第8話 別の存在

 あれ〜 おかしいぞ〜。


 銀猫が進化を開始したはずなのに、包まって寝ているだけで全然痛そうじゃないぞ〜 あれれ〜 なんでだ〜。


《王者へ至る道は遠く険しいのです。普通の進化とは別の物とお考えください》


《神の声》さんの説明を聞いても、納得はできない。

 どうやら俺と銀猫では別の存在ということか? 銀猫は獣の王者を目指していない?


《獣の王者については私も知りません》


 そうか、《神の声》さんもレベルが足らないってことなのかな? 知らないものは仕方ないね。


 それから1日ほどの進化期間を終えて、銀猫は進化を終わらせた。


「ピー」


 ないわ〜。なんか進化がスゲー楽そうに見えるじゃん。

 俺めっちゃ痛いんだよ。

 体バキバキになるぐらい砕け散るんだから。


 ♢♢♢♢♢


 種族:ハイパーなヒヨコ

 称号:召喚獣、空王を目指すヒヨコ

 状態:空腹

 レベル:1/30

 H P:100/1000

 M P:100/500

 攻撃力:300

 防御力:500

 魔法力:400

 魔法防御力:500

 素早さ:200

 魅 力:100


 特殊スキル:《神の声:レベル2》、《ステータス閲覧:レベル1》、《大器晩成》、《愛嬌》、《念話》

 通常スキル:《鳴く(王者の咆哮、威圧を含む):レベル1》、《突く:レベル2》、《風魔法:レベル2》、《水魔法:レベル1》《モフモフボディーガード:レベル2》、《硬化》

 耐性スキル:《打撃耐性》《斬撃耐性》《重力耐性》、《恐怖耐性》、《火属性耐性》

 称号スキル:《空王の眷属:レベル001》、《モフモフボディー:レベルMAX》

 

 恩恵:瀕死の踏ん張り。


 ♢♢♢♢♢


 見た目は変えなかったけど、全てのステータスは上がったな。

 進化をする前は細かい数字もあったけど、進化をするとわかりかすく百の位で揃えられるのかな?


 HPに関しては1000を超えたから、この辺りの魔物が束になっても早々に死ぬことはないな。

 それに攻撃系の能力よりもヒヨコのモフモフボディーのおかげなのか、防御の方が強い。


「ニャン」


 銀猫が巣からこちらを見ている。

 降りられるのか? と問いかけられているような気がして、俺は銀猫の横にから飛び降りた。


「ニャニャン!」


 何するつもりと言わんばかりの声に、俺はモフモフボディーを発動して、無傷で着地した。


「ニャッ!」


 ふふん、銀猫のやつを驚かせてやったぞ。

 進化前よりもよ、美しい毛並みとしなやかなボディーを手に入れたからってうらやましいとか思っていないからな。


「ピー」

 

 早く降りてこいよ!


「ニャン」


 俺が見上げて呼びかけようとしたら、いつの間にか見事な着地で横に立つ。


『ちゃんと進化に付き合ってくれた約束は守るわ。蟻塚を攻略しましょう』


 む〜、なぜだろうか? 行動一つ一つに優雅さのようなものを感じる。


『ああ、よろしく頼む』


「ピ〜」


 納得できん。


『あなたは凄い痛そうだったけど、大丈夫なの?』

『うん? 心配してくれるのか?』

『ベッ、別にあんたのことを心配しているんじゃないわよ! 戦えるのか不安に思っただけ。見た目も全く変わってなくて全然強そうに見えないし』


 ふむ。見た目の成長は今回行わなかったからな。


 二メートルを超えるデカいヒヨコにも憧れるが、それよりも能力重視だ。


『進化はできているから見た目はいいだろ』

『その見た目は反則だと思うのよね』

『何か言ったか?』

『なんでもないわよ』

(声は渋いのに、どうして首を傾げる仕草は可愛いのよ!)


 俺たちは地上へ降り立って、まずは腹ごしらえと水分補給を行なった。

 水辺は元々理解しているので、簡単に見つけることができた。


 そして、銀猫と会ったところからが境目になっていて、虫の魔物ばかりだった敵から、獣系の魔物が出てくるようになった。

 二、三匹、ウサギの魔物を狩った銀猫が食事しているのを護衛しながら、俺はピンクミミズをいただいた。


 食事を済ませた俺たちは蟻塚の近くまでやってきた。


『ミミズの踊り食い。ミミズの踊り食い』


 どうやら銀猫はミミズを丸呑みにしているシーンを見て、トラウマを抱いてしまったようだ。自分だってウサギを食べていたくせに……。


 猫からしたらヒヨコも食欲がそそられると思うが、今のところは大丈夫なようだ。


『それよりも情報を教えなさいよ』

『情報?』

『むっ!』


 情報を誤魔化そうとしたが、睨まれて観念する。


『嘘だ。召喚獣に契約についてだろ』

『そうよ!』


 俺は自分が体験した召喚の話を、銀猫に聞かせてやる。

 アシェというサモナーに召喚されることで人の存在を教えてやる。


『そう、人間っているのね』


 銀猫は俺から聞いた情報について考えているようで、それ以降は黙ってしまった。


 そのまま俺たちは蟻塚にやってきて、正面から突入する。


「ピギー!!!」


 俺は《王者の咆哮》によって、集まってきた蟻どもを黙らせる。


「ニャアオーーーー!!!」


 さらに銀猫の鳴き声は、相手を魅力する力があるようで、数名の蟻たちが銀猫の配下になって味方を攻撃し始めた。


「ピヨピヨ」


 このままいくぞ! 


「ニャ!」


 わかっているわよ!


 俺たちは蟻塚の中へと入っていった。


 ここからは上位魔物を相手にすることになる。

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