第69話 ピリカがいない日々

《sideアシェ》


 ピリカが森に帰って、一度だけ召喚を行なってからはいない日々を続けている。


 寂しくないわけではないが、正式に二年生になる頃にはピリカは戻ってきてくれると言っていたから、今は勉強と魔力の訓練を欠かさないようにしている。


「アシェちゃん。お元気がないようですが大丈夫ですか?」

「オリヴィアちゃん。うん。大丈夫だよ。ちょっと寂しくなっていただけだから」

「ピリカさんも罪なヒヨコさんですね。アシェちゃんにこんなにも思われて」

「ふふ、そうだよ。ピリカは強くなるために頑張っているからね。私も負けないようにしないと」


 私が立ち上がって、授業の教材を片付けてカバンに入れていく。


「ふふ、でしたら、今日は強くなるために美味しい物を食べに行きませんか?」

「美味しいもの?」

「はい!」

「実は最近に有名なフライドチキンとフライドフィッシュを売っているお店が屋さんができたんです」

「へぇーそうなんだ」


 フライドチキンと言われてピリカのことを考えてしまう。

 だけど、ピリカとの繋がりは離れていても感じられる。

 

「アシェちゃんがチキンがダメでしたらフィッシュなどはいかがですか?」

「ううん。大丈夫だよ。せっかオリヴィアちゃんが誘ってくれたんだもん。行こう」

「はい! ありがとうございます」


 私たちはシルちゃんに護衛をしてもらって、学園の外出許可をもらって夕食を食べるために外に出た。

 王都の街並みはとても綺麗で、普段は学園の中ばかりだったのがもったいなく感じてしまう。


「あちらですわ」

「オリヴィアちゃんは来たことがあるの?」

「いえいえ、婆や聞いてはいましたが、初めてです」

「そうなんだね」

「はい! 絶対にアシェちゃんと行こうと思って楽しみにしていたんです」

「ありがとう。色々と気にしてもらっちゃって」


 オリヴィアちゃんは何かと私のことを気にかけてくれている。

 私も大切なお友達だと思っているけど、つい自分のことやピリカのことで頭がいっぱいになっちゃうから、気をつけないといけないね。


「ここですよ」


 そう言って連れてきてもらったお店にはKing fried cookingと書かれていた。


「王様の揚げ物料理?」

「はい! KFCって言って、最近になって有名になったんです」

「そうなんだね」


 私たちはお店の中に入って美味しそうな香りに食欲がそそられる。


「うわ〜。すごいいい匂いだね」

「そうですね。食欲がそそられます!」


 私たちは席に座って、フライドチキン、フライドフィッシュ、ポテトとサラダを注文した。



《side KFC団》


「おい! あれを見ろ?」

「うん、なんだ? アイドルでも来たか?」

「何! アイドル?」


 秘密コックKである俺は新店舗立ち上げで成功して順風満帆な日々を過ごしていた。コック仲間であるFとCと共に、ダークなヒヨコのことを考えすぎるがあまりに、作り上げたフライドチキンの評判がよく。


 お店を立ち上げるとあれよあれよという間に大成功を収めてしまった。


 あれほど求めたダークなヒヨコは結局調理することはできなかったが、今となっては感謝しているぐらいだ。


 そんな俺が客席に視線を向けると、やってきたお客はダークなヒヨコのサモナーである少女だった。


「あの子はダークなヒヨコの!」

「ああ、そうだ」

「まさかヒヨコのサモナーがチキンを食べに来るとはな」

「ふん、別に関係ないということだろう」


 だが、せっかく来たのなら至高一品を提供して、あのヒヨコを手放したくなるように仕向けるのもありか。


「おい、二人とも本気で作るぞ」

「何? どうしてだ?」

「何か考えがあるのか?」

「ああ、至高の一品を提供することで、あのヒヨコを手放してチキンの味が食べたくなるように仕向ける」

「くくく、なるほどな!」

「それはいい。ならば三人の力を合わせるとしよう!」


 俺たちは三人それぞれの技を駆使して、至高の一品を作り上げる。

 肉の切り方、味付け、揚げる温度、そしてタイミング。


 全てが職人である我々が本気で作った時と、バイト君が作った時では味は全く違う物になる。


 これこそが秘密コックと言われる所以であり、我々がコックとして腕を磨いてきた実力がものをいうということだ。


「さぁ、バイト君。あの麗しい二人の少女に至高の一品を届けてくれ」

「は〜い。了解っす」


 バイト君がサモナーの少女に至高の一品を届けた。


 我々は彼女が齧り付くその時まで見守る。


「凄い美味しい!!!」


 彼女の一言で、我々はガッツポーズをして勝利を確信する。


「ハァー、ピリカにも食べさせてあげたいな」

「共食いにならないのですか?」

「ならないでしょ。それにフィッシュも美味しいから、ピリカはこっちかな?」

「それもそうですね」


 我々はガッツポーズの後に敗北を味わって項垂れる。


 彼女の愛情を、我々の料理で超えることはできかったのだ。


「くっ、もっと腕を上げるしかあるまい」

「ああ、次こそリベンジだ」

「まだだ、俺たちは始めたばかりだからな」


 三人で手を合わせて約束する。


「あの、早く次の料理お願いします!」


 くっ、バイトのくせに。

 

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