尻から発生する溶解液。

 こっちは闇魔法のブラックホール。


 出来れば使いたくないが、必要になれば使うつもりだ。


 振り返ればワッシーはもういない。

 リザードマンを連れて逃げたようだ。


 これで心置きなく戦える。


 さぁ、始めるぞ。


 俺はウォーミングアップに体を上下させてジャンプする。

 モフモフボディーの我が身が揺れて、体が温まっていく。


「ピーーーー!!!(王者の咆哮)」


 効く効かないじゃない。

 これは魔物と魔物のガチンコ勝負だ。

 気合いでやってやんよ。


「GYAAA」


 ブーンブーンブーン。


 高速で羽を動かして、素早い動きを見せるハエ。

 明らかにこちらを挑発している。

 しかも早いじゃないかよ!


 絶対に、ワッシーの元には行かせない。

 ワッシーに元に行きたいなら、俺を倒していけよ。


「GYAAAA」


 その気はないってか? 俺を獲物と思ってくれたようだ。


 いいねぇ〜そうじゃなくちゃ、面白くねぇ!!!

 

 お前は俺が格下だと判断したんなら? 俺はそれを上回ってやるよ。


 俺は走り出す。


 体が軽い。

 

 木々を足場に俺は空を翔ける。


「ピヨ! ピヨピーヨ」


 オラっ! オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!


 素早く飛び回るハエを逃さないために、俺はルールを決めた。


 まずは、奴の動ける範囲を限定する。


 空があいつのテリトリーであることは確実だ。

 なら、空を俺が制する。


 ここは森の中で、木々がいくらでもハエの行手を阻んでくれる。

 それを足場に飛び回れば、いくらでも動きは制限できる。


 溶解液を避けながら、木を足場に跳んでハエに攻撃を加える。

 こちらの攻撃を警戒して、避けるのはいいが、動きが速いだけで単調だ。


 お前の動きがわかってきたぞ。


 俺は常に自分の攻撃を当てるのと反対に魔法を発動して、二重攻撃を仕掛ける。


「GYAAA」


 鬱陶しいと言わんばかりにハエが溶解液を撒き散らす。

 高速で羽ばたくことで発生した風によって、こちらの魔法が吹き飛ばされる。


 ここで逃げられるわけにはいかない。


 風よ!


 だからこそ、風の魔法を使って乱気流を作り出して、乱れた風の中で飛ぶことすらも困難にする。


 それだけでは今のハエを止めることは難しい。


 だから、もう一つ小型のブラックホールを作り出す。


「GYAAA!!!」


 ハエの羽を消滅させるために生み出した。

 ブラックホールをハエが何かの魔法で相殺した。


「ピヨ!」


 どうやら向こうにも隠し球を持っているようだ。


 やっぱり隠してやがったか! 


 最初から決めるつもりでいっていたら、しっぺ返しを喰らっていただろう。


「GYAAA」


 怒りを表したハエが瞳を最大限に動かし始める。

 こちらの動向を観察して分析しているようだ。


 ハエは無数の瞳を活かすために、脳で情報処理する速度が早いと言われている。


 だからこそ、現状で行われている戦いを分析しているはずだ。


「ピーヨ!」


 そんな時間を与えると思うなよ。


 お前がブラックホールを警戒するなら、全面にブラックホールを出してやるよ。


 俺は無数のブラックホールを発生させてハエの逃げ場をすべて奪い去る。


 360度発生したブラックホールにハエはどうする?


「GYAAAAAAAAAAAA!!!!!」


 発生したブラックホールに対してハエが叫んぶ。


 そこには無数のハエが出現して、俺が作り出したブラックホールに入り食べている。


「ピヨ!」


 魔法を捕食している? そんなこと出来るのか?


「GYAAAAAA」


 さらに溶解液を巨大な球体に変えて、どんどん大きさを増していく。


 ブラックホールに吸収されながらも、その大きさは一面を消滅させるに相応しい大きさに大きくなっていく。


「ピ〜」


 クソが、まさかそんなデカいのどうやって処理しろって言うんだ。


「GYA」


 まるで、死ね。


 そう言われている巨大な溶解液がハエの手元を離れて、地上にいる俺の元へ降り注いだ。


  

 

 

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