第19話 友人の召喚獣

 ピリカの友人であるオリヴィアちゃんが満足するまでモフモフをさせてやった。


 その後はアシャがピッタリと俺に寄り添っていのが、可愛い。


 大丈夫だぞ。俺は誰にも奪われないからな。


「そうですわ! ワタクシはまだ召喚獣を呼び出す時間が短いのですが、ワタクシのパートナーもご紹介させてくださいまし」

「いいの? 大丈夫?」

「これも訓練の一環ですわ。本当は長い時間、召喚できるようにならなければいけないのですから」

「うん。頑張ってね」

「ピヨ!」


 無理しなくてもいいと思うが、彼女なりにアシェと友人関係を結ぼうとしてくれているんだろう。

 ここは、彼女の申し出を快く受けてあげるのがいいのだろうな。


「ピヨ!」

「ピリカも会いたいの? う〜ん、わかったよ。オリヴィアちゃん、お願いしてもいい?」

「任せてください」


 オリヴィアが召喚の準備に入る。

 そういえば、魔物が召喚する光景を見るのは初めてだ。

 いつもは召喚される側だから、こんな感じになっていたんだ。


 何やら呪文を詠唱すると、魔法陣が現れてどんどん光を増していく。

 その魔法陣から魔物が出てくるという仕組みのようだ。


 人間が使う魔法を初めて見たが、面白いな。

 

 俺たちが使う魔法は魔法陣なんて現れない。

 風の魔法を使いたいと思えば、それをイメージするだけで良かったが、人間の方が魔法を使うのに制約があるのかもしれないな。


「はぁはぁはぁ」


 魔力を注ぐとかなり体力を使うようだ。

 オリヴィアちゃんが息も絶え絶えでしんどそうにしている。


 うーん、人間って大変だな。


 召喚を一回使うだけであれだけしんどい思いをしないといけないのか。


「うわ〜。綺麗」


 アシェの声で、俺は召喚された魔物に視線を向ける。

 丁度、相手の魔物を俺を見たところで、バッチリと視線が合う。


「ニャオ?」

「ピヨ?」


 うん。よく知っている顔だ。


『何してるニャ? ピリカ』

『世間って狭いピ』


 目の前にはシルが召喚されていた。


「こっ、この子が私の召喚獣のシルちゃんです。シルバーキャットで重力魔法を使えるんですよ」

「凄いね! とっても綺麗で、重力魔法って貴重な魔法だよ」

「はい。強い個体なので、召喚する際に魔力の消費が多いと先生にも言われました」


 うん。銀猫と言っていたが、シルバーキャットっていう種族だったのか。

 そう言えば、ステータス閲覧を使ってなかったな。


 なんだか知り合いの個人情報を見るような気がして、相手に聞いてからだと勝手に思ってしまっていた。


「初めまして、シルちゃん。私はオリヴィアちゃんの友達でアシェだよ。そして、こっちが私の召喚獣であるピリカ」

「ピヨ」

「ニャオーン」


 アシェの挨拶に俺も合わせて頭を下げる。

 それに応えるようにシルが鳴き声をあげて、アシェに挨拶をしてくれる。


 お互い知らない者同士ではないので接しやすい。

 だが、どんな魔物が出てくるのかちょっと楽しみだったので、少しだけガッカリだな。


「しっ、シルちゃん。ごめんなさい。まだ魔力が」

「ニャオ」


 シルが優しくオリヴィアちゃんの頬擦りをしてあげて消えていく。

 どうやら5分ほどしか召喚を維持できないようだ。

 

 アシェが最初の頃に何度も呼ぶことがなかったのは、召喚が大変で、さらには維持するのが大変だったからなんだな。

 だけど、明らかにアシェの魔力量は多い。


 すでに30分ほどここにいるけど、アシェに疲れた様子はない。


「うん? どうしたの? ああ、オリヴィアちゃんの体調が心配なのかな? あれは魔力を使いすぎて疲れているんだよ。だけど、それを繰り返すことで少しずつ魔力量を増やしていくから大切な訓練なんだ。私も初めてピリカを召喚した時は同じだったなぁ〜」


 なるほど、やっぱり推測は正しいようだ。

 彼女たちは訓練をすれば、ある程度の魔力量までは増やすことができるようだな。


「オリヴィアちゃんや他の子が召喚をする時間を長くする訓練をして、それが終わったら実践的な召喚訓練に入るから、ピリカももうすぐしたらたくさん呼ぶことになるからね。いっぱい一緒にいられるよ」

「ピヨピヨ」


 そうか、学校だからな段階を踏んで生徒を育てていくのだろう。


「それじゃそろそろ私も限界」

「ピヨ」


 俺はアシェを翼で包み込んむ。


「うわ〜ふふ、モフモフだ〜。ピリカ気持ちいい〜。ねぇピリカ大好きだよ。私、頑張って強くなるからね。待っててね」

「ピヨ」


 ああ、待ってるぞ。

 

 それまでに俺もシルと二人で強くなるからな。


「ピリカちゃん。モフモフさせてくださってありがとうございます! 私も頑張りますので、これからもよろしくお願いします!」


 オリヴィアちゃんにも別れを告げて、俺は元の場所へと戻った。

 そこにはシルが待っていて、こちらを見上げる。


『ふぅ〜まさかあっちでも一緒だと思わなかったニャ』

『そうだピ。だけど、ちょっと安心したピ。シルがいたら俺も嬉しいピ』

『ふんニャ。どこまでも腐れ縁ニャ』

『なんだピ。嫌なのかピ?』

『そんなこと言ってないニャ』


 グルグルと喉を鳴らすシルは、嘘がつけないやつだ。

 こいつとなら上手くやれそうで良かった。

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