第89話 レッツダンシングヒヨコ

 二年次になったアシェたちの授業に召喚獣が同行する理由の一つとして絆を高めるという意味合いもあるが、連携強化を一番に考えられている。


 多くのことを知らなければいけない一年次加えて二年次でも難しい授業は受けるのだが、それと共に召喚獣たちの特性を知り、好みを知り、出来ること出来ないことより詳しく知る必要があるので、近くにいて一緒に授業に参加することで、理解力を深めるための授業を行なっていくのだ。


「本日は、召喚獣とともにダンスを踊ります。ダンスは互いの連携と取るためにも最も優れた動きを勉強できることでしょう」


 今回の授業は体育教師と音楽教師が考えた召喚獣と息を合わせてダンスを踊るタッグダンスの授業だ。


 二足歩行できない魔物や、手のない魔物もいるので、召喚獣が誰でもできるというわけではないが、リズムに合わせて互いに気持ちを通わせるように動きを見せることが大切なんだそうだ。


「ピリカ、音楽が流れたら体を動かすんだよ」

「ピヨ」


 ああ大丈夫だ。


 周りを見ながらゆっくりになるが、なるほどサモナーが踊り出したことに気づかないでダンスを指示しても踊らない召喚獣もいるようだ。


 これは互いに意思疎通の理解度にも繋がっているのかもしれない。


 正しい指示が送れるサモナーはダンスを踊ることができる。だが、そもそもダンスを踊るという行為自体をしない召喚獣からすれば、主人が何をしているのか理解ができない。


 仕方ないここは俺とアシェの華麗なダンスを披露するしかあるまいな。


「おっ! さすがだね。ピリカ可愛い」


 俺が羽を広げてステップを踏めば、アシェが喜んでくれる。


 だが、アシェの友人たちは皆召喚獣と意思疎通ができているようだ。

 さすがはルーキー大会に勝ち上がれる者たちだな。


 ユズちゃんとフロックは、カエルが二足歩行になったらするであろう動作で飛び跳ねるようなダンスを行い。

 コロンちゃんとソリーは、犬が尻尾を振るような動作で腰振りダンスを披露している。


 どちらもリズムに合わせて、楽しそうに踊れているので、先生も二組を見て満足そうな顔をしていた。


 だが、一番の見せ場を作っているのはシルとオリヴィアちゃんコンビだ。


 オリヴィアちゃんはお嬢様という上品な雰囲気を持つのだが、その優雅な踊りはてとも美しくて、それは周りで踊るシルの豪華な見た目も相まって二人の美しい舞は人を魅力する。


「凄いでしょ。一年生の頃からオリヴィアちゃんって踊りが凄く上手なんだよ。シルちゃんがあんなに上手いとは思っていなったけど二人とも凄く綺麗だよね」

「ピヨピヨ」

「そうだね。私たちも楽しく踊ろう」


 確かにこの授業ではあの二人には遠く及ばないかもしれない。

 だけど、俺とアシェが楽しく踊ることで授業として、息を合わせ、心を通わせることはできるだろう。


 シルに負けているのは悔しいが、あれほどに優雅な猫ダンスを踊られては完敗だな。


 二時間ほどのダンス授業を休み休みで、踊りながらサモナーと召喚獣の意思疎通を図るのだが、楽しく授業を受けるというのも大切なんだと思わせてくれる。


 ダンジョンに行って戦うことだけでなく、サモナーと召喚獣が力を合わせて一緒に行うことは大切なことだと思わせてくれる。

 どうしても戦いの中で指示を出してもらうだけでは行動が遅れることもある。


 だが、ダンスを通して、相手が何をしたいのか、理解することで言葉にしなくても動作や目線で通じ合える気がするのだ。


「ピリカ、楽しい?」

「ピヨ!」


 二時間踊り続けられる体力があったのは俺だけだ。


 アシェも途中途中で休んでいたが、最後の十分ぐらいは全員で、一緒に踊り狂うような時間ができた。


 俺とシルを中心に召喚獣たちが集まって、ダンスをする中に、アシェやオリヴィアちゃんも楽しそうに踊ってくれる。


 ダンスを終えた俺たちは夕食も一緒にクラスメイトと取るようになり、アシェが学園に馴染んでいることがよくわかる。


 学園に来た当初はどうなるものかと思ったが、アシェがみんなと楽しく笑いながら生活を送ることできているのに嬉しい気持ちになるな。


「ピリカ! 今日はいっぱい動いて疲れたから、たくさん食べようね」

「ピヨ!」


 アシェが大量のご飯を用意してくれて、俺も少女たちの輪に入って食事をする。


 うん。この生活は今だけかもしれないけど、アシェにとってこの時間はとても良い思い出になってくれればいいな。


 

 

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