第87話 野外学習 終
KFC団の存在は何度か耳にしてきた。
実際に戦ったこともある。
だけど、今回はコロンちゃんを連れ去り、アシェを危険な目に合わせた。
許せるはずがないよな。
「ピリカ?」
「ピヨ」
アシェ、ちょっと行ってくる。
赤い岩場に二人を下ろして、ソリーが二人を護衛してくれる。
先生も連れてきてくれて、これでアシェたちは安全だ。
だから、俺は今回の鬱憤を晴らさせてもらう。
コロンちゃんを危険な目に合わせたことも、サンドワーム食べ放題を邪魔したことも、そして俺をずっと狙っていることも全てここで決着をつけてやる。
「ピーーーーーー!!!!!(王者の咆哮)」
俺は砂漠に向かって飛び上がりながら、鳴き声を上げる。
四体の化け物たちが一斉に俺を見る。
空を飛んでいる二体を捉えて真っ直ぐに飛んだ。
「なっ! 自ら我々に楯突こうとするとはいい度胸だ。ホウヤカムイよ! 魔黒鳥を叩き落とせ!」
「ダークカラス! 援護だ!」
サンドワームとサバクモグラが来るのは時間がかかる。
だから空飛ぶ蛇と、カラスから叩き落とす。
「シャー!!」
「カー!!」
二体が怒りを表して俺を威嚇するが、そんな事はどうでもいい。
お前らに対して怒っているのはこっちの方だ。
よくも俺の大切なアシェを傷つけようとしてくれたな。
絶対に許さないからな。
「ピーーーー!!!」
ブラックホールを何個も作り出して、相手の動きを制限する。ブラックホールに当たった相手は羽が削られ、身がえぐれる。
「なっ! 空中に魔法を留めているのか?」
「あり得んだろう!」
「ピヨピヨ!」
さらに風の竜巻を作り出して、上から一気に風を叩きつける。
「サバクキンモグラ! 逃げろ!」
渦の中に隠れて砂を巻き上げる。
サンドワームじゃなくて、モグラの方を炙り出す。
そこにはもちろん。
「サンドワームが来ているぞ!」
「くそ、三体とも力を合わせて逃げろ!」
「今は退くのだ!」
ただで逃すと思うなよ。
下からサンドワームが援護してくれるんだ。
俺は上からお前たちを逃さない。
「くそ! バケモノではないか?! 進化させて強くなったはずの我々の召喚獣が!」
「このままでは」
「三位一体をするしかないぞ」
「ああ、それしかないな」
どうやらこの挟み撃ちの状態で何かを仕掛けてくるようだ。
「行くぞ! これが我らKFC団最大奥義!!!」
「三位一体!!!」
「DAIZIBAKU!!!」
えっ?
三体の召喚獣は魔力を溢れさせるように身を寄せ合って自爆した。
「ピヨ?!」
中級の魔物が複数で魔力を爆発させた。
砂漠で巨大な爆発が生み出されて、サンドワームが吹き飛んでいく。
俺も高度を上げる事でなんとか回避することができた。
「ピヨ!」
とんでもないことをしやがる。
砂漠を見下ろせば、砂煙で何も見えない。
砂煙がおさまるのを待っている余裕はなさそうだ。
俺は赤い岩場に戻ってアシェたちに合流した。
「ピリカ!」
「ピヨ!」
アシェに抱きしめられて、魔黒鳥ボディーからヒヨコに戻って背中に乗せる。
「随分と派手にされましたね。とにかく今は一刻も早くこの場を立ち去りましょう」
引率の先生たちで話し合いが行われて、野外学習は帰宅を急いだ。
召喚獣たちに生徒を運ばせることで、早期の帰宅が行えたのは、サモナーの特権だろう。
♢
《side KFC団》
砂煙の中で、追撃を恐れた我々はサバクキンモグラに掘らせていた砂のトンネルを抜けて逃げ出すことに成功していた。
召喚獣たちも魔力を爆発させただけで、召喚を解除すれば、元の場所に戻すことができる。回復も行ってやれるだろう。
「なんという強さだ!」
「ああ、進化したことで圧倒的な強さを手に入れている」
「しかし、その分だけ肉に締まりが生まれ、旨みが増しているということだろう?」
「くっ、我々の力がまだまだ及んでいない。レベル上げが足りていないのだ」
「ああ、今回は進化に集中しすぎてレベル上げを怠っていた。まだ負けじゃない」
逃げる道中で我々は反省をしながら砂のトンネルを走り抜ける。
「なぁ、なんか聞こえないか?」
「うん?」
「どういうことだ?」
傷ついた召喚獣を帰らせたことで、我々は無防備な状態なのだ。
こんな時に魔物出会ってしまうと一巻の終わりだ。
「ほら! なんか近づいてくるぞ」
「くっ!」
「とにかく走れ!」
我々は走る速度を早めてたが、その音が真横に迫ってきた。
「GYAAAAAAAAAA!!!!」
サンドワームが砂のトンネルを横から破壊して襲ってきたのだ。
「なっ! どうしてこいつがここに!」
「あの爆発から生き延びたというのか?」
「手負いで怒り狂っておるぞ!」
「GYAAAAAAAA!!!!」
サンドワームの怒りが我々を襲う。
砂のトンネルが破壊されて地上へ吹き飛ばされる。
「総員!!! 逃げろーーーー!!!」
「「イサッサー!!!」」
吹き飛ばされた勢いを利用して我々は退避行動に移る。
何度も吹き飛ばされているので、お手のものだ。
新調したKFC団特製スーツは吹き飛ばされるとムササビのようにマントを開いて、空を飛ぶことができるのだ。
「とにかくに逃げるのだ!!!」
「GYAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
散々、サンドワームに追いかけられながら命からがら逃げ延びることに成功した。
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