第85話 野外学習 2

 ランチを終えて、それぞれが休憩時間に入ったところで、俺はソワソワとした気分になっていた。


「ピリカ? どこか行きたいの?」

「ピヨ!」


 俺は砂漠が見えている方角を指す。


「え〜砂漠の方に行きたいの? 砂がいっぱいだから服とかに砂が入って嫌なんだけど」

「ピヨ〜」

「もう仕方ないな。みんなごめんね。ピリカが砂漠を見たいそうだから、ちょっと言ってくるね」

「あらあら、そうなんですね。私はもう少し休ませていただきます」

「そうだね。オリヴィアちゃんは休んでいた方がいいよ」

「私も暑いのはダメねぇ〜フロッピーと休んでおくわ」


 二人がここまで歩いてくるだけで疲れてしまったようだ。


「なら、私も一緒に行こうかな。ソリーもいいよね?」

「ワン!」


 コロンちゃんとソリー君がついてきてくれるので、二人と砂漠を見に行くことにした。


「歩くの疲れたからピリカお願いできる?」

「ピヨ!」


 ああ、任せておけ。

 モフモフボディーに乗るがいい。


「うわ〜、日差しが強い荒野はピリカが暑いね」

「ピヨ!!」


 なんだよ俺のモフモフボディーに弱点だと!


「うん、やっぱり暑い。ピリカどうにかできない?」

「ピヨ!」


 くっ、風よアシェに涼しい風を。


「うわ〜、凄い! 気持ちいい」

「それ良いねぇ〜、ソリーもできる?」

「ワウゥ」


 どうやらソリーは風の魔法は使えないそうだ。

 炎の魔法が得意なソリーは、どうやら暑いのは大丈夫だが、コロンちゃんは苦手そうだな。


 仕方ないので、コロンちゃんにも風を与える。


「うわ〜、めっちゃ気持ちいいやん」

 

 コロンちゃんは気に入ってくれたようだ。

 ついでにソリーにも涼しい風を吹かせてやる。


「ワウっ!」

「ピヨ」


 ソリーは気持ちよかったようで、俺にお礼を言ってきた。

 

 気にするなと返事をして、俺たちは砂漠地帯に向かっていく。

 赤い岩場から、見える砂漠地帯はとても広くて先が見えない。


 砂漠を越えるとどこまで行けるのだろうか?


「カーーー!!!」


 俺たちが砂漠地帯を見ようと赤い岩場の端にきたところで、カラスの鳴き声が聞こえてきて、一瞬だった。


 コロンちゃんが巨大なカラスに連れ去れられる。


「ジャイアントクロー!!! どうしてあんな上位魔物がこんな場所にいるの?!」

「ワン!」


 追いかけようとするソリー。


 だが空中を彷徨うジャイアントクローに狼のソリーでは追いつけない。


 そして、この場で空を飛べて戦えるのは。


「ピリカ!」

「ピヨ!」


 ああ、まかせろ。

 友達のピンチを救わないアシェじゃないよな。


 俺は進化を開始する。


「ソリーは先生を呼んできて、私たちだけじゃ勝てないかもしれないから!」

「ワン!」


 ソリーは賢い狼だ。


 自分の主人を助けたいと思っているだろう。

 だけど、この場で最善はなんなのかしっかりと考えて行動ができている。


「ピーーーーーー!!!」

「進化できたね。私を乗せて飛んで」

「ピーーーーーー!!!」


 任せろ。


 俺は魔黒鳥に進化して、空を飛ぶ。

 ジャイアントクローと大きさだけなら、同等の黒い羽を持つ鳥同士。だが、俺は負けるつもりはないぞ。


「カーーーー!!」


 こちらを嘲笑うように、ジャイアントクローはコロンちゃんを咥えていた口を離して、コロンちゃんを落としてしまう。

 俺たちは急いで、コロンちゃん救出に空をかけた。


「ピーーーー!!!」


 砂漠に激突する寸前に、なんとかコロンちゃんをキャッチすることに成功する。


 その瞬間砂漠から巨大なサンドワームが大きな口を開けて飛び出してきた。


「ピヨ!」

「ピリカ、冷静に! ダークホール!」


 驚いた俺に対して、アシェが冷静にダークホールを作り出して、俺たちの足場を作り出してくれる。


「ピヨ!」

「まだだよ!」


 今度は空からジャイアントクローが襲いかかってくる。


 上はジャイアントクロー、下はサンドワーム。

 

 上下で挟み撃ちにされた俺たちは絶体絶命のピンチを迎える。


「ピーーーーーー!!!!(王者の咆哮)」


 咄嗟に行った行動は至極簡単な、何度も何度も反復的にやってきたことだ。


 無意識だと言ってもいい。


「ピヨ!」


 ジャイアントクローに向けて、風の刃を放ち避けられたところを鉤爪で強襲する。

 それを距離をとって避けたジャイアントクローの落下視点にサンドワームが口を開けて待っている。


 それを掻い潜るように大量の水を発生させて、サンドワームの口に流し込んだ。


 俺たちは噴水になっている水を足場に砂場に着地して、サンドワームの胴体に嘴を突き立てた。


「ピヨ!!!」


 ウマッ! なにコレ! なんかコクがあってマイルドな中に苦味があるだと。

 そうか、しっかりと砂の中で蒸し焼き状態にされた体はほんのりとした肉と血液に苦味を与えているんだ。


「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ」


 あまりの美味しさに久しぶりに夢中で嘴を突き立ててしまう。


 ジャイアントクローは、暴れるサンドワームにビビって近づいてこない。

 サンドワームが暴れるたびに、俺は風の防御で弾き返す。


 これは先生が来るまでの消耗戦であり、俺のサンドワーム食べ放題キャンペーンだ! 入れ食い状態で行ってやんよ。


 


 


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