第88話 王都の街で食べ歩き
野外学習で起きたKFC団による襲撃は、生徒たちに対して被害は出なかった。
しかし、学園側としては、学校への侵入を強化したが、このような野外学習に対しても危機感を持つために対策を考えるため休講が言い渡された。
「こんな形でお休みになるなんてね」
「本当ですね。KFC団は迷惑ですけど、お休みは嬉しいです」
「ピリカは王都を歩くの初めてだよね?」
「ピヨ!」
学園が休講したことで、王都からの外出が禁止されて、ダンジョン内に入ることもできないため、王都でお昼ご飯だけでも食べようということになった。
普段は、学園の食堂で食べているのだが、俺がいない間に、アシェとオリヴィアちゃんは王都に何度かご飯を食べに行っているそうだ。
隣を歩くシルは、オリヴィアちゃんに付き合って王都の中を歩いているんだろう。
慣れた様子でのんびりと歩いている。
互いに二足歩行なので、並んで歩いても問題ない!
「ピヨ」
「ニャオ?」
俺があれはなんだとシルに問い掛ければ一つ一つを説明してくれる。
屋台に果物が大量に並んでいる。
『果物屋さんにゃ』
『王都でも屋台があるピ』
『商店を持っているのは相当に大手の商人だけにゃ』
『なるほど、ほとんどは屋台の商人の方が多いのピ?』
『そうにゃ』
王都というだけで家賃相場も高いのだろう。
店舗を持つというのはそれだけステータスになる。
流行りのお店だと紹介されたのは、チキン屋さんだったが、俺がいるので、本日は店に入ることはなく、別の店でランチを食べることになった。
「ふふ、ここですわ」
「ふぇ? 食べ放題?」
「はい。今回はお魚の食べ放題です。ザッスシーと言ってこちらの最近王都に出来たばかりなのです。リーズナブルで大人気なのですよ」
「そうなんだね。オリヴィアちゃんは相変わらず情報収集が凄いね」
オリヴィアちゃんは、色々な情報を集めてアシェに教えてくれているそうだ。
最近流行りの寿司屋に入ると、店の中では大きなレーンが三本あり、その左右に大きな個室のようなスペースと椅子が設けられている。
それは召喚獣とサモナーが一緒にきても食べられる配慮がされているからだろう。
「凄いね。お魚がレーンに乗ってやってくるよ」
「回転寿司形式というらしいですわ。これによって人件費が削減できて、美味しいお魚が東海岸から直送で届けられてもお安く提供できるのだと説明されておりますわ」
回転寿司とは恐れ入ったな。
チキン屋さんの大繁盛もそうだが、人の発展というものは凄まじいものがあるな。
「ピリカ、よかったね。新鮮で美味しいおが食べられるよ」
「ピヨ!」
ああ、楽しみだな。
シルもこの店は好きなのか、ワクワクした様子で魚が流れてくるのを見ていた。
「まずはお造りにしましょう。シルちゃんの大好物なんです」
「いいね」
大きな舟盛りが三つやってくる。
シルと俺の前に一つずつ。
アシェとオリヴィアちゃんの前に一つが置かれて口をつけた。
新鮮な魚が血抜きを行われて淡白な味わいがとても美味い。
「うわ〜、凄く美味しいね」
「でしょ。私もあっさりとしたこの淡白な味わいが大好きです」
「うーん、だけど、ピリカは物足りないかも?」
「そうなのですか?」
さすがはアシェだな。
俺は森で川魚を食べる時も命懸けで、血抜きされていない臭みが意外に好きだ。
「ピヨ!」
「うん。あっ、あれならいいかも」
アシェが何やら注文をしてくれた物が桶に入ってやってくる。
そこには巨大な魚が、桶の中に三匹入っていて、まだまだピチピチと跳ねているではないか?!
「ふふ、活きの良い魚の方がピリカは好きでしょ?」
「ピヨ!!!」
「喜んでおられますね。お魚の踊り食いとは凄いですね」
いやいやいや、これは最高なんじゃないか? 新鮮な魚がこちらを睨みつけるように喧嘩を打ってくる。
いいだろう。貴様から踊り食ってやる。
俺は、一匹目を口に入れる。
口の中でピチピチと暴れる魚を一気に飲み込めば腹の中で胃袋と戦っている。
だが一気に流れ込んでくる魚臭さと、生臭さ。
これだ! これが魚を食べているという実感が持てる味わいだ!!!
「目が光っておりますわ!」
「相当美味しかったみたいだね」
二匹目に取り掛かる。今度は突いて身を食べてみるが、これは失敗だ。
虫のように美味と感じる前に身を固くしてしまっている。
仕方なく踊り食いを三匹とも続けて、お腹の中で暴れる三匹の味が次第に染み込んできて、旨みが広がっていく。
「ピヨ! ピヨ!」
「踊るほどに美味しかったのですね」
「巨大な芋虫を食べている光景よりは、魚を一気に食べている姿の方が見ていられるね」
「それはそうですわね」
その後も、屋台街に移動して、果物や、クレープなど食べ歩きをしながら王都の街中を四人で歩いた。
普段とは違う都会の景色に戸惑うこともあったが、楽しい休日を過ごせたと思う。
やっぱりアシェも女の子なんだな。
俺は三人の女性をエスコートするために、荷物持ちをかって出て背中には荷物がいっぱいになってしまった。
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