第68話 進化 5

 進化することを決めた俺は、ワッシーに進化をすることを伝える。


『ワッシー、ちょっといいピ?』

『兄貴? どうしたんだ?』

『今から進化をするっピ』

『大丈夫なのか?! それだけ体がボロボロなのに』

『すまんが、ご飯を大量に食べさせてくれないか? 水も頼むピ』

『分かった!』


 それから数時間かけて、ゆっくりとご飯を流し込んでもらった。

 水も飲んで食事でお腹を満たしたところで、俺は進化を開始することにした。


《進化するヒヨコが選択されました。進化を開始します。進化速度はいかがなさいますか?》


 今回はワッシーに全てを委ねる。

 アシェにも心配をかけないで済むのはありがたいな。

 時間も、安全もあるからな。


 短縮なしでフルでやりたい。


《フルバージョンの1:1進化を承認しました》


 ああ、頼む。


《では、推奨通り1:1進化を開始します。期間は十日です》


 今回最長の長さだな。


《進化するヒヨコは特殊個体な上に更に変化をさせます》


 ああ、頼む。

 痛みも全部受け止めてやるぜ。


 完全に進化して、強くする。


《それでは進化を開始します。魔の王への道を突き進む空の王よ。あなたに闇の神からご加護が在らんことを》


 前と同じ文言が流れる。

 やっぱり確実に魔の王と空の王って両立できているようだ。


《全ての頂点にならんとすることを期待します》



 キタキタキタキタキタキタキタキ!!!!!!



 この痛みだ。全身が砕け散ってしまうような痛みが体を駆け巡る。

 だけど、今回は溶解液を受けた体が、元々ボロボロで痛みを抱えていたので、骨がバキバキに折れて皮膚も全てが剥がされていくような痛みがある。

 

 爪を剥がれ、皮膚を剥がれ、筋肉を引き下がれ、羽を一本一本引き抜かれていく。

 羽の先まで神経があるのではないかと錯覚する。


 溶解液を受けてダメージを受けていた肉が剥がれて、新しい体へ変化をしていく過程は体が作り変わっていることを実感させられる。


 これまでよりもより、鮮明に、より強烈な痛みを持って、俺は10日間の苦行を耐え忍んだ。



 朝日が、眩しく瞳を照らしている。

 ワッシーには、10日間誰も近づけさせないように伝えていた。


 辺りを見れば、抜け落ちた黒い羽が山となっていた。


 そして、前回目覚めた時には気づかなかったが、ここは小屋の中だったようだ。

 ワッシーたちが過ごしているリザードマンの村にある小屋を貸してくれたんだろう。


 ワッシーには何かと世話になったな。


「ピーーーヨ」


 伸びをすれば進化の痛みは無くなっていた。

 全てのゲージがグレードアップしていることもわかる。 


 ♢♢♢♢♢


 種族:進化するヒヨコ(魔黒鳥)

 称号:召喚獣、空王と魔王を目指すヒヨコ

 状態:飢餓

 レベル:1/100

 H P:80000/1000000

 M P:500000/750000

 攻撃力:100000

 防御力:120000

 魔法力:150000

 魔法防御力:100000

 素早さ:10000

 魅 力:5000


 特殊スキル:

《神の声:レベル4》、《ステータス閲覧:レベル2》、《大器晩成》、《愛嬌》、《念話》、《探知》、《恐怖付与レベル3》、《威圧》、《残虐性レベル3》、《魔黒鳥進化》、《進化時のみ飛行能力を得る》


 通常スキル:

《鳴く(王者の咆哮、威圧を含む):レベル5》、《突く:レベル5》、《毒の嘴レベル3》、《風魔法:レベル5》、《水魔法:レベル4》、《闇魔法レベル4》、《毒魔法レベル4》、《鉤爪レベル3》、《毒の鉤爪レベル3》、《モフモフボディーガード:レベル5》、《硬化》、《進化時に全ての能力を三段階上昇》


 耐性スキル:

《打撃耐性:レベル3》《斬撃耐性:レベル4》《重力耐性:レベル6》、《恐怖耐性:レベル5》、《火属性耐性:レベル5》《精神耐性:レベル5》、《毒耐性:レベル4》、《闇耐性:レベル5》、《氷耐性レベル2》、《風耐性レベル2》、《溶解液耐性1》、《進化時に全ての耐性を得られる。普段に能力の変化なし》

 

 称号スキル:《空王の眷属:レベル030》、《魔に染まりし者:レベル5》、《モフモフボディー:レベルMAX》

 

 恩恵:瀕死の踏ん張り。


 ♢♢♢♢♢


 全ての能力が上昇して、しかも進化時には能力が跳ね上がる。


「グワっ!」

「ピヨ?」


 入り口にワッシーが立っている。

 10日会わない間に、随分と精悍な顔をするようになったようだ。


『兄貴! 目が覚めたのか?』

『進化は終わったっピ。進化させてもらったこと感謝しているっピ』

『何言ってんだよ。兄貴がいたからワイたちは命を救われたんだ。感謝するのはこっちの方だ』

『そう言ってもらえると助かるピ。ちょっとお腹が空いて、体を動かしたいピ。食料を調達してくるピ』

『ああ、好きにしてくれ。この小屋は兄貴用に置いておくから、兄貴が出かけている間に掃除をしておくよ』

『頼むっピ。代わりにデッカイ獲物を持って帰るっピ』


 俺はワッシーに小屋のことを頼んで、リザードマンの村を出た。


 体が軽い。進化すると感じる高揚感がたまらない。


 空を飛べるのではないかと思うほど体が軽くて跳ぶように走ることができる。


 気持ちいい!!!


「ピーーーーーーーーー!!!!(王者の咆哮)」


 リザードマンの集落から離れたことを確認して、鳴き声を上げると周りにいる獣たちが身動きできなっているのがわかるっピ。


 喰らい尽くしてやる!

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