第22話 ヌードデバラット 2
俺たちは思いついた作戦を実行するためにハングリースパイダーが巣を張っている巨大な木下にやってきた。
根元にいくほどに巨大な気ではあるがある程度の高さになると細いところを見つけられる。
猫を助けた時のように一撃で倒せるとは思っていない。
だけど、何度も何度も風魔法で木へ衝撃を与えて、攻撃を繰り返す。
そうすると切れ目は次第に亀裂になり、亀裂は次第に木を折るように傾き始める。
そこまでくるとハングリースパイダーも異変に気付いたようだ。
「ニャオ!」
シルが教えてくれるが、俺は止めない。
代わりにするが、対応してくれる。
シルの強さは俺と変わらないはずだ。
なら、ハングリースパイダーが巣から出てくれば、問題なく対応できる。
「ピヨピヨ!」
任せたぞ! なんとしてもハングリースパイダーを仕留める。
巣に入って倒せないなら、奴が巣を作っている木を倒して追い出せばいい。
「ニャオーン!!!」
無重力を思わせる空中で飛ぶように跳ねるシルの動きは軽やかた。
その上で、糸を飛ばして反撃しようとするハングリースパイダーを翻弄している。
「ピーヨ!」
俺もやってやるよ! 風の刃乱れ撃ちだ!!
傾き始めた木はどんどん傷を大きくしていく。
半分まで切れたところで俺の役目は終える。
ここからは倒したい方向に向かってシルの出番だ。
「ピー!!!」
「ニャオ!」
ハングリースパイダーの相手をスイッチして交代する。
水の壁を作り出して、シルの姿を消して俺がハングリースパイダーの前にでる。
シルのように上手く避けることはできない。
だけど、風と水が俺の味方をしてくれる。
柔らかく軽い糸は風に逸らして、重い水の刃が、糸を切り裂いてハングリースパイダーに襲いかかる。
しかし、シルの重力魔法が一気に木を傾かせて、ハングリースパイダーの足場を押し倒した。
「キシャああああああ!!!!」
悲鳴にも似た奇声をあげて、巨大な木と共に倒れていくハングリースパイダー。
その行き先はヌードデバラットの巣穴だ。
大きな木だったからこそ、あの巨大な巣穴を防ぐことができる。
「ピヨ!」
よし、上手くいったな。
ハングリースパイダーの巣がヌードデバネズミの巣穴を塞ぐように張り巡らされる。
厄介な敵が二体いるなら、互いに戦わせて数を減らせばいい。
「ニャオ」
俺の隣にやってきたシルも得意げな顔をしている。
なので翼を開いてハイタッチを催促すれば、肉球で翼にタッチする。
ぷにぷにとして柔らかい感触が伝わってくる。
俺たちは自分たちが行った功績を見るために別の場所から、ハングリースパイダーとヌードデバラットの戦いを観察する。
ヌードデバラットは相手の強さを図るために兵隊ネズミを派遣する。
それに対して、ハングリースパイダーは自らの巣を展開して完全にヌードデバネズミの巣穴を塞いでしまう。
木と地面を上手く使って、張られたハングリースパイダーの巣は地面から伸びているので、他の魔物が邪魔するために近づくこともできない。
それに対してヌードデバラットはお構いなしにハングリースパイダーの巣へ突撃を仕掛ける。どんどん巣に絡まっていくヌードデバラットのせいで、ネズミだらけになったハングリースパイダーの巣が異常な様相になってきた。
死んではいないので、さらに追加されてハングリースパイダーを物量で突き破ろうとしているようだ。
それに対して、ハングリースパイダーは雷の魔法を使ってヌードデバラットを痺れさせ始めた。
振り落とされるように必要のないヌードデバラットが落下して、必要分を食べ始めた。さらに葉に隠れていたところから小さなハングリースパイダーの子供が現れてヌードデバラットを食べ始める。
「ニャ〜」
シルが蜘蛛に食べられるネズミを見てドン引きしている。
小さいと言っても一メートルはありそうな蜘蛛が、同じく一メートルはあるネズミを襲っている。
ハングリースパイダーの親が三メートルはあるので、子供だと思うが、ハングリースパイダーに餌を与えることになってしまったのだろうか?
見ていたら勝敗が決まってしまうかもな。
俺たちも参戦しよう。
「ピヨ!」
「ニャオ?」
「ピヨピヨ」
「ニャオ」
最近は念話を使わなくてもなんとなく会話ができるようになってきた。
俺たちは遠距離から狙撃するように、ネズミでも蜘蛛でもどっちでもいいので魔法を撃ちまくった。
魔力が切れたら、逃げて、また撃ち続ける。
正直、どっちからもヘイトを受けそうな攻撃手段だが、ネズミは巣を突破できなくて争い。そんなラットの処理に追われる蜘蛛はこちらにまで手を回している余裕はない。
結果、俺たちにとっては入れ食い状態のレベルアップフィールドが出来上がった。
『ヌードデバラットよりも、蜘蛛を倒した方がレベルが上がるニャ』
『ああ、そうだピ。だけど、やりすぎるとバランスが悪くなるピ。ラットを中心に撃つピ』
『わかっているニャ』
俺たちがレベル上げに勤しんでいると、とうとうラット側も痺れを切らして、太っちょヌードデバラットを出陣させてきた。
いよいよ戦闘も本番に入るようだ。
俺たちは行く末を見守りながら、参戦するタイミングを図ることにした。
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