第86話 野外学習 3

巨大化したことで、口の中にサンドワームをガツガツ食える。


ヤベーウメー!!! たまにジャリジャリと砂が入るのが気になるけど、やめられねぇ〜トマンねぇ〜何コレ? 何味? 巨大芋虫が最高の食材とか思っていた時期もあったけど、サンドワームありじゃないかなぁ? 最高の食材にランクインしてんじゃないかな?


「ピリカ、夢中で食べているところ悪いけど、コロンちゃんが意識を失っている間にみんなのところに戻るよ」


 くっ! まだ数回突いただけなのに! だが、サンドワームには生きていてもらってまたゆっくりと味わえる方が良いか?


「ピー!」


 俺はアシェとコロンちゃんを背中に乗せて飛びあがろうとして、違和感に気づいた。足場が砂に取られて飛ぶことができない。


「ピヨ?」

「どうしたのピリカ?」


 足場を見れば砂漠に渦ができて、こちらを引き込むように蟻地獄が出来始めていた。最初はゆっくりとこちらの足場を鎮める程度だったのが、こちらが飛び上がることを察知して、一気に引き込みにきたようだ。


「ピヨ!」

「あれは?!」


 アシェの声が向けられた方角を見れば、巨大なモグラが渦の中心で鋭い爪を構えてこちらを待ち構えている。


 巨大なカラスの次は巨大なモグラとは、なんとも厄介な魔物たちに目をつけられたものだ。森に住む虫などの魔物も厄介だが、砂場の魔物は違った強さを持つんだな。


「ピリカ、考え事をしている場合じゃないよ。どんどん穴に落ちていくよ!」

「ピヨ!」


 おっとそうだったな。足場を取られて、スキル飛翔を封じられている。

 なら、やることは二つだな。砂なので足場を固める。


「ピーーーーーー!!!(王者の咆哮)」


 俺は気合いを入れるために一鳴きして、大量の水を魔力を作り出す。

 砂漠であっても一部を水で湿らせることはできる。

 それにここは岩場近くで、完全な砂漠というにはまだまだ地層が岩に近い。


「キューー!!」


 巨大モグラが水の中で溺れてていくのが見えて、ドロドロな足場になったことで砂から足を抜けることができた。


「GYAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」


 今度は先ほど俺が食べていたサンドワームが暴れるようにこちらに襲いかかってくる。カラスにモグラにワームに忙しいことだ。


 一体一体は対処ができるが、三人も同時に相手にしているので、面倒で厄介な相手になっている。


 俺は飛翔を使って、ワームから逃げるようにするが、それを追いかけるように百メートルの体を伸ばして砂場から大きな口を開いて迫ってくる。


「ピヨ!」


 だが、制空権をとった俺の方が有利なことは変わらない。


 風の力でさらに加速して、空に舞い上がって逆に飛び上がる際に風の塊をサンドワームの口に放り込んでやる。


「凄い凄い! この間飛べるようになったばかりなのに、空の戦いが上手い!」


 アシェが興奮して喜んでくれるのは嬉しい。


「本当ね。凄いわ!」


 どうやら咆哮を上げたせいでコロンちゃんも目を覚ましたようだ。


 なら、この場に留まるのは得策ではないな。


 俺は急いで方向転換して者の赤い岩場を目指した。


「シャーーー!!!」


 だが、その瞬間に羽が生えた蛇が上空から飛来した。


「ピヨ!」

「うわっ! 蛇が空飛んでる?!」

「あれってドラゴンじゃない?」


 コロンちゃんの発言に、砂漠の一部が爆発して真っ白なコック服に仮面をつけた三人組が現れる。


「我らKFC秘密コック集団! 魔黒鳥よ! 我々は貴様を食材として入手するためにやってきた。大人しく捕まるならば、サモナーたちに危害を加えないことを約束しよう」


 砂の爆発に負けないほどの大きな声で、自らの正体を明かす謎の三人組に唖然としてしまう。


「ホウヤカムイよ! 魔黒鳥を叩き落とせ!」

「ダークカラス! 援護だ!」

「サバクキンモグラ! 渦を作って待ち構えろ!」


 三人組の巨大な魔物たちが一気に襲いかかってくる。


 俺は攻撃を掻い潜りながら、赤い岩場を目指した。


「絶対に逃すな!」


 ホウヤカムイと呼ばれた羽付蛇が、広範囲で砂を空へと舞い上がらせる。


 おいおい、そんなことをすれば!


「GYAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」


 ほらほら、やってきたこの砂漠の主を放っておくわけにはいかないよな。


「怪獣大戦争だよ!」

「本当やね。これは凄い迫力!」


 おっと闘走本能に火がつきかけてしまったが、俺は彼女たちを守るのが役目だな。彼女たちを放っておいて、戦うわけにはいかないな。


「ピーーーーーーーーーーーーー!!!!!!(最大級の王者の咆哮)」


 貴様ら! 退け!!!


 全力で《威圧》と《残虐性》を込めて敵を黙らせる。


「うわっ! 今のなんだか悪い感じがする!」

「うんうん。絶対悪い魔物だって思った」


 はは、そうだろうな。


 俺自身も敵を威圧するために放っているからな。

 それを聞いた相手がどうなるのかなんて関係ないよ。


 どうやら上手く聞いてくれたようだ。


 四匹の魔物が動きを止めている。


 俺は急いで二人を赤い岩場に戻した。




 

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