入学編
第15話 サモナー学園へようこそ
《sideアシェ》
初めて村を出て王都に向かう。
人が住める世界はとてもとても小さくて、世界は三つの領域に分かれている。
世界のどこにでも繋がる海。
生命を生み出す森。
岩と砂で作られた渓谷。
三つのエリアには様々な魔物が住んでいて、人が生きていくことはとても危険な場所だ。
海を挟んだ島の向こうには魔族と呼ばれる人たちが住んでいることも教えてもらった。動物と人の両方を合わせた人たちで、獣のような特徴を持つんだって。
「アシェ。そろそろ馬車が来るぞ」
「うん。ありがとう」
八歳になった私は村を出て学園にいく。
王国だけじゃなく、人が住む領域に住んでいる子供たちは、7歳〜9歳の間に学園に入学することが決められている。
どうして三年の差があるのかでいえば、召喚が成功して魔物と契約が結べているかどうかが条件になるからだとお父さんが教えてくれた。
「忘れ物はないか?」
「大丈夫だよ。だけど、家から離れるのはやっぱり寂しいな」
「十五歳になるまでは、学園の管理になる。アシェは八歳だ。三年間は学校で学んで、知識を持った状態で旅を始める。十五歳になるまでは学園から与えられる恩恵がたくさん使えるが、守られているようなもんだ」
「うん。三年が終わったら絶対に帰ってくるからね」
「ああ、家も大切だが、旅をしてみたい場所なんかもちゃんと決めるんだぞ」
「もちろんだよ! ピリカとたくさん色々なところにいくんだ!」
そうだ。私は一人で旅をするわけじゃない。
サモナーには、契約を結んだ召喚獣が存在する。
私の相棒であるピリカは、とても賢くて強いヒヨコさん。
スーパーなヒヨコって言われる種族で、捕まえて食べると凄く美味しいんだって。
だけど、相棒だから絶対に食べないからね!
「あっ、そうだ。アシェに伝えておきたいことがあるんだ」
「どうしたのお父さん」
「世界は良い人ばかりじゃない。だから、誰でも信じるのはダメだ。アシェが友達になってもいいと思う子を見極めなさい。人の中に悪い人がいるように、魔族の中には良い人もいる。見た目で人を判断するんじゃなくて、その人の行動や心で判断しなさい」
お父さんはそう言って私の頭を撫でてくれた。
大きくて優しいお父さんの手が私は大好き。
お母さんが早くに死んでしまった私を男手一人で育てくれた。
「わかった! 見た目で人を判断しない。行動と心で判断する。それと友達をたくさん作るね!」
「ああ、たくさんアシェが仲良くしたい人に出会えるといいな」
「うん!」
私はお父さんが運転してくれる馬車に乗って王都に向かった。
村が遠くなる景色を眺めると、本当は少しだけ涙が出ちゃった。
ずっとお父さんと一緒にいられたら良いけど、この世界は弱いままでは生きていくことができない。
一緒に過ごしてくれる召喚獣と共に強くなる。
そうしなければ生きる資格がないと四大聖獣様が決めているんだから。
それから3日が過ぎると、王都の大きな門が見えてきた。
「うわ〜凄いねお父さん!」
「ああ、私もくるのは久しぶりだが、村とは違って賑わいがあるな」
真っ白な門に大きな壁が、王都を包み込んでいた。
どれだけ大きいのか見えないぐらい巨大な街を見せたくて、私はピリカを召喚する。
「ピヨ?」
「ピリカ! 見て見て、あれが王都だよ! 私はね。あそこにある学園に言って勉強するんだよ」
「ピヨ〜」
ピリカが馬車の上で立ち上がって王都の城壁を見上げている。
多分、十メートルの地龍が立ち上がっても半分も届かないんじゃないかな?
「凄いよね。今から王都に入場するから、ピリカの登録もするよ」
「ピヨピヨ」
「うん。ピリカは私の召喚獣ですって、登録しておくとね。王都でピリカを連れて歩いても誰からも怒られないんだよ」
「止まれ!」
門兵さんに呼び止められて、私たちが入場の手続きをする
その後は、サモナー協会に向かう。
門の近くにあるからすぐに辿り着いて、ピリカを登録する。
「サモナーアシェの従魔として、召喚獣ピリカをここに登録する」
魔法の水晶に魔力を流し込むと、私とピリカが正式なサモナーと召喚獣であることが国に登録される。
これによってどこの国にお邪魔しても、証明してくれる証明書を発行できるようになる。
「ピリカ、ごめんね。ちょっと首につけるね」
召喚獣を証明する魔導具の首輪をつけてもらう。
これをつけてあげることで、外から見ても私の召喚獣であることを証明できる。
魔導具が凄いのは、魔物が苦しくないように調整してくれる。
魔物によっては強くなると進化する魔物もいるから、伸縮自在で変化する。
「ピー」
「ふふ、うん。よく似合ってるよ。ふ〜緊張してたけどピリカのモフモフに抱きついていると癒される〜」
王都に入って緊張してたけど、やっぱりピリカがいれば大丈夫だよ。
そのままお父さんが御者する荷馬車で王都にある学園へ連れて行ってもらう。
入学の手続きとか、寮の手続きとか、ピリカの登録とか、色々な手続きが続いて、疲れてしまう。
「アシェ。これで手続きは全て終わりだ」
「うん」
「コラコラ、そんな悲しい顔をするな。お前がそんな顔をしたら父さんも悲しくなるだろ」
「うん。ごめんね」
「いいさ」
お父さんが私を抱きしめてくれる。
「お前が大きく立派なサモナーになることを願っているぞ。自分を大切にしなさい」
「はい!」
我慢ができなくて、涙が溢れ出した。
一頻りお父さんの胸で涙を流して、別れを惜しんだ。
お父さんと別れたくない。
もっとずっとにいたい。
だけど、これは決まりだから……。
「ピー」
「あっ」
ピリカが私を呼んでくれる。
お父さんから離れて、ピリカに抱きついた。
「ピリカ、娘を頼むぞ」
「ピヨ!」
「ああ、お前には一度アシェを助けてもらっているからな。信じてるぞ」
「ピヨピヨ!」
ピリカがお父さんに任せろと私を翼で包み込んでくれる。
翼の中はとても暖かくて、眠りについてしまう。
ピリカに包まれていると安心して、私をピリカが寮のベッドに寝かせてくれた。
明日から、私は学園の生徒として生活が始まるんだ。
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あとがき
どうも作者のイコです。
一章開始です。
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