第112話 温泉休息

 第二回戦を終えて、残す戦いはあと準決勝と決勝戦の二つだけだ。


 俺たちは、しばしの休息を取ることにした。


 溶岩ダンジョンの戦いは苛烈を極め、二人とも疲労を感じていた。


 学園が保有する休憩所で、俺たちは身を横たえることにした。


「凄いね。こんな場所があるなんて知らなかったよ」

「ふふふ、ビギナー選手になってから解放されるようですよ」


 オリヴィアちゃんが探してきてくれたのは、小さな温泉が湧き出ている休憩所だった。溶岩ダンジョンの近くで湧き出た温泉を使って建物が作られていた。


 スーパー銭湯を思わせる広い施設の中は、温泉以外にも寝る場所や、ゆっくりと食事が取れる場所。それに会議を行える部屋なども用意がされている。


 俺たちはその温かい湯に浸かってリラックスすることにした。


「ふふ、ピリカが浮いてる」

「アヒルさんのようですね。ですが、足をバタバタさせないで、ちゃんと浸かりましょう! シルちゃんを見習ってください」


 シルは猫の癖にお湯を嫌うことなく、頭にタオルを乗せてゆっくりと使っている。

 俺はちょっと抵抗があったが、入ってみれば心地よくて、ただ、このヒヨコの体は湯に浸かると波を起こす。


「うわ〜! ピリカが入ったら凄いよ!」


 アシェも楽しんでいるようだ。

 この温泉は体と心を癒やす絶好の場所だ。


「ピリカ、あははは。凄い凄い!」

「ピヨ!」


 楽しそうなアシェを見ているとこっちも楽しくなる。


 休むことも大切だ。


 準決勝は間違いなく激しい戦いになる。


「ピー」


 俺は温泉の心地よさと次を思って声が漏れてしまう。


「ふふ、ピリカオジサンみたい」

「そうですね。大人も温泉に浸かると、大きく息を吐いてますね」


 アシェとオリヴィアちゃんに笑われてしまった。


 中身はオジサンだから仕方ないさ。

 

 今は体力を回復させて、次の戦いに備えることが重要だ。

 温泉の湯が体中の疲れをじんわりとほぐしていくのを感じる。


 ヒヨコでもそれは感じられるんだな。


「ふぅ…温泉って本当に最高だね」


 アシェもゆっくりとお湯の中で手足を伸ばして、リラックスしている。


 温かい湯が心地よく、全身の疲れが取れていくのを感じる。

 このひとときの安らぎが、次の戦いへのエネルギーを与えてくれる気がする。


「さぁみんなで洗おう!」


 アシェとオリヴィアちゃんが二人がかりで洗ってくれて、三人は互いに体を洗い合う。


 女の子たちのゆっくりお風呂を楽しんでいる姿を眺めているのは幸せだな。


 ♢


 温泉から上がった俺たちは、食事を取ることにした。


 魔物と一緒に取れるように豊富な食材が置かれているが、今回は溶岩の近くということでサラマンダーのお肉が売りのようだ。


 ジューシーなドラゴン肉と呼ばれる逞しいお肉を頂いた。


 溶岩ダンジョンの近くで、気温が高いためにアシェとオリヴィアちゃんは冷たいそうめんを食べている。


 アシェは食事をしながら、次の戦いに向けての戦略をオリヴィアちゃんと話を始めている。


 二人はどんどん成長していくのだと思って考え深いな。


「ピリカ、次はどう戦おうか?」

「ピヨ!」


 俺はアシェの指示を聞くよ。もちろん、好きに戦っていいなら暴れてやるけどな。


 細かな話だが、相手の攻撃を防ぐためには、風の魔法や結界が重要になる。


 タイミングや、進化した姿も大きな武器になるはずだ。

 あの黄金鳥の力は切り札だから、タイミングが大切になるだろうな。


「やっぱり最後はピリカの判断に任せることになると思う。私も相手のことは見ているつもりだけど、よろしくね!」

「ピヨ!」

「これで準備は整ったかな? 今日はしっかりと休んで、明日の戦いに備えようね!」

「ピヨピヨ!」


 アシェは満足そうな顔をしているので、俺も同意する。


 あとは、休息所の寝る場所を借りてゆっくりと休息を取らせてもらう。

 次の戦いに向けて最高のコンディションで準決勝に臨むことができる。


 溶岩ダンジョンは相当に疲れたのだろう。

 その夜、俺たちはぐっすりと眠った。


 ♢

 

 翌朝、準決勝の間隔は狭いが、ここからはみんなが苦しい戦いを乗り越えて決勝に出場することになる。


 決勝戦は、戦いを終えた次の日に行われる。


 三連戦を勝ち抜いた者にだけ優勝者としての栄光を勝ち取れるのだ。


「ピリカ、今日は負けられないよ」

「ピヨ!」


 ああ、もちろんだ。


 俺も心の中で決意を固めた。


 準決勝を勝ち抜いて、決勝へと進むんだ。

 

 どんな場所で、どんな相手だろうと負けねぇよ。


 絶対にアシェを優勝させてやるんだ。


 俺たちは、次の会場である。氷のダンジョンに向かって入っていく。


 氷のダンジョンは前にも来たことがあり、俺のモフモフな体が大活躍する。

 アシェがダンジョンに入ってから、ずっと抱きついている。


「ここだね」


 氷が一面を埋め尽くした場所は広くはあるが、冷たい風が吹き抜けていく。


 そんな場所で待ち構えていた相手は、美しい氷の妖精だった。


「いらっしゃい! ごめんなさい。私に有利な場所で」


 そして、いきなり謝ったのは、アシェよりも年上のお姉さんだった。


 今回の相手は、女の子と氷の妖精のようだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 作者のイコです。


 続きくれ〜とコメントをいただきましたので、執筆してみました。

 まだまだ体調が不安定なために、連続しては執筆できるのかわかりませんが、楽しんでもらえると嬉しいです。


 いつも読んでいただきありがとうございます。

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