第18話 ハングリースパイダー

 木の上にいる巨大な蜘蛛にどうしたものか考えてしまう。


《ハングリースパイダー、危険度☆☆☆》


 おや? 《神の声》さんの発言が進化している? 前回のレベルアップで《神の声》さんもレベルが3になったと言っていたな。


 魔物の新情報と危険度まで教えてくれるのか? ただ、星3? はどれくらい危険なんだろう?


《神の声》さん。


 今までの魔物と比べて説明をお願いできますか?


《ピンクミミズ、危険度☆。軍隊アント、危険度☆。ジャイアントアント、危険度☆。グリーンベアー、危険度☆☆。ソードアント、危険度☆☆☆。クイーンアント、危険度☆☆☆☆。アースドラゴン、危険度☆☆☆☆》


 おお! 《神の声》さんがグレードアップしてる!!!


 しかも、これまで出会ってきた魔物の強さでなんとなく納得できる。

 

 ここでいうなら、俺とシルは危険度☆3相当だと予想できる。


 つまりは、目の前に現れたハングリースパイダーは俺たちと同等の敵ということになる。だが、すでに相手は蜘蛛の巣を張って、相手のテリトリー内だ。


『シル。一旦引くピ』

『ごめんニャ』

『どうしたピ?』

 

 シルの声に視線を向ければ、シルの前足が蜘蛛の糸に触れてネバネバと足を引いても糸が外れない。

 爪で切ろうとして、さらに絡みついている。


 どんどん蜘蛛の糸に絡め取られていくシル。


 俺が風の刃で糸を切ると、なんとか切り裂くことができた。

 ただ、シルの体は蜘蛛の糸でグルグル巻きにされて、触ると俺までベタベタで絡みついてしまう。


『シル、重力魔法で体を軽くするピ』

『わかったニャ』

 

 近くにあった木の枝を使ってシルを持ち上げて、肩に担いで地面に放り投げた。

 重力魔法があるから、怪我はしないと思う。


 ハングリースパイダーの赤い瞳がこちらを怪しく見つめていた。


 話ができるような相手ではなかったが、明らかにこちらが弱るのを待っている様子が窺える。


「ピヨ」


 必ずまた来るぞ。


 俺はハングリースパイダーに別れを告げて木を飛び降りた。

 下では蜘蛛の糸を必死に取ろうとしているシルの姿があったので、風魔法で少しずつ剥がしいく。


「ピヨピヨ」


 魔法で多少は毛を刈ってしまったので、恐る恐る問いかける。


『大丈夫ニャ。私の不注意ニャ』


 どんよりと悲しんでいるシルにかける言葉がない。

 

 水魔法をボール状にして、体を洗うお手伝いをしている。

 水辺近くで、お互いに見張りをしながら眠ることにした。


『先に寝ていいピ』

『ありがとうニャ』


 自分の失敗が相当に応えたようだ。

 

 《神の声》さん、ハングリースパイダーの弱点とか教えてくれますか?


 《現在のレベルではお答えすることはできません》


 相手の名前やステータスが見えるだけでもヒントになるけど、今回はシルを放置してはいられなかったからだ。


 ハングリースパイダーには絶対にリベンジするとして、今はネズミの巣がメイン攻略対象だな。


 《神の声》さん。ネズミのステータスを見せてくれるか? 兵隊のネズミでいいから。


 《ヌードデバマウスのステータスを表示します》


 ♢♢♢♢♢


 種 族:ヌードデバネズミ

 脅威度:☆

 レベル:1/10

 H P:75/100

 M P:34/60

 攻撃力:12

 防御力:10

 魔法力:10

 魔法防御力:10

 素早さ:10

 魅 力:2


 特殊スキル:《仲間と共鳴》

 通常スキル:《噛み付く》、《仲間を呼ぶ》

 称号スキル:《犠牲鼠》


 ♢♢♢♢♢


 よっわ!


 めちゃくちゃ弱いじゃん。

 特殊スキルの《仲間と共鳴》は気になるけど、めちゃくちゃ弱い。


 とりあえず、兵隊鼠は軍隊アントと同じぐらい弱い。


 レベル上げには向かなさそうだが、蟻の時みたいに強い進化鼠を探すしかないな。


 シルが目覚めるまではサーチを使って他の魔物の存在は感じなかった。


『交代するニャ』

『いや、どうやらお迎えが来たようだピ』


 目の前に魔法陣が出現して、アシェが俺を呼んでいる。


『わかったニャ。すまないニャ。私だけ休ませてもらって』

『気にするなピ」


 俺はシルに見送られて魔法陣の中へと入った。



「ピリカ〜!」


 魔法陣を抜けるとすぐにアシェに抱きしめられる。

 

「ピヨ?」


 全力で抱きしめられるのは幸福なことだ。


「ピリカに紹介したい人がいるんだよ」

「ピヨ?」


 俺の可愛いアシェに悪い虫か? 潰すか?


「オリヴィアちゃんだよ」


 アシェが紹介してくれたのは、上品そうな女の子だった。

 ピンク色の綺麗なロングヘアーに、大人しそうな雰囲気をした可愛らしい女の子だった。


「はっ、初めましてピリカちゃん! ワタクシはオリヴィア・バークアインです」


 うん? 苗字がある? アシェはアシェだよな?


「ピヨ?」

「オリヴィアちゃんは貴族様なんだよ。だけど、凄く優しくてすぐに友達になったんだ」

「ワタクシの方こそ、アシェちゃんにはよくしていただいて」


 うん。良い子だ

 アシェの良さがわかっている。


 元気で明るくいつも可愛いアシェをどうかよろしくお願いします。


「ふわ〜!!! ビッグなヒヨコさんがお辞儀をしてくれましたわ!!!」

「ピリカはとっても賢いんだよ。オリヴィアちゃんよかったね」

「はい!」

「オリヴィアちゃんは、私よりも一つ年上なんだけど、体が弱くてずっと召喚ができなかったんだって。最近になって召喚ができるようになったんだ。ずっと魔物に憧れがあって、ピリカのことを話したら会いたいって言われたんだ」


 なるほど、それで呼び出されたわけか、アシェの友人になってくれてありがとな!


 俺はもう一度お辞儀をして礼を告げる。


「あっ、あの、もしよろしければ、私もモフモフをさせてはいただけませんか?」


 う〜ん、ちょっと血走った目が怖い。


「ピリカ、いい?」

「ピヨ」


 ふっ、このモフモフボディーは罪作りだぜ。


「ありがとうございます」

「グピっ!」


 不意打ちの突撃はやめてほしい。

 良いところ入って、ナイスタックルだったぜ。


「ハァ〜これがモフモフ最高です!」


 女の子に抱きしめられるのは悪い気はしないな。


 少しだけ、アシェがジト目になっているので、後でいっぱいモフモフさせてやろう。

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