第47話 決勝大会 第一回戦

 決勝大会は一日で全ての試合が行われる。


 各部門で予選を勝ち上がった者達がそれぞれのフィールドで戦いを繰り広げるわけだ。


 エキスパート部門などは、山一つをフィールドにした会場もある。

 他にも海の中や、森全体など規模が大きい。

 そうでなければ、強い魔物同士が戦う際に、被害が大きくなるからだ。


 そして、ルーキーの決勝大会では八名の出場者が顔を揃える。


 アシェもその一人として会場に整列していた。


「皆さん、よくぞ召喚獣と共に成長してサモナーとしての研鑽を積みました。一年の集大成を見せるルーキー達。成長の過程を見せるビギナーたち、そして卒業して最後の大会になるエキスパート達。それぞれに目標があり、己の力を示してください。あなた達の成長を見るのが我々は何よりも嬉しいのです」


 学園長先生の挨拶によって開会式が執り行われて、それぞれの会場へと分かれていく。そして、決勝に残った二人だけが、この会場へと戻ってくる。


 たった四組だけが、この会場で試合をするということだ。


 王都中に見てもらえるのは各部門の一位と二位だけだ。

 会場では大勢の王都に済む住民が、押し寄せて今年の部門勝者を見ようと集まっている。


「さぁ、君たちの戦場に行ってきてください。そして、勝ち上がってこの場でお会いできるのを心からお待ちしております」


 学園長の挨拶が終わって、控えていた俺の元へアシェがやってくる。


「行こう、ピリカ。私たちの戦うフィールドへ」

「ピヨ!」


 アシェも戦士の顔をするようになった。

 彼女も一年で多くの経験を積んだのだろう。


 俺はアシェへ背中に乗るように伝える。


「ありがとう」


 アシェが促されるままに背中に乗った。

 もしも、アシェと冒険に行くなら手綱なども用意してあげた方がいいかもしれないな。鞍なんかも作るといいか? だが、モフモフボディーだから尻は痛くないか?


「ピリカ、ついたよ」

「ピヨ」


 俺たちはやってきたのは岩場だった。

 対戦相手は、☆5以上の強者ばかり。


 その最初の相手が……。


「まさか君と戦うことになるとはな」

「イヤーミ君。あなたのサーベルサーペントは確かに強い魔物だけど、私は負けない」

「言っていろ。僕は優勝以外に目標じゃない」


 サーベルサーペントは確かに強い魔物だ。

 鋭い、牙に、己の体を剣のように鋭くして斬撃を飛ばすこともできる。


 だが、進化の止まった魔物に進化を続ける俺を止められるかな。


 《神の声》さんあいつの危険度は変化しているか?


 《危険度☆3です》


 うん? むしろ減っていないか?


 《今のあなたから見れば同等か格下になります》


 へへ、そうかよ。


 どうやら《神の声》さんも随分とわかってきたじゃねぇか。


「ピリカ、いくよ。進化した力を見せてあげようね」

「ピヨ!」

「ふふ、ねぇピリカ。あなたが進化したことで私の中に流れてきたピリカの魔力も変化をしたんだよ。やっぱり私たちって一心同体なんだね」

「ピヨ?」

「私も新しい魔法が使えるようになったから、必ずサポートして見せるよ」

「ピヨピヨ」


 それは頼もしいな。


 頼むぜアシェ。君を頼りにしているからな。


「決勝大会第一試合、岩場の決戦を始めます。対戦者はアシェとピリカコンビと、イヤーミとサーベルコンビです」


 アシェが俺の背に乗り、向こうはフィールドに隠れるようにスタートを陣取った。


「開始!!!」


 審判を務めてくれる先生の声で試合が開始した。


 その瞬間に無数の斬撃が空に飛ぶ。


 ここまで上がってきたのは伊達ではないということだ。

 見えないように姿を隠したまま、それでも斬撃でこちらの動きを封じる作戦を取るとは。


「ピリカ、任せて!」

「ピヨ?」


 俺が逃げようとしたところで、アシェが魔法を発動する。


「闇よ!」


 俺が目隠しとして使っていた闇魔法を、アシェは黒い膜を張るように俺たちの前に展開する。


「なっ! なんだと!」


 こちらを襲うために向かってきていた斬撃が全て闇の中に吸収されて消えてしまった。


「ふふ、闇のバリアだよ。闇はね。吸収の性質を持つって授業で習ったんだ。だから、すべの攻撃を吸収する闇を想像してみたの」

「ピヨピヨピヨ!」


 やっぱりアシェは天才だよ。

 俺なんかじゃ思いつかない方法で、魔法を使うんだな。


 なら、俺も新しい力を見せることにしよう。


「ピーーーーーーーーーー!!!!(王者の咆哮)」


 俺の咆哮には恐怖を付与することができる。

 だから、レベルが俺たちよりも低いなら。


「なっ、なんだよあのヒヨコ」


 イヤーミ君のガタガタと震える声が聞こえる。

 それでももう一人はそうはいかないようだ。


 岩場を巧みに使って、身を隠しながら俺たちに近づいた対戦相手が近距離で姿を現した。


「シャー!!!」

「ピーー!!!」


 サーベルサーペントの牙と、俺の鉤爪がぶつかり合う。


 蛇と鳥の対決なら、俺は絶対にお前に負けるつもりはないぞ!


「ピヨ!」


 毒の鉤爪! 本来は使うつもりはなかったが、相手の牙から毒を感知した。


《毒耐性を発動しました。相手から毒攻撃を感知しました》

 

 《神の声》さんが教えてくれなかったら危なかった。


 もしもアシェに毒の牙が当たっていれば、とんでもないことになっていた。


「ピヨピヨ」


 主人の命令なのか、サーベルサーペントの意志なのか知らないが、絶対に許さないからな。


「ピーーーーー!!!」

「シャーーーーー!!」


 互いに肉薄して攻撃を放つ。

 だが、勝敗を分けたのは……。


「闇よ!」


 サモナーの差だった。


 ビビって動けなくなったイヤーミ君と、勇敢に俺を助けようとしたアシェのアシストで、サーベルサーペントは身動きができなくなり、俺の嘴によってダメージを受けた。


「勝者アシェ、ピリカコンビ!」


 先生の勝利宣言に、イヤーミ君は項垂れた。

 

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