第52話 決勝戦の結末

《sideアシェ》


 悔しいな……。

 ピリカが頑張ってくれて、相手を追い詰めたのに勝つことができなかった。


 私は天井を見上げて、流れてくる涙を止めることができなかった。


 もしも、私がもっと上手く避けられていたら、ピリカが戦闘不能になることはなかった。私たちは勝てたのかもしれないのに、私が未熟だから勝てなかったな。


「異議ありですわ」


 私が涙を浮かべて呆然としているとあのお淑やかなオリヴィアちゃんが、大きな声を出す。


「えっ?」

「そうだな」


 オリヴィアちゃんに続いて、対戦相手のヒューイ君も手をあげる。

 二人の言葉に困惑を示す審判をしてくれた先生。


「公爵令嬢のオリヴィア様ですね。それにヒューイ君。どういうことですか?」


 二人の言葉に審判の先生が問いかける。

 オリヴィアちゃんは自分が話をしようと思っていたようだけど、ヒューイ君が手を上げたことで、立ったままヒューイ君の話を聞く姿勢を示した。


「俺はファイアーボールを放って攻撃を仕掛けた。ローによって幻影の中に光魔法の攻撃を隠した。放つ際に二人の不意をつければと思っていたが、サモナーを故意に狙った行為に該当すると言われれば、反論するつもりはない」


 ヒューイ君の言葉に観客がざわめき始める。

 オリヴィアちゃんも同じ考えだったようで、大きく頷いていた。


「そういうことですが、いかがですか? アシェさん」


 先生が私に意見を求めている。


 だから私は首を横に振った。


 ピリカが頑張ってくれた結果は負けだった。

 だけど、その事実は正しいと私は思う。

 ピリカにはまだ隠している力があったのかもしれない。


 だけど、その力は絶対に使わせてはいけない力だって思えた。

 そして、私たちは先に津波を生み出して、ヒューイ君とロー君の二人を押し流そうとした。


 それをサモナーを狙った行為だと言われれば、私たち方が先にヒューイ君の身を危険に晒した。


 むしろ、ファイアーボールは三分の一で、私が対処したのは偶然だった。


「私はヒューイ君の勝利を正当なものだと判断しています。ピリカが放った津波はヒューイ君の強さを信頼して死ぬことはないと判断していても、サモナーを狙った行為に該当すると思います。こちらが先に仕掛けたことであり、ヒューイ君だけを責めるのは違うと思います」

「アシェちゃん!」


 意義を唱えてくれたオリヴィアちゃんには悪いと思ってしまう。

 だけど、私はピリカとの戦いを汚したくはない。


「アシェちゃん! あなたは高潔で気高いのですね。先生、すみません。ワタクシは異議を取り下げます」


 私の言葉を聞いてオリヴィアちゃんが座ってくれた。


 戸惑うヒューイ君に私は視線を向ける。


「私は負けたと思っているよ。そして、ヒューイ君とロー君は強かった。私たちの負けだよ」


 最後に自分で負けたと言おうとして言葉が滲んでしまう。

 涙が流れてピリカを抱きしめて涙を隠すことしかできなかった。


「すまない。君の覚悟に泥を塗るようなことをした。先生、私も自分の勝利を受け入れたいと思います」

「わかりました。あなたたちの覚悟を尊重します。そしてここに集まった生徒たちに伝えておきたい。ここにはルールがあるのだから、サモナーを傷つけたことを問題にする。ですが、社会に出ればサモナーを守ってくれるのは相棒の召喚獣だけです」


 先生は言葉を切って観客席に座る生徒たちを見る。


「どうか相棒である召喚獣を大切にしてください。今年のルーキーは優秀な子達ばかりです。私たち教師一同、あなた方を誇りに思います」


 それからのことはあまり覚えていない。

 私は限界がきて、倒れてしまった。


 オリヴィアちゃんやバッシュ君が迎えにきてくれて、私とピリカを寮の部屋に運んでくれたそうだ。


 目を覚ますとピリカを抱きしめて眠っていた。

 真っ黒で気持ちいい羽毛に包まれて、モフモフのピリカがいる幸せを感じていた。


 ヒューイ君に対して、ピリカが怒った時。

 私は少しだけピリカを怖いと思ってしまった。


 怖くて、ピリカがどこか遠くに行ってしまう気がして、力を使わせてはいけないと思った。


「ごめんね。ピリカ。ピリカは私のために怒ってくれたのに、私が邪魔をしちゃったね」


 もう一度強くピリカを抱きしめる。

 いつか、私が強くなってピリカと冒険に出る時に、こんな弱い私じゃなくて、ピリカのサモナーとして誇れる私になりたい。


「ピヨ」

「目が覚めた?」

「ピヨピヨ」

「ふふ、うん。全部終わったよ。私たちは負けちゃった」

「ピ〜」

「えっ! ふふ、ピリカは何も悪くないよ。だからごめんなんて言わないで」


 ピリカが悲しそうな顔をする。


「私が弱かったんだ。だからね、次は勝とう。私たち二人の力で強くなるんだよ」

「ピヨピヨ!」


 ピリカはゆっくりと起き上がって、私を抱きしめてくれる。

 モフモフの毛並みと大きくて柔らかな胸の中に包み込んでくれる。


「あっ、そうだ。ピリカのあのモフモフになるやつやってよ。あの中に入るの、暖かくて気持ちいいんだ」

「ピヨピヨ!」


 任せろと言わんばりにピリカが胸を張って、バフっ!とスキルを発動した瞬間に、羽毛の量が倍ぐらいに膨れ上がってまんまるなピリカが出来上がる。


「うわ〜! フカフカ」


 いつもよりもモフモフ増量だよ。

 フカフカで気持ちいい。


「絶対に強くなろうね。いつかピリカが空を飛んで、王様たちと戦えるようになるぐらいに強くなろう」

「ピヨ!」


 モフモフになっても背中の、羽毛は無くなっていた。

 私を守るために傷ついて羽毛がなくなった場所にキスをする。


 守ってくれたピリカと一緒に強くなる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 ヒヨコの大冒険。

 カクヨムコンテスト9中に投稿を考えていた話は以上になります。


 いかがだったでしょうか? 楽しんでもらえたでしょうか?


「皆さんアシェです。ここまで読んでいただきありがとうございます」

「ピヨピヨ!(ありがとな)」

「今後も私とピリカの冒険を応援していただけれ嬉しく思います」

「ピヨ(俺のアシェは賢くて礼儀正しいだろ! だから、☆レビュー欲しいピ)」

「ふふ、皆さんから♡いいねをいただけると励みになります。どうぞ応援してくださいね」

「ピーーーーー!!!(王者の咆哮)」

「どうぞこれからもよろしくお願いします!」

「ピヨ」


 二人ともありがとうございました。

 お辞儀をして去っていく姿に手を振って、作者からもご挨拶を。

 

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 

 明日からはしばらくは、コメントSSさんを載せたいと思います。

 あちらのサブストーリーもだいぶ進んでおられるので、楽しみにされている方もおられると思いますので(๑>◡<๑)


 その後は、カクヨムコンテスト中は投稿を続けたいと思いますので、その展開次第で話の続きを構築できればと考えています。


 どうぞお付き合いいただければ幸いです。

 よろしくお願いします(๑>◡<๑)

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