第20話 ヌードデバラット 1
俺たちは互いのマスターが知り合いであることで結束を強めることができた。
召喚前も召喚後も協力し合えるのはありがたい。
「ニャオ」
だからこそ、レベルを上げて進化をしたい。
弱くても確実に追い込むことを意識して、ヌードデバラットの巣穴へ攻撃を仕掛けることにした。
案の定、弱い。全然レベルが上がらない。
一体一体は、一撃で倒せてしまうぐらい弱い。
しかも、一体を攻撃している間にもう一体は逃げようとする。
なんだか悪い気がして、距離を取れば、集団で襲いかかってくると言う卑怯な奴らであることがわかったので、容赦をしないで攻撃ができる。
土の中で生活をしているこいつらには毛生えていない。
だから、ヌードというのだろうが、その感触が熊や猪を倒した時と違って柔らかくて、少し気持ち悪い。
「ピヨ!」
群れで襲ってきたところをシルの重力魔法で一気に押しつぶす。
これを繰り返して三日経つが、全くレベルが上がる気がしない。
それに強いヌードデバラットを現れないので、ここはレベル上げとしては些か不満を感じ始めていた。
このままではアシェに会うまでに成長できない。
『ハングリースパイダーを狙うピ』
『あいつは危険ニャ?』
シルは前回の糸が絡まったことを気にしているようだ。
ネバネバな糸が貼られた蜘蛛の巣は確かに厄介で、ハングリースパイダーのテリトリーで戦わないけといけないことが厄介だ。
『だけど、ヌードデバラットがレベルが上がらないんだピ。いくら倒しても強い個体も現れないピ』
『それはそうニャ』
シルも納得してくれたことで、俺たちの標的はハングリースパイダーに移行することにした。
どうやって攻めるのか、水場で考えようと思っていると突然空が暗く染まっていく。
「ピヨ?」
そこには空を隠すほどの飛龍が翼を広げてヌードデバラットの巣へと襲いかかった。
「ピヨっ!」
あいつは! 俺は生まれたばかりの頃に感じた恐怖を思い出す。
『ワイバーンニャ。この辺ではあまり見たことがないニャ! はぐれってやつニャ」
『はぐれワイバーンピ?』
『そうニャ。ワイバーンは群れで行動する珍しいドラゴン族ニャ。だけど、たまにはぐれて一人で強くなるワイバーンがいるニャ』
ヌードデバラットの巣へ突撃していくワイバーン。
ワイバーンが入ってしまえるほど大きな巣穴で、ヌードデバラットがワイバーンに襲いかかる。
俺たちの時は必死に味方を犠牲にして逃げていたのに、ワイバーンが入ってきた瞬間に襲いかかった。
ワイバーンは風を生み出して張り付いたヌードデバラットを吹き飛ばす。
それでも相当に噛み跡が全身に見られる。
『ワイバーンが負けるピ?』
『わからないにゃ』
俺たちは戦闘の行方を見つめながら、周囲への警戒を続ける。
どうやら多くの魔物が今回の戦いに意識を向けているようだ。
今回の戦いが起こらなければ気づけなかったが、気配を消して様子を見ていた者がいる。
『ここは危険な森だっピ』
『そんなの今更ニャ』
森の魔物たちがヌードデバラットの巣穴を注目している。
ハングリースパイダーも珍しく木の上から様子を伺っているが、油断はしていない。
むしろハンターとして、俺のように周りの動向を注視している。
「GYAAAAAAA!!!!」
ワイバーンが叫び声を上げると巨大なヌードデバラットが三匹現れてワイバーンの上に飛び込んで襲撃をかけ始めた。
丸々と太った一トン近くのヌードデバラットたちが巣穴に入り込んだワイバーンに襲いかかる。飛行するために重圧には弱い様子で、ワイバーンがヌードデバラット3体によって押しつぶされていく。
風を使って吹き飛ばすために頑張っているが、大量のヌードデバラットの質量に押しつぶされる。
『終わったピ?』
『終わったニャ』
戦いの終わりは呆気ないものだった。ヌードデバラットがワイバーンの肉を食べ終えて骨も残っていない。
「ピヨ」
「ニャオ」
俺たちが相手にしていたヌードデバラットとは別の姿に唖然とさせられる。
奴らは牙を隠したまま、俺たちを相手に戦っていた。
多分、兵隊はいくらやられても替えがいるということなんだろうな。
代わりに、丸々太ったヌードデバラットが進化系として貴重な存在に思える。
3体が出てきたことで形成は一気に変化した。
『俺たちは相手にとって、倒すべき敵ですらないと思われていたってことかピ』
『そうみたいニャ』
ハングリースパイダーも数体の獲物を獲得して姿を消していた。
この森の奥深さがわかったような一戦だったな。
やっぱりどんなに弱く見えても油断してはいけないんだ。
『まずは、俺たちも進化を目指すピ。そのためにネズミと蜘蛛を倒す。だけど、他の奴らも倒していくピ』
『それしかないニャ。簡単には成長できないものニャ』
ワイバーンの犠牲のおかげで考えを改めることができた。
ヌードデバラットは見た目のキモさや弱そうな雰囲気とは違う。
本当は、あの質量で俺たちをいつでも殺せたのに泳がせたんだ。
「ピヨ」
油断できねぇ〜な。
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